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架け橋として37年 谷村新司が日中文化交流の今を語る「文化が最後の砦」

中国側からの要望で、日本でのツアー内容を再現

――今回は、『38年目の昴』と題した日本で続行中のツアー内容をそのまま持って行ったとか。
谷村 僕の場合は、両国やアジアの交流を優先させていることもあり、今回初めて中国側からの要望で、日本で今行っているツアー内容と同じものを見たいという事でした。これは僕にとっても大きな出来事で、聴く側が育ってくれているということを実感しました。今回のツアーは6月から始まっている中で、上海・北京公演があり、次は愛知につながっているんです。ですから本当にツアーの一環に組み込めたということは個人的にも衝撃的でしたが、これからにつながる発展的な事例になったと思います。

文化交流まで途切れたらすべてが終わってしまう

――ところで谷村さんは政治的問題で両国交流が危機に瀕しているときも変わらない姿勢をつらぬきながら文化交流を行っています。交流を長続きさせる秘訣は?
谷村 交流を長続きさせるには建前ではなく本音で話ができるようになることが必要だと思いますし、郷に入っては郷に従えの鷹揚な考えも必要になると思います。1984年に韓国のチョー・ヨンピル、中国のアラン・タムと一緒に「PAX MUSICA(音楽による世界平和の意)」というコンサートを始めた時も、まずは顔合わせで、3人で倒れるまで飲みました。結果、細かいことにこだわらない友好関係ができてイベントは大成功しました。また、そこから3人は親友であり兄弟となり、今でも交流を続けています。文化や習慣も違う国に出かけていって一緒に制作をする訳ですから、あらゆる面で手違いや衝突も起きますが、その国の国民性や考え方をお互いに学び理解した上で信頼関係を築く努力が大事だと思います。

――本音と建て前を理解してこそ長続きにつながるのですね
谷村 国と国との交流の場合は、様々な力学が働くので時には断絶に近いことだってあります。でもだからといって文化交流まで途切れたらすべてが終わってしまう。細い糸が残っていれば、そこを太くするのはやりやすい。でも、一度切れたものを元に戻すのは大変な労力と時間が必要になるんです。僕は2012年の国交正常化40周年コンサートが中止になった時にも、「文化が最後の砦だ」とお話したんですが。その考えは今も変わりません。

世界に飛び出すのではなく、世界が発見してくれる時代

――ところで、最近日本以外のアジアのアーティストの元気の良さが目立ちます。日本のミュージシャンは世界を相手にどうやっていくべきだと思いますか?
谷村 僕は世界を意識する必要はないと思います。例えば防弾少年団(BTS)がアメリカでナンバー1になったからと言って、同じようなものをやろうとするのは、もうピントがずれていると思います。それよりも自信を持って自分が表現したいことをつきつめていくべきでしょう。「〜〜風」はどこに行っても通用しない。まだアマチュアのころに無謀にもアメリカ横断のライブツアーをやったんですが、これはその時に感じたことです。以前、フィル・ラモーンにアルバムプロデュースを引き受けてもらったことがあります。その時に彼も「シンジの音楽は何物にも似ていないから引き受けたんだ」と言ってくれました。確かに「昴」の世界観はアメリカ人には理解できないのではないかと思います。だからこそミステリアスな魅力になるのではないでしょうか。それに今はこちらが世界に飛び出すのではなく、世界が発見してくれる時代です。日本人が忘れている日本の良さを海外の人々が教えてくれている。そんな時代だからこそ僕らは僕らのままやっていけばいいんじゃないかと思いますね。

 谷村新司、69才。いまだに様々なチャレンジを続ける。今年6月に発売したアルバム『EARLY TIMES〜38年目の昴〜』は4月の国立劇場でのセットリストがあまりに評判が良かったため、急きょ6月からのツアーもそのセットリストでやることに決め、その間にプライベートな時間を削りながらコンサートの感動をそのまま持ち帰れる商品として新たに録音した13曲で構成されている。また11月12日には上野東京文化会館にて、千住明氏の指揮で『TANIMURA CLASSIC』と題したシンフォニックコンサートを行う。こちらはすでに10年以上続けているチャレンジで、新たなファンの広がりも見えるという。今でも時代に対応した柔軟な考え方で音楽活動を続ける谷村新司。これからも日本のファンに勇気や元気を与えるだけでなく、日中友好のキーマンとしても活躍を続けてくれるに違いない。

提供元: コンフィデンス

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