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Netflixで韓ドラヒット量産 韓国で起きている原作漫画の“ハリウッド的”分業スタイル起因に?

  • Netflixシリーズ『今、私たちの学校は…』Netflixにて全世界で独占配信中

    Netflixシリーズ『今、私たちの学校は…』Netflixにて全世界で独占配信中

 Netflixのランキング上位を席巻する韓国ドラマ。その多くが、スマホの普及とともに発展した縦スクロール漫画「webtoon(ウェブトゥーン)」が原作であることに注目したい。漫画の実写化は昔から行われてきたことだが、ここに来てwebtoon原作ドラマがヒットを連発するようになったのはなぜか? 縦スクロールという構造が生み出す没入感や、映像クリエイターを惹きつける優れたストーリー性、良質なコンテンツを量産するハリウッド的な制作体制など、実写原作としての新たな方向性を関係者の取材で探る。

右肩上がりで増加、世界的ヒットを量産するウェブトゥーン原作ドラマ

  • Netflixシリーズ『地獄が呼んでいる』Netflixにて全世界で独占配信中

    Netflixシリーズ『地獄が呼んでいる』Netflixにて全世界で独占配信中

 Netflixオリジナルの韓国ドラマ『地獄が呼んでいる』が、昨年11月に配信されるやいなや、世界中で社会現象を巻き起こしたあの『イカゲーム』の再生数を公開直後にたちまち追い抜いた。

 Netflix史上最高記録を塗り替えた同作は、超常現象によって崩壊していく世界を扇動する宗教団体と、混乱に立ち向かう人々の物語を描くディストピアドラマ。アメリカ最大の映画評論サイト・ロッテントマトが「2021年の最高のホラーシリーズ」に選定したように、その人気と評価は世界的なものとなっている。原作は、NAVER WEBTOON社がグローバル展開しているwebtoon作品の『地獄』で、日本でもLINEマンガで配信されている。
 webtoonといえば縦スクロールを特徴とするスマホ向け漫画カルチャーで、Netflix担当者は「近年、webtoon原作の韓国ドラマが世界中で反響を得ていることを強く実感しています」と語っている。直近では、1月28日にNetflixで配信開始されたソンビドラマ『今、私たちの学校は…』が、Netflix全世界のTVショー部門のグローバル視聴1位を獲得するなど勢いは続く。

 このほかにも、軍隊を独特な視点で描いた『D.P. −脱走兵追跡官−』、グロテスクな怪物の描写も衝撃を呼んだ『Sweet Home −俺と世界の絶望−』、恋愛ドラマの『わかっていても』や『その年、私たちは』など、あらゆるジャンルでwebtoon原作ドラマが人気を博している。
 Netflixの他にも、BS日テレやU-NEXTで配信された『女神降臨』や、Amazon Prime Video配信の『だから俺はアンチと結婚した』などもwebtoonが原作。webtoon作品を多数扱うLINEマンガによると、実写化されたwebtoon作品は、2019年と2020年でそれぞれ1本だったのが、2021年は6本と右肩上がりで増えており、映像業界が優れたストーリーをwebtoonから発掘する動きはますます加速している。

脱“作家至上主義” 1人の才能に依存し過ぎない“分業制”でグローバル展開目指す

 そもそもwebtoonから優れたストーリーを続々と生み出されているのはなぜか。LINEマンガの担当者への取材から見えてきたのは、その精緻化された分業制性だ。

「昨今のwebtoonの多くは、脚本家や作画者、彩色をするカラーリスト、進行管理や制作指揮を担うディレクターなど、複数の各分野のプロフェッショナルによって共同制作されています。そうしたチーム体制をより強化するべく、アニメや映画のようなスタジオ体制で制作するチームも増えています」(LINE Digital Frontier株式会社コーポレートコミュニケーション部部長/小津貴央さん)

 1人の才能(=作家)だけに依存しない分業制を取ることで、クオリティをキープしながら連載の配信ペースを速められること、スランプに陥ったクリエイターがいてもフォローし合えること、世界観と方向性がブレることなくゴールに迎えることなどさまざまなメリットが考えられる。

 また、webtoonの特徴や構造そのものが実写化に適している、という指摘もある。

「あくまで私見ではありますが、webtoonは上から下にスライドする動きとともに新しい場面を目にする漫画形式ですので、コマとコマの距離を意図的に変えることで、シーンとシーンの“間”に緩急をつけることもできます。また、漫画を上から下に動かす動作が、上から下にカメラをパンしているようにも見えてきます。このような表現(間=時間軸、上下の動き=カメラワーク)は、映像的な表現に近いとも思います。映像クリエイターの方にとっては、映像化のイメージがしやすいのかもしれませんね」

 横開きの漫画と違ってコマ割りや見開きなどを盛り込まないwebtoonには、ストーリー性の豊かさを重視した作品が多い。こうした側面も、話数を重ねるごとに展開が生まれるドラマ向きと言えるだろう。

 加えて縦スクロールという構造は、冒頭にフックを持ってきやすい。コンテンツが膨大に溢れる昨今は、すぐに離脱をされないよう「冒頭インパクト」がセオリーの1つとなっているが(サビから始まる音楽、“冒頭5分が勝負”の配信ドラマなど)、そもそもwebtoonにはそうした移り気なユーザー心理を掴んで離さない特性もあったと考えられそうだ。

 webtoon発のドラマにも、原作の印象的な冒頭シーンを忠実に再現した作品が目立つ。これにより原作ファンが満足するのはもちろん、ドラマをきっかけに新たに原作に興味を持つ人も増えているようだ。

“商業的ヒット”は大前提、編集者を主導としたチーム戦略

  • 原作も話題を集めたNetflixシリーズ『その年、私たちは』Netflixにて全世界で独占配信中

    原作も話題を集めたNetflixシリーズ『その年、私たちは』Netflixにて全世界で独占配信中

 Netflix担当者は、「Netflixとデロイトコンサルティングの調査によると、Netflixシリーズ視聴者の約42%がコミック、小説、音楽など関連作品を視聴していることがわかりました」と証言している。そもそも実写化が原作ヒットに繋がるケースはかつてからあったが、「配信ドラマ」×「webtoon」の相乗効果でその影響はさらにグローバルに波及している。

 韓国の映像作品が世界を魅了するようになって久しいが、その背景としてコンテンツ産業の質向上と世界進出を、国を挙げて促進しているのはよく知られているところだ。

 そのコンテンツの根幹となる「ストーリー」を生み出すプラットフォームとして、webtoonへの本国での評価はますます高まっている。先頃はグローバルにパートナーシップを広げるNAVER WEBTOON社のキム・ジュンク代表が、コンテンツ海外進出の功労者に贈られる「2021大韓民国コンテンツ大賞」を大統領府から受賞している。

 2015年から2020年までの5年間で、韓国で製作されたNetflix作品は80本以上にのぼるという。ドラマ1話平均の制作費は1億円を超えるとも言われており、総投資額は約7億ドル(約805億円)と圧倒的な数字だ。さらにこの制作体制をさらに強化するべく、Netflixがソウル近郊に新たに2つのプロダクション施設を設立することを昨年発表している。

 韓国ドラマの勢いは今後さらに増すことが予想され、それと同時に優れた原作もますます要求されるだろう。それに応えるための策としては、先述のLINEマンガ担当者が証言したwebtoonの分業制は、"ハリウッド式"と言えるかもしれない。

 ハリウッド映画で絶対的な権限を握るのはプロデューサー(=制作総責任者)であり、監督(=作家)は編集権を持たない。つまり、プロデューサーが商業的成功を前提として、各分野の作家性をいかに作品に乗せるかを考えるのがハリウッドの制作スタイルと言える。一方で、作家の才能を前提として監督主導で「いい作品」を作ろうとする日本のシステムは、世界的な商業ヒットを狙う上ではどこか脆弱性もはらんでいる。

 グローバルでのヒット量産を目指す韓国が、webtoonはもとよりあらゆるコンテンツ制作でハリウッド式を踏襲するのは合理的と言えるだろう。

 Netflix担当者が「webtoonの強みはその無限の想像力にあります」と高く評価していること。そしてコンスタンスにストーリーを供給できる体制も相まって、その存在感はさらに大きなものとなっていきそうだ。
(文:児玉澄子)
実写ドラマが話題を集めたwebtoon漫画を読む
■『今、私たちの学校は…』(外部サイト)
■『その年、私たちは -青葉の季節-』(外部サイト)
■『地獄』(『地獄が呼んでいる』の原作)(外部サイト)
■『女神降臨』(外部サイト)

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