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危機的状況から生まれたラジコが救世主に? 若者リスナー急増は「ラジオへの先入観がない」

地方ラジオ局にとっては競合が増える懸念も…、「タイムフリー」「エリアフリー」がもたらした功績

  • 株式会社radiko取締役業務推進室長 坂谷温氏

    株式会社radiko 取締役業務推進室長 坂谷温氏

 ラジオ業界に革命をもたらしたタイムフリー機能については、業界全体が危機感を共有する中、多くの放送局が協力的だったという。

 「タイムフリー機能により、放送1週間以内であれば過去の番組をさかのぼって聴けるようになったことで、ライトユーザーの利用が増えたと感じています。デジタルの特性上、ラジコはどういった属性の方がどのような番組を聴いているか可視化できます。性別・年代、嗜好、日頃の行動データなどが、ユーザーに寄り添った編成方針や番組づくりに活用されています」

 一方、エリアフリーはやや難航した面も。地方ラジオ局にとってはエリア外の放送局が競合になってしまうからだ。他局のコンテンツともしのぎを削らなければならなくなる。「放送局からすれば、これまでの放送文化を大きく変えるチャレンジであったことは間違いありません。現在では、全国から番組宛にメールが届くなど、逆にリスナーが広がったという声を多くの放送局からいただいております」

 過去を振り返ると、常識が覆った2011年の東日本大震災。災害時における重要な情報源としてラジオの意義が見直された。当時、サービス開始間もなかったラジコは、即座にエリア制限を解除。現地放送局のナマの情報をエリアを越えて届けたことで、ユーザー数を拡大する契機となった。

「状況は用意されている」ネットニュースに新規音声メディア…、スマホの中で共存する関係に

 昨今はClubhouseなど新しい“音声メディア”が生まれ続けている。これも音声市場を広げる役割を果たしているため、ラジコにとっては追い風だと坂谷氏は捉える。「また電車でも、多くの人がスマホを持ちイヤホンをしています。これはまさに多くの人々にとってラジコに出会いやすい状況であることを意味しています。加えて、ラジコは基本的に“ながら聴取”で楽しまれる方が多い。SNSやニュースアプリを開きながらラジオ番組を聴くこともできるので、他のスマホアプリとも共存できる存在でもあるのです」

 昨今、ラジオ番組で火のついた話題がネット上で拡散されていくことも多いが、その際にもタイムフリー機能が役に立っている。ニュースサイトで切り取られた番組に対するコメントの背景を、ユーザー自身が後から聴いて確認できるためだ。

「課題もあります。ラジコにはシェア機能があり、自分の聴いている番組を他のユーザーに共有できるのですが、使用頻度はまだ多くはありません。また、コアなリスナーは決まったコンテンツのみ聴取する傾向があるため、他にも面白い番組がたくさんあることを知っていただきたい。ラジオの魅力をより多くの方に知っていただくために、ラジコとしても努力を続けていきたいですね」

 目指すのはライトユーザーとコアユーザーの共存。若者たちから再び火がついた音声メディアの今後はどうなっていくのか。どんな文化がつくられていくのか、非常に興味深い。

(取材・文/衣輪晋一)

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