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“辞め芸人”のその後を追う飛石連休・藤井ペイジに聞く“おじさん芸人”脚光へのリスク 「“芸人を続けられる地獄”もある」

(左)飛石連休・藤井ペイジ (右)YouTubeチャンネル『藤井ペイジちゃんねる』”辞めた芸人に話を聞こう”サムネイル 画像提供/サンミュージック

(左)飛石連休・藤井ペイジ (右)YouTubeチャンネル『藤井ペイジちゃんねる』”辞めた芸人に話を聞こう”サムネイル 画像提供/サンミュージック

 錦鯉など“おじさん芸人”が脚光を浴び、”遅咲き“が美談として語られる風潮の現代。一方で、「いつか俺も」というマインドがいつまでも抜けず、「辞め時」を失う芸人も。そんななか、お笑いコンビ・飛石連休の藤井ペイジが自身のYouTubeチャンネルで創設した「辞めた芸人に話を聞こう」という企画が注目を浴びている。芸歴27年目の経験・人脈を生かした同企画には、元ハリガネロック・おおうえくにひろ氏、元ホームチーム・檜山豊氏、元カリカ・マンボウやしろ氏などの元人気芸人たちが多数出演している。そこで、数々の”辞め芸人“を見てきた藤井に、”おじさん芸人”ブームの現状や、夢を追うことの現実とリスクなどについて語ってもらった。

声をかける人の基準は、賞レース、テレビなどで“いいところまで行った人”

 10年ほど前に自身のチャンネルを立ち上げ、ここ2,3年で活動を本格化したという藤井ペイジ。2年前から“辞め芸人”企画を始めたきっかけについて、次のように語る。

「もともと10年位前から考えていた企画で、まだ誰もやっていなかったから、どこかで連載できないかなと考えていたんですよ。具体的に売り込んだりすることはなかったんですけど、YouTubeをやっていくうちに、自分のチャンネルでやってみようと思い、2020年に初めて元ピン芸人の大輪教授に話を聞いたんです」

 大輪教授とはもともと仲良く、芸人を辞めた後も「飲み仲間」としてしばしば会う関係。芸人時代の裏話や、なぜ辞めたのかなどを話したその動画は、周囲の芸人たちの食いつきが非常に良く、そこから同チャンネルのメインコンテンツにしたと言う。

「オファーする“辞め芸人”は基本的に知り合いが多いですが、僕自身、もともと大阪で芸人をスタートして、東京吉本にもいた時代が少しあったから、知り合いが多いことはラッキーだったと思います。それに、売れている芸人が聞いたらイヤミになるけど、僕くらいの芸人が聞くから、ちょうど良いんだと思うんですよ(笑)」
 オファーは、個人的なつながりの他に、お笑いライブに行ったときなどに、連絡先を知らないか芸人仲間に聞いたり、ツイッターやインスタグラムのDMで直接打診したりするという。オファーする基準は「今どうしているんだろう」と自身が気になる人であること。

「特に『爆笑オンエアバトル』(NHK総合)や『ボキャブラ天国』(フジテレビ系)で活躍していた人や、『M-1グランプリ』でいいところまで行った人に話を聞きたいんですよ。『M-1』の第1回大会で中川家さんに負けて準優勝だったハリガネロックさんとかにも出ていただいていますけど、賞レースで実績のある人や、テレビで結果を残した人は、もう一歩でドカンと売れた人たちばかりだと思うんですよ。1個ボタンのかけ違えただけで、今も芸人の世界に残っていたかもしれない。そういう人たちに話を聞きたいんですよね」

 賞レースやテレビで結果を出したとしても、そういう“流れ”が来た時にいかに乘っていけるか。藤井はその難しさを「お笑いは積み重ねていける仕事じゃない」と語る。

「サラリーマンの方や職人さんなどは、長年の経験から、ノウハウみたいなものを積み重ねていけますけど、芸人は20年、30年と続けていてもスベるときはスベりますから。ただ、面白い人は時間がかかっても売れるんですよ」

「おじさん芸人」が脚光を浴びる現象は、錦鯉より前から定期的にある

 昨年の『M-1グランプリ』で錦鯉が第17代目の王者となったのは、近年の「おじさん芸人ブーム」の象徴でもある。しかし、藤井によると昔から、おじさん芸人が脚光を浴びる流れは、定期的にあったと指摘する。

「一昔前は、30歳など年齢で区切りをつけて辞めていく芸人も多かったんです。でも2000年代以降、30代や40代の“遅咲き芸人”が現れて、一気にスターダムに駆け上がる現象がたびたび起こっているんです」

 例えば2000年代初頭、カンニングが自虐ネタや竹山のキレ芸でブレイクしたとき、彼らは30代前半だった。また、博多華丸・大吉の華丸が『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)内の人気コーナー『細かすぎて伝わらないモノマネ選手権』で、児玉清さんのネタで優勝、翌年の『R-1グランプリ』で優勝したときも、35歳だった。

「2010年代になるとスギちゃんが2012年、R-1準優勝を機にブレイクしたのが39歳。『そんな売れ方あるの?』と芸人仲間の間で衝撃でしたし、ピコ太郎として古坂大魔王さんが2016年に『PPAP』でブレイクしたときは43歳で『こんな大逆転あるのか』と。それで今回、(長谷川雅紀が)50代の錦鯉ですから。ブレークする年齢がどんどん上がっていて、それを目の当たりにするから、芸人たちも『いつか俺らも』と、芸人の寿命を延ばすんですよね」

 また、こうした「おじさん芸人」は、もともと日本人の気質的に親しまれやすい面もあると指摘する。

「おじさん芸人は下積みが長い分、哀愁があるじゃないですか。日本人は哀愁のある物語が好きですし、お金がない、バイトしながらやっているという背景も、応援しやすいんですよね。さらに、昨今の“傷つけないお笑い”が好まれる傾向で、おじさんだからこそ『勢いだけじゃない平和な笑い』を提供できることもあると思います」

 もちろん売れるまではバイトとの二足のわらじを履くことになる。しかし、昔と比べ、おじさんでもバイトできるところが増えたこともあり、「芸」で結果がでなくても、おじさん芸人が「いつか、俺も」と、夢を追い続けやすい環境になっていると藤井は分析する。

「芸人だったことは後悔してない」が「生まれ変わったら芸人を選ばない」現実

 とはいえ、いつまでも夢を追いかけ続けられる一方で、その夢をつかめるかどうかはまた別の話。売れた人・生き残っている芸人と、辞めていく芸人はどこが違うのか。

「それは『覚悟』の違いですかね。錦鯉なんておじさんでブレイクとしたと言われますけど、とんでもない努力をしていたことは、芸人みんな知っています。(長谷川)雅紀君が普通なら芸人を辞めることも考える40代で、新しいコンビを組んだことが相当な勇気だったと思うんです。しかもコンビを組んだ後、すごい本数のネタを何年間も作り続け、その反省と改良を繰り返していた。僕の主催のお笑いライブなどにも何度も出てもらいましたけど、ライブ終わりの打ち上げには、『この後、ネタ作らないといけないんです』と言って絶対に来なかったですから。まぐれで売れたわけではない。それだけの覚悟があるのかってことですよ」

 辞める要因はさまざまだが、年齢や収入、家族のことなどが多いという。しかし、逆に、芸人を辞めると決めた人もみんな「覚悟」を持っていると語る。

「『芸人』という肩書があることで『夢を追い続ける』ことが、許される部分もあるでしょう。でも逆に、それを外すことによって『楽になる』こともあるといいます。元カリカ・マンボウやしろ君なんて芸人を辞めて裏方に回ってからも、ラジオのパーソナリティなどをやっていますが、『芸人じゃない』と本人は言うんです。『その違いは何?』と聞くと『覚悟』だと言う。芸人と名乗る以上、どこかで盛り上げたり、面白いことを言ったりしないといけないという思いがついて回るというんです。『覚悟』を決めて“芸人”という肩書きを外すことで、そのプレッシャーから解放されることを選ぶ人もいます」

 辞めた芸人は多くが、「芸人だったことを後悔していない」という。その一方で、大半が「生まれ変わったら、芸人は選ばない」とも。

「それは、身をもって大変だということを経験してきたからですよね。みんな口を揃えて『もっと頑張れたんじゃないか』と言う。でも、経験を積み重ねていけばいいだけではないですから。タイミングや時代の流れも、運もあるでしょうし。それも含めて、辞めた人たちはみんな『実力だ』と言うんですけど」

 かつて島田紳助氏は「M-1グランプリ」を「芸人を諦めさせるために創設した」と語った。しかし、今はテレビだけでなく、YouTubeなど活動の場が広がり、芸だけで食えなくても、年齢を重ねても芸人を続けていける環境が整ったことにより、いつまでも芸人でいられる状況になっている。しかし、だからこそ、トップを狙うにしても、辞めるにしても、それ相応の覚悟が必要なのだろう。

「元えんにちというコンビの望月君は、コミュ力だったり、話術だったりの部分で『お笑い芸人をやっていたら、その後どんな仕事やっても通用する』と話してくれました。一方で、(二丁拳銃・川谷修士の奥さんで)元芸人の野々村友紀子さんは、一回OLになったとき、一般的なことが全くわからず大変だったと話していました。高卒とかで芸人になると他の世界を全く知らないから、一般企業などでつぶしがきかないという声もある。いつまでも夢を追い続けられるという良い面がある一方で、リスクは伴いますし、“続けられる地獄”もありますから。夢を持ち続けて続けること、覚悟を決めて辞めること、そのどちらがいいのか、僕には分かりませんが、それぞれの芸人たちが決めていくことなのかなと思います」

取材・文/田幸和歌子
■プロフィール
藤井ペイジ(ふじい・ぺいじ)/1972年3月12日生まれ、大阪府出身。1999年に、ボケの岩見よしまさとお笑いコンビ・飛石連休を結成し、『爆笑オンエアバトル』のゴールドバトラーに認定されるなど活躍。近年は、ソロとしてYouTube「藤井ペイジちゃんねる」を立ち上げ、『辞めた芸人に話を聞こう』が好評を博している。「ここでしか聞けない話がたくさんあるので、今後も飛石連休での活動も続けながら、自分のペースでこの企画は続けていきたいです。もし可能であればこれまで話を聞いてきた人たちのお話をまとめて書籍化できたら、なんて思っています」。

■藤井ペイジYouTube公式チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCYHvJjgYCivMek70IhRYb4Q(外部サイト)

■藤井ペイジツイッター
@fujii_page(外部サイト)

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