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戦後77年、20代モデラ―が『戦艦大和』ジオラマを“血”で汚した理由「そこに人がいたという命の証を、伝えようと思った」

情報集めに苦労も、死を覚悟し散っていった人たちを想像しながら制作

――そもそも、この『戦艦大和の最期 1945年4月7日』を作ろうと思ったきっかけは何だったのですか?
きら工房もともと、戦艦が好きだったんです。「海軍の象徴」と言われてたように大きな船体、車ほどもの重さのある砲弾を遥か彼方まで飛ばす巨大な主砲、ビルのようにそびえ立つ艦橋など、他の艦種にはない魅力だらけで、カッコイイと思いました。
 なかでも戦艦大和は、日本の誇りですので「いつか自分の作品表現で作りたい」と思っていました。昨年、『戦艦武蔵の最期』を制作していたので、大和と武蔵で兄弟艦を2年連続で作るのもいいなと思い、制作いたしました。

――非常にリアルな作りですが、どんなところにこだわり、どんなところで苦労されたのですか?
きら工房実際にあった瞬間のジオラマを作る際に、一番苦労するのは毎回「情報集め」ですね。作る船そのものの形状なんかはもちろんですが、船体のどこどこに爆弾、魚雷がヒットして、どういうダメージを負ったかなど、明確な船体の状態の記録や写真などが無いことがほとんどですので、そこがいつも苦労します。
 また、この作品は戦闘中のジオラマということで、あちこちにダメージ加工を施しております。これが1/700という小スケールではどうしてもオーバースケールになりがちなので、いかに自然にダメージ加工を施し、軍艦の金属感を出せるかを意識しています

――ちなみに本作は、どんなものを参考にされ、頭の中ではどんなイメージを膨らませて制作されたのですか?
きら工房『ピットロード 1/700 戦艦大和 最終時』をベースに、当時の戦闘記録、海底の大和、乗組員の証言、映画『男たちの大和』『アルキメデスの大戦』や書籍『戦艦武蔵のさいご』などから戦闘時の雰囲気や爆弾、魚雷の被弾位置、船体の傾きなどさまざまな資料を元にしました。
 資料と共に頭の中では、戦時中、どんどん劣勢になっていく日本が、最後の切り札『大和』を戦地へ送り込んだこと。絶対的に作戦成功は、ほぼ不可能と乗組員もわかりきったなか、「死」を覚悟し華々しく散っていった切なくも美しい最期の姿を想像しながら制作しました。コンテスト締め切りまで1ヶ月程度だったので、急ぎましたね。

コンテスト受賞作に“血”を…リアリティを伝えたい「戦争をなめている人が許せなくて」

――本作は「ピットロードコンテスト」ホビージャパン賞を受賞されるなど、多くの人々を魅了しました。しかしながらその後、甲板への“血痕表現”を施し、SNSで発表されました。“戦艦ジオラマ”の多くは、在りし日のあるべき姿や、ある種の理想を反映し、発表されているものが多いですが、本作では戦争の悲惨さ、残虐さをより克明に、よりリアルに伝える作品に仕上がったように思います。なぜこの表現をしようと思われたのですか?
きら工房軍艦などにあまり詳しくない方々からすると、恐らく戦艦は「カッコいい」「強い」「大きい」などのイメージしかないかと思います。ですが実際の戦いでは、3000人以上が乗った巨体を動かすのは人間であり、さらに大和のような耐久性のある戦艦ではその耐久性ゆえに浮いている時間も長くなる。その分、甲板上は「血の海」状態と地獄の光景となる戦争の怖さを「血」という表現で、そこに人がいたという命の証を伝えようと思いました。

――最初から“血痕表現”を施すのではなく、後で追加したのはどういった理由からですか?
きら工房コンテストのレギュレーションで残酷な演出はNGでこうした表現はできませんでした。ですが、“血痕表現”は、やはりこの作品に欠かしてはならない表現だと思っていたのでコンテスト後、思いきって追加しました。

――SNSには、賛否さまざまな意見が寄せられましたが、どのように受け止めていらっしゃいますか?
きら工房こうした表現に批判的な意見があるのは私自身、わかっていましたし、こうした表現を批判する方々を批判する気もありません。ですが、思ってた以上に私と同じ考えを持っていたり、賛成してくださる方々がたくさんいてくださって素直にうれしかったです。コメントで血痕=そこに人がいた命の証という声を聞けたのが印象に残りました。

――ご自身はこうした形で、戦争のリアルを作品に込めて伝えてますが、そこにはどういった思いがあるのでしょうか?
きら工房私は現在20代半ばですが、既に私の学生時代には、搭乗員ごと敵の艦艇や航空機に体当たりする「神風特別攻撃隊」のことを、「当たる瞬間に脱出すればいいじゃん?」など揶揄する、“戦争をなめているような人”が多く、許せなくて。戦争をするとこうなるのだと伝えたいと思っておりました。

――戦後77年が経過し、戦争を経験された方も多くが鬼籍に入られ、次世代にその悲惨さをどう伝えていくかは、日本の課題とも言えます。そんななか、こうした作品を通じて若い世代が知ることも大きな意味があると思いますが、ご自身は戦争についてどのように思われますか?
きら工房これは一番難しい質問です。一個人がどうこうできることではないですし、きれいごとを言ってしまえば「戦争はいけませんよ」となると思いますが、人には「他人よりも優れたい」「証明したい」という感情が誰にでもあります。国と国でも、スポーツでも、社会でも、上に行こうとすると争いが起こる。命が失われることはよくないことですが、私にはどれが正解なのかということはわからないのが現状です。

――それでは最後に、ご自身にとって「戦艦ジオラマ」とは?
きら工房「実際にあった歴史の一瞬を切り取った資料」みたいな感じになればいいなと思っております。

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