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人生激変、33歳になった“ビリギャル”の今 次なる挑戦はハーバード大学「大人を変えられる力が欲しい」

『ビリギャル』のモデルになった小林さやかさん

『ビリギャル』のモデルになった小林さやかさん

 2013年、塾の講師が描いた書籍『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話』が売上120万部を突破。2015年に映画化されると、観客動員数280万人を超す大ヒットを記録し、その印象的なタイトルからも大きな話題となった『ビリギャル』。日本中を沸かせた大ブームから6年、主人公のモデルとなった本家・ビリギャルの小林さやかさんは、33歳になった今、アメリカ留学に向けて、再び猛勉強に励んでいる。さやかさんに何が起きたのか? “ビリギャル”ブームがさやかさんに与えた影響、そして見据えている未来について聞いた。

結果からしか判断しない人たちに伝えたい「私の話は奇跡なんかじゃない」

  • 『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』坪田信貴著/(株)KADOKAWA アスキー・メディアワークス発行

    『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』坪田信貴著/(株)KADOKAWA アスキー・メディアワークス発行

 『ビリギャル』が一大ムーブメントを巻き起こしていた頃、「人を幸せにする仕事がしたい」という思いから、ウエディングプランナーとして働いていたさやかさん。自身の体験が巷で大きな反響を呼んだことについて、「私だけじゃないと思っていたから、正直、ビックリした」と振り返る。

「慶應に入ったら同じように這い上がってきた人はいっぱいいて、私ってそんなに特別じゃないんだって思ってたから、なんでこんなにヒットしたんだろうって、最初は思ってました」

 ところが、その『ビリギャル』の大ヒットによって、さやかさんは、急転、自身の生き方を変えることになる。殺到した講演依頼に応えていくなかで感じた2つの違和感から、自身のやるべきことに気づいたのがきっかけだった。

「1つは『これは奇跡の話だ』と言う人たちがたくさんいたことでした。私の話は決して、奇跡なんかじゃない。私が勉強を全然しなかったのにはちゃんと理由があって、何のために勉強するかわからなかったから。教室で学ぶことが、私たちの住んでいる世界とどうつながっているのか、学ぶことで自分にどんな得があるのかわからなかった。そして、それに答えようとしてくれた大人は、当時の私のまわりには誰一人、いなかったんです」
  • ギャルだった当時の小林さん

    ギャルだった当時の小林さん

 そんなとき、出会ったのが、塾の講師であり、後に書籍の著者となった坪田信貴先生だった。

「坪田先生は心理学を専攻していたこともあり、一人ひとりの生徒に対して、この子はこういうふうにアプローチしたら伸びるなとか、生徒ひとりひとりに合った指導をする先生でした。私は坪田先生に、学ぶことは、ただテストのために暗記することじゃなくて、自分の人生を変えていけるすごいパワーを持ったものなんだと教えてもらいました。学ぶ意味と楽しさに気づけた私は、気づいたら1日15時間勉強するようになっていました。指導者が学習者に与える影響力って、本当に大きいです。そして、講演で多くの学生に会うようになって、当時の私と同じ疑問をすごく多くの子どもたちが抱いていることに気づきました。彼らの疑問や不安に、今度は私が応えていきたいと思ったし、私があんなに変われたのには、ちゃんと理由があるんだってことを伝えていきたいと思ったんです」

 さらにその思いを強めたもう1つの違和感が、「この子はもともと頭が良かった」という反応が予想以上に大きいことだった。

「人は結果からしか判断しない。坪田先生は、私が慶應に受かる前からそう言っていました。私がもし本当に慶應に受かったら、もともとそういう才能があったからと言われるだろうし、もしだめだったら、ほらどうせ無理だった、と言われる。だれも、そこにたどり着くまでのプロセスで、本人がどれだけどんなふうに頑張ったかなんて見ようとはしてくれないものだ、って。でも、それってすごくもったいなくないですか?「うちの子は地頭が悪いから無理」と、なぜだか信じてしまっている親御さんたちに、あなたのお子さんも可能性に満ちあふれているんだってことを伝えたかった」

講演活動は年122回にも その中で気づいた自分が”みんなとは違う”こととは

  • 「ビリギャル」時代の学習机

    「ビリギャル」時代の学習机

 この2つの思いを原動力に、さやかさんは、仕事を辞め、本格的に講演活動に尽力。その数も徐々に増え、2019年には年122回もの講演を行った。その過程で、自らもっと“学びの必要性”を感じ、大学院にも進学した。

「講演活動をしている中で、『私はみんなとは違う』と気づいたことが1つだけありました。それは、私に坪田先生という科学的に実証されている指導法や根拠を持ちながら、自信を持って導いてくれる指導者がいたこと。この環境があったから私は変わることができた。でも、多くの子にはそういう指導者がいないと分かって、子どもたちの未来を変えるためには、まず大人を変えていかなければいけないと考えるようになったんです」

 そして思い出したのが、坪田先生が常々、口にしていた『教育とは、情熱と科学の融合だ』という言葉だった。

「私は学生時代のほとんどを教育に絶望して過ごしてしまったけど、一人の先生との出会いで人生が変わった。教育が持つインパクトを、誰よりも実感してきた自負があります。それだけに、すべての子どもたちにとっていまの教育をより意味のあるものにしていきたいという情熱を、強く持っています。だからここからは、なぜ、昔の自分があんなふうに変われたのか、学校の先生と坪田先生のアプローチはどう違ったのか、そしてどんな環境があれば学習者は自立して学ぶことを楽しむことができるのかを、科学の視点からしっかり勉強して、言葉にして発信できるようになりたいと思うようになりました」

ハーバード大学で学んだことで日本の学校教育を変える!「『ビリギャル』は私に課せられた使命」

 大学院で「学習科学」を専攻したさやかさんは、学べば学ぶほど、自分がなぜあれほど勉強が嫌いだったのか、いまの学校教育がいかに科学的に実証された学習理論を元にせず、現代社会のニーズにも即していないものになってしまっているかを痛感したという。そして、学びを得た先のさやかさんの視点は、生徒側、親側だけでなく、先生側に向けられるようになっていった。

「先生たちの中にも今のままじゃいけないと思っている人がたくさんいることを知りました。でも、どう変えればいいかわからないし、日々の仕事が忙しすぎて、学んだり、考えたりする暇がないということも。昔は学校の先生が大嫌いだったけど、大人になって、そして多くの先生方との対話を通して、先生たちが悪いんじゃないってわかった。でも同時に、子どもたちの学習において、先生たちがやっぱりキーパーソンだとも思いました。今、教育は大きな過渡期を迎えています。現場の先生たちがそのことを一番実感してるはず。今こそ、先生たちが学ぶ時間や機会、リソースを十分に確保すべきだし、先生たちが学び続けられる環境が必要です。私がここに貢献できるようになれたらいいな。」

「もっと知識とノウハウを身につけて、大人を変えるだけの力がほしい!」……その思いが導いた答えがアメリカへの留学だった。
 久しぶりに猛勉強を始めて2年、今年受験するアメリカの大学院へすでに出願も終えているという。「もちろん、目指すなら、ハーバード!」と弾ける笑顔で語るさやかさんだが、自信をなくし、泣きべそかきながら机に向かう日や、くじけそうになった日も多々あるのだとか。だが、そこで力となったのは、“ビリギャル”時代の経験だった。

「過去の成功体験があるから、勉強していて、ネガティブになるときもあるけど『やり続けていれば大丈夫』『あのときできたから今回もできる』って、歩みを止めない力になってると思います。それに頑張ったら頑張った分だけ、違う世界に行けるし、そこにある新しい出会いや変化にワクワクできるということを知っているので、アメリカ留学という目標も、そのワクワクで頑張れています」

 今、講演で出会う生徒たちの中には、「私もビリギャルになる」と言ってくれる子も多いのだとか。その意味は、文字通りの“ビリ”な“ギャル”ではなく、どん底だったけど、頑張って這い上がるという「自分、変わります」の前向き宣言。「ビリギャルがポジティブの代名詞になっていることがとてもうれしい」とさやかさん。だからこそ、今も、「自信を持ってビリギャルを名乗りたい」と照れ笑いを浮かべながら語る。

「“ビリギャル”って言葉はネガティブ×ネガティブかもしれないけど、私の中では“勲章”なんです。勉強なんかしないで遊びまくってたギャル時代も私にとって勲章だし、ビリだったけど、次のステージに行くためにがむしゃらに頑張ったことも勲章。あの時代がなかったら、学校でクズ扱いされるどん底も味わわず、大人にあんなに疑問を抱くこともなく、今の私はなかったから。やりたいこと、やるべきことに気づいた今、“ビリギャル”は私に課せられた使命なんだって思っています」

 自分のすべての経験を糧に、自信とプライドを持って、歩みを続けるさやかさん。さらに知識とスキルを身につけたさやかさんが、“ビリギャル”だったからこそのパワーで、子どもたちの学びの世界をより良く変えていってくれることに期待したい。

(取材・文/河上いつ子)

YouTube ビリギャルチャンネル (毎週月曜夜21:30からはstudywithme!!)

https://www.youtube.com/channel/UCe10izLafgDjPEuXQHzjSkQ

・Twitter@sayaka03150915
・instagram@syk03150915
・小林さやかHP(講演依頼はこちらからお問い合わせください)  https://birigal.biz/

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