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60年前の祖母の振袖を孫が着てみたら…圧倒的な品格に「相当高価なものと…」「なんて見事なお品!」
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シミひとつなく綺麗な状態で保管されていたおばあちゃんの振袖。さっそく着てみることに。(写真提供@gukimono_ichico)
「受け継いだ着物を自分で着られるように」独学で始めた着付けの勉強
「こちらの着物は、祖母が今は亡き曽祖母と一緒に、京都の老舗呉服店である市原亀之助商店さんへ足を運び、たくさん見せていただいた中から気に入って選んだものだそうです。祖母と曽祖母は、いつもこちらのお店で着物を誂えていたと聞いています」
――おばあさまは袖を短くして、訪問着としてお使いになられていたとか。
「祖母には息子しかおらず、成人式のあとにもう着る人がいないからと袖の長めな訪問着に仕立て直したそうです。それからは、結婚式のお色直しやご友人の結婚式、女学校時代のご友人との集まり、お茶やお花の式会など、人生の節目や大切な場面でこの着物に袖を通してきました。家系に女性が私1人なので、長い年月を経て祖母から私へと受け継がれた、たくさんの思い出が詰まった大切な一枚です」
振袖を訪問着(小袖)にその後も活用していたそう!(写真提供@gukimono_ichico)
「私が20歳の時に着た振袖はちょっと渋めな感じで、あまり好みの柄ではなくって。当時は留学に行っていたため自分で選べず、『祖母の着物のような、可愛らしい振袖を着てみたかったな』という気持ちが、心のどこかにずっと残っていました」
――その願いを、ご自身の手で叶えられたと。
「はい。着付けがある程度できるようになった今なら、自分で着ることができるかもしれないと思い、お正月に思い切って袖を通してみました」
――1年ほど前から着物の勉強を始められたそうですが、そのきっかけは?
「結婚を機に、嫁入り道具としてたくさんの着物を譲り受けたのがきっかけですね。そこには祖母の着物も含まれていたのですが、どれも本当に可愛らしいものばかりで…。しかも、祖母は洋裁学校に通っていたので、自ら仕立てた着物までありました」
――それはぜひ活用したいですよね…!
「着物たちも誰かが着なければ、ただそこにあるだけになってしまいます。それに、私はおばあちゃんっ子でもあるので、祖母が元気な間に祖母の着物を着た姿を見せたい気持ちもありました。『せっかく受け継いだ祖母の着物を、自分で着られるようになりたい』――その思いから、自分で研究しつつ独学で着付けを始めたんです」
60年前に仕立てられたとは思えないほど、可憐で華やかな1着に孫のいちこさんもうっとり。(写真提供@gukimono_ichico)
「正直、最初は昔の着物と今の着物の違いをよく分かっていませんでした。というのも、祖母から受け継いだ着物に囲まれてきたため、それが私の中のスタンダードになっていたんです。ですがYouTubeの動画にいただくコメントや呉服屋さんのお話を聞くうちに、昔の着物には今では再現できない職人さんの技が詰まっているのだと感じるようになりました」
――「大切にしてほしい」という言葉も多かったですね。
「祖母の着物を着て呉服屋さんへ行くと、『今はもう職人さんがいなくて作れないんですよ。大事にしてくださいね』と言われることも多いです。自分のルーツである日本文化や、先祖の思いを身にまとえる着物って本当に素敵だなと感じています」
祖母の笑顔と言葉に気付いた「着物を堅苦しく捉えない」ことの大切さ
「実は私も几帳面なほうではないので、着付けの際にはコーリンベルトやゴム製の腰紐など、現代の便利グッズの力をたくさん借りています。結びにくい帯は作り帯に仕立ててもらい、さっと付けられるようにしていますね」
――「着物だから、ちゃんとしなきゃ」という考えが、つい頭をよぎってしまうのですが…。
「祖母は、私の不器用な着付けを見ても特に何も言いません。それどころか、着付けのことを話したら『え? 今ってそんなにたいそうなことになってるの? 昔の人はもっと適当に着てたよ。おばあちゃんも着方、適当よ』と言って笑っていました。その時に、確かに着物って昔の人にとっては普段着で、おはしょりがない時代もあれば、ぶくぶくのおはしょりが流行った時代もあった。襟合わせが反対だった時代もあるし、そんなに堅苦しく捉えなくていいんだと気付いて、ふっと肩の力が抜けましたね」
令和でも色あせない見事な着物!!(写真提供@gukimono_ichico)
「着方は一人ひとり違っていて良いと思うんです。むしろ着物は“未完成の衣服”なのではないでしょうか。洋服のように決まった形に自分を合わせるのではなく、自分に布を寄り添わせていくもの。着る人に合わせて着付けた瞬間に完成するのが、着物の楽しさであり醍醐味だと思います。完璧でなくてもいいし、誰かに合わせなくてもいい。未完成でも美しいので、自分の感覚を大切にすること…。この思いこそが、私にとっての『着物を楽しむ一番のコツ』だと思います」