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池松壮亮×伊藤沙莉、映画『ちょっと思い出しただけ』“初共演”じゃなかった!?

 クリープハイプの尾崎世界観がジム・ジャームッシュの名作映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』に着想を得て書き上げた新曲「ナイトオンザプラネット」。この楽曲を託された松居大悟監督が、初となる完全オリジナルラブストーリーとして書き上げた映画『ちょっと思い出しただけ』(公開中)。主人公の男女を演じるのは、池松壮亮と伊藤沙莉。2人は「初共演」と聞いていたが、2人へのインタビューで「初共演」ではなかったことが判明!?

 10歳のときに劇団四季のミュージカル『ライオン・キング』の子役オーディションでヤングシンバ役に選ばれデビューした池松。映画初出演作がハリウッド映画『ラスト サムライ』(2003年)で、トム・クルーズ演じる主人公と心を通わす少年・飛源を演じたことでも知られるが、その『ラスト サムライ』が公開された年、ドラマ『14ヶ月〜妻が子供に還っていく〜』で芸能界デビューしていたのが伊藤。9歳だった。2人とも子役から確実にキャリアを積み重ね、日本のエンターテインメント界を背負う存在となっている。
――初共演の感想は?

池松“初共演”の方とお芝居することはしょっちゅうあることで、新しい出会いはとても喜ばしいことですが、とはいえどちらかというと苦手ですね(笑)。今作では、出会ってから6年間の日々を過ごしてきた2人の密度が必要だったので初めましての方と短い撮影期間の中でそれがどこまでできるのか、最初は、はてどうしようかと思いました。一瞬にして相手との距離感を縮めることができたらいいのですが、苦手だし、下手だし、だから徐々に徐々に、伊藤さんを観察して、どういう方なのかなというのを探りながら距離感を縮めていきました。

伊藤私はこう見えて、人見知りなんです。大概の人が人見知りじゃないですか。松居大悟×池松壮亮×クリープハイプという私にとってかなり熱いゴールデンタッグの作品に携われることが決まって、すごくうれしかったのですが、転校生のような感覚もあって、最初はめちゃくちゃ緊張していました、私の救いは、実は池松さんと初共演じゃなかったことです。

――えっ!? 初共演と聞いてましたが…。

伊藤実は、池松さんが出演されていた映画『わたしのハワイの歩きかた』(2014年)で、ハワイに向かう飛行機の中で池松さんの睡眠を妨害する後ろの席の乗客役で出ていたんです。そのワンシーンだけだったんですけど、そこからちゃんと会話ができる役で改めて共演できるということで、多少なりとも自分の成長を感じることができて、それを強みとして現場に臨みました。池松さんは誰に対しても謙虚に対等に接してくださる方だということはわかっていたので、池松さんについていけば、ベストなところにたどり着けるだろう、と勝手に思っていました。
――池松さんが演じたのは、怪我でダンサーの道を諦めた照生(てるお)。伊藤さんはタクシードライバーの葉(よう)。オリンピックが東京で粛々と開催されている2021年7月26日から、1年前の7月26日、2年前の7月26日…と、2人が出会った年の6年前までさかのぼっていきますね。特別な日だったり、そうではなかったり…でも決して同じ日は来ない。過ぎ去りし日々が愛おしく、特別なイベントがある日も、ない日も、毎日を大切に生きたいと思える作品でした。完成した映画を観た感想は?

池松どうでしたか?

伊藤2人でいるシーンよりも、どちらかというと個々のパートが多かったので、完成した映画を見て、照生くんそんなこと思っていたんだ…と、気づくことが多かったです。本当に元カレを見ている感覚になりました。

池松台本を読んでいるのに?(笑)

伊藤はい(笑)。現場で一緒にいたシーンも、例えば、街中で葉が運転しているタクシーを照生が見かけるシーンは、撮影時、私は車の中にいて、照生くんの表情まで見えていなかったので、初号でこんな顔してたんだ…と初めて見て、涙、涙でした。フェイバリットムービーが一つ増えました。

池松映画は一人では成立しないもの。今回のチームで本当にベストを尽くした結果、自分が目指したもの、みんなで探求したものが、ちゃんと形になっていて、自信を持って観ていただける作品ができた、と思っています。

 自分にとっては、クリープハイプの楽曲「ナイトオンザプラネット」が青春に決着をつけた歌であるように、映画『君が君で君だ』(18年)やクリープハイプ「憂、燦々」のミュージックビデオ(MV)、ドラマ『自分の事ばかりで情けなくなるよ』(13年)で松居さんや尾崎さんと2010年代を共にしてきたことへの決着、それらを経て、次の段階へ上がるための作品を目指しました。

 あの頃を成仏する映画や、あの頃を慈しむ映画は時代の変わり目にはたくさん作られるものですが、(感染症の世界的流行で)世界中の人たちが痛みを伴いながら、決定的に戻れない“あの頃”を持ってしまった今、過去にしがみつくのではなく、過去を無かったことにするのでもなく、全ての地続きに今があるということ、記憶も過去も誰かとつながりをもっている。1人だけど1人じゃないよ。そして私たちは今生きているということを映画にどう落とし込めるか。その答えが一つ、提示できればなと思っていました。
――俳優・池松壮亮の魅力は?

伊藤私自身、池松さんのファンなので、「池松さんを生で見ている!」みたいな感じもありましたので、撮影中は本当に贅沢な時間を過ごさせていただきました。池松さんは現場にスッと居てくださったので、こちらも気を張ることなく臨めました。

 現場で吐きそうになるくらい緊張することもある中、池松さんは相手を緊張させない魅力があったと思います。それを言葉で表現するのは難しいのですが、削ぎ落とされた状態というか、照生として背負っているもの、抱えているものはあったとしても、それ以外のものは何も持っていない、照生以上でも以下でもない状態で居てくださったので、信頼して、自分の身を預けることができました。

 2人でケーキを食べるシーンでは、池松さんがいきなりせりふをかぶせてきて、私は内心、「せりふがかぶった、NGだ」と思って素で笑ってしまったのですが、そのままOKになりました。池松さんが自然に遊びを入れてくださることで、私は素直に反応すればいいだけでした。「引っ張っていくぞ」という気負いが全くないのに、スーッと引っ張って、導いてくださる感じが、すごく居心地が良かったです。

 図々しいこと言うと、カメラが回っている間は、本当に彼氏だと思っていました(笑)。監督の「カット!」がかかるたびに、その幸せタイムは強制終了するんですが…。池松さんのファンの方がこの映画をご覧になったらたまらなくメロメロになると思います(笑)。
――本作の池松さんは、彼氏みが強いですよね。伊藤沙莉さんもドラマ・映画に引っ張りだこですが、共演されていかがでしたか?

池松抜きん出ているな、と思ったのが、伊藤さんの無防備さです。その場の空気への身の預け方、何かが聞こえた時、何かが見えた時の反応の無防備さがありました。自分にとっても学びと新鮮な反応がありました。

 恋愛映画といえば、人生で忘れられない瞬間を紡いでいくものですが、『ちょっと思い出しただけ』は少し違います。カップルが付き合い始めた日とか、別れた日の当日を描くのではなく、たとえそれが自分の誕生日であったとしても、特別なことが何も起きない日も描かれています。そういう物語でシーンを保たせるには、とにかく密度を上げることだと考えていたのですが、僕がなにやら目論んでいるのを伊藤さんはこっそり観察していて、一緒に落としどころを探してくれたような感覚でした。2週間という短い撮影期間にベストを尽くすことができたと今、思うことができてよかったです。相手役が伊藤さんだからできたことだと思います。

――「現場にスッと居てくださった」「無防備」、言葉は違いますが、お二人ともお互いに同じような印象をお持ちだったようですね。

池松どこか価値観があっていたのかもしれないですね。

映画『ちょっと思い出しただけ』ロングトレーラー

撮影クランクアップから遡るメイキングムービー

映画『ちょっと思い出しただけ』
2022年2月11日(金・祝)全国公開
出演:池松壮亮、伊藤沙莉 ほか
監督・脚本:松居大悟
主題歌:クリープハイプ「ナイトオンザプラネット」(ユニバーサル シグマ)
制作・配給:東京テアトル
公式サイト:choiomo.com
公式Twitter・Instagram:@choiomo_movie
(C)2022『ちょっと思い出しただけ』製作委員会

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