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生瀬勝久、芸歴40年で「代表作はない」 “バイプレイヤー”の呼び名への違和感語る

  • 今年でデビュー40年を迎えた生瀬勝久

    今年でデビュー40年を迎えた生瀬勝久

 槍魔栗 三助(やりまくり さんすけ)として演劇界デビューしてから40年。NHKの朝ドラ初出演を機に本名・生瀬勝久に改名し、『トリック』『ごくせん』『リーガルハイ』など、数多くのヒット作のキーパーソンとして出演してきた。この40年間オファーが途切れるどころか、ドラマ・映画・舞台と、常に同時並行。どんな作品、役柄でも爪痕を残し、日本に“バイプレイヤー”という新たなポジションを見出した第一人者だ。しかし生瀬本人は、その言葉が大嫌いだと語る。

就職内定を蹴って演劇界へ 俳優は“天職”「アルバイト時代も下積みと思ったことはない」

 ドラマの印象が強い生瀬だが、元は劇団出身。同志社大学時代、『劇団そとばこまち』にスカウトされ、役者の世界に足を踏み入れた。舞台の奥深さに魅了され、一般企業への就職が決まっていたものの、辞退して卒業後は座長に就任した。

「元々役者になりたいっていう気持ちはあったんですけど、それで生活できるなんてみじんも思ってなくて。じゃあなぜ役者になりたいと思ったかといえば、役を演じるのが好きで。でも多分それで生計は立てられないだろうから、アルバイトをすりゃいいだろうと」

 小劇場での収入は決して多くはない。それでも就職の内定を蹴り、アルバイトをしながら日々演技を磨く道を選んだ。

「下積み時代とか言われますが、下積みとかくすぶってたとか思ったことないです。はたから見ればそうだったのかもしれないけど、そんなこと一度も思ったことない。だから、僕貧乏話とか大嫌いなんですよ。下積みでこんなラーメンやライスを食べてたとかいう役者、大嫌いですもん。当たり前だろって(笑)」

 それから40年。“下積みゼロ”の生瀬は、升毅や古田新太らとともに関西学生演劇ブームを牽引し、テレビからもオファーが殺到。舞台出身のテレビスターが生まれる土壌を固めた。『探偵!ナイトスクープ』の初期メンバーとしてコメディアンとしての才能も発揮し、バラエティ・ドラマ・映画と、日本のエンタメ界に欠かせない存在となった。

「僕はツイているとしか思ってないです。好きなことをやって対価をいただけるという、こんな幸せなことはなくて。だから、お仕事は全くもって苦じゃないんですよ。もちろん、眠いとかそういうのはありますよ(笑)。だけど、悩むとかは全くないですね。もっと頑張らなきゃと思うことはありますけど、もう嫌だなとか辞めたいとかは一度も思ったことがないです。だから、僕にとって本当に天職だなって思います」

『トリック』も『ごくせん』も代表作ではない「過去のことはどうでもいい」

  • スピンオフドラマ『警部補 矢部謙三』(テレビ朝日)

    スピンオフドラマ『警部補 矢部謙三』(テレビ朝日)

 2000年放送のドラマ『トリック』(テレビ朝日系)では、警部補・矢部謙三役で、主演の仲間由紀恵・阿部寛を凌ぐ存在感を見せつけた。テレビ第3シリーズ、映画第4作に及ぶ人気作にまで押し上げ、生瀬のテレビ初主演となったスピンオフドラマ『警部補 矢部謙三』も続編が制作された。しかし、彼自身にとって本作が“代表作”でもなければ、“ターニングポイント”でもなかったと振り返る。

「『トリック』とか『ごくせん』とか、多くの方に観ていただいた良い作品に参加させていただけたのはとてもありがたいことなんですけど、矢部謙三や猿渡教頭が僕の代表作ではないんです。どんなワンポイントの出演でも、そのキャラクターを一所懸命やってきただけなので、僕の芸能生活においてターニングポイントは特にないです。世間の評価っていうのは、見てる数によって僕の評価があると思うんですけど、過去のことはどうでもいいんですよ。だって、それから歳とってますもん。これから何をやるかですから」
 昨年も、ドラマ『知ってるワイフ』『コタローは1人暮らし』『着飾る恋には理由があって』『漂着者』『アンラッキーガール!』、映画『コンフィデンスマンJP プリンセス編』『あなたの番です 劇場版』と出演作が途切れることはなかったが、今年もすでにドラマ『ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇』、映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』に出演。さらに、28日に公開される世界的人気シリーズ『アダムス・ファミリー』の劇場版アニメ第2弾『アダムス・ファミリー2 アメリカ横断旅行!』では、前作に引き続き、アダムス家のパパ・ゴメズ役を演じた。

「忠実に、というよりも日本語でどう表現するかということに集中しました。前作はとっても真面目にやってたんですけど、せっかく自分がまたやるので、今回は楽しくデフォルメして出来るようにと思って取り組みました。ありがたいことに、ゴメズのビジュアルがとっても似ていて(笑)。まるで自分がアニメーションになって動いてるような感覚で出来ました」

 続編となる今作は、思春期を迎えた娘のウェンズデー(吹替:二階堂ふみ)の成長と、それを見守り、困難には全力で立ち向かう家族の愛が描かれている。自身も父である生瀬は、過去にベスト・ファーザー賞を受賞している。

「文化も言葉も違うのに、家族というのは世界共通で、同じような悩みや出来事があるんだなと思いました。絶対的に幸せな家族っていうのは存在しなくて、乗り越えるということが大事なんだなと。個人的には、理想の家族像っていうのはないんです。とにかく家族で楽しく毎日が過ごせれば良いですね。楽しいっていうのはいつも笑ってるということではなくて、色んな悩みや大変なことを、どっちかの力でじゃなくて、きちんと話し合って乗り越えられれば夫婦になった甲斐があるし、家族を持った甲斐があるなという風に思っています」
 次々と展開していくストーリーで、アメリカンコメディの真骨頂が発揮された本作。これまで日本のドラマに150作以上出演してきた生瀬だが、吹替は3作目。英語の爽快なテンポに合わせて作られたアニメーションに、リズムを崩すことなく日本語を当てるのは容易ではない。しかし、彼の持ち味である独特の表情や仕草が封印されたアニメ吹替作においても、生瀬は見事に彼らしく、彼にしかできないゴメズを演じ切った。

「声で色んな表現をしなきゃいけないっていうのと、動きも表情も出来上がっているものに当てるという感覚はあまり慣れていなくて、苦労しました。キャラクターは英語の口に合わせているんだろうけど、うまく日本語に当てはまって、あたかも日本語の喋れるキャラクターかのように生き生きとすれば、やった甲斐があったというか。監督と相談しながら、ここに『とても』を入れましょうとか、語尾に『な』を入れようとか、現場でどんどん変わっていくので、すごいなと思いました。こういう風に作っていくんだなと」

「大嫌いなんですよ、バイプレイヤーと呼ばれるの」初の主演作で感じた“不向き”とは

 いかなる作品でも、ほんの少しの出演でも、たちまち目を奪われ、強烈な印象と爪痕を残していく生瀬勝久。主演作は少ないながら、唯一無二の魅力を放つ演技に対し、いつしか“名バイプレイヤー”と称されるようになった。

「大嫌いなんですよ、バイプレイヤーと呼ばれるの。まず日本独特の言葉で、アメリカで『僕、バイプレイヤーです』って言ったって通じないですからね。脇の人間…それって色んな人に失礼だと思うんです。なんでそこで区別するのかなって。あなた主演はやらないんでしょって言われているような気がして。別に主演をやりたいわけではないですよ」
  • 『スープ〜生まれかわりの物語〜』(アミューズソフト)

    生瀬の初単独主演作となった『スープ〜生まれかわりの物語〜』(アミューズソフト)

 2012年公開の映画『スープ〜生まれ変わりの物語〜』では、初単独主演を務めた。事故死した父が、死後の世界でも娘を想い続ける親子の絆を描いた作品だ。

「辛かったです。主演がどうこうというより、受けの芝居で、心が揺さぶられる役柄というのは、僕は向いてないのかもしれない。見てる方の共感を得るための芝居っていうのかなぁ…。なんかどっか自分の中で嘘なんだよなぁと感じちゃいます。でも、自分のイメージにない役の方が燃えます。僕の場合、だいたい上に弱くて下に強いというキャラが多いじゃないですか(笑)。自分の中でたくさんの経験もあるし、やり方っていうのは持っているんだけど、そうじゃない役がきたときに『さぁ、どうやろうか!』とワクワクしますね」

 自分にできないことはない。どんな仕事も断らない。後悔も反省もしない。それが生瀬のポリシーだ。

「後悔してたら身体が持たないんです。だから楽な方に行ってるんです。どこかで後悔するということを捨てたんでしょうね。しょうがないもん、自分がやって選んだことだから。後悔するほど無駄なことはない。文句を言うほど無駄な時間はない」

 今年で62歳を迎える生瀬だが、「キャリアに甘んじたくない」「唯一無二になりたい」「目が離せない俳優になりたい」と活き活きと語る。

「ずっと高みを目指してるんですよ。あと、何より楽しく。やっている人が楽しまないと見てる人に伝わっちゃう気がするんですよね。どんな悲しい芝居でも、楽しそうにやっているのが理想かな。あと、長く続けるには健康で元気でないとだめです。僕が元気でいられるのは、プライベートがものすごく充実しているからだと思います。色んなことにまだ興味があるって言うのが一番の原動力なんじゃないかな。本当に色んなことで刺激がまだ感じられている。凝り固まってないもん、考えが」

 生瀬にとって演じるとは――。最後に問うと、「一番好きな趣味です」と微笑んだ。


(取材・文=神谷内航平)
生瀬勝久吹替出演:『アダムス・ファミリー2 アメリカ横断旅行!』
1月28日(金)TOHOシネマズ日比谷、渋谷シネクイントほか全国ロードショー
監督:グレッグ・ティアナン、コンラッド・ヴァーノン
脚本:ダン・ヘルナンデス、ベンジー・サミット、ベン・クイーン、スザンナ・フォーゲル
吹替:杏、生瀬勝久、二階堂ふみ、堀江瞬、秋山竜次、京田尚子、大塚明夫
配給:パルコ ユニバーサル映画 (C)2021 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All rights reserved.

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