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「真のメディアの姿」いまだネット称賛続く地方局アナ、震災報道でキー局に怒鳴った理由語る
「今後も伝えていきたい」営業職でも変わらない、山田さんの報道に懸ける思いとは
山田理すごく難しい質問ですね。私個人の意見としては、震災の時もそうでしたが、本来的には危険をあおるのではなくて、じゃあみんなどうすればいいの?ということを伝えたらいいのではないでしょうか。例えば、岩手県内では感染者が1人も出ていない(3月26日取材時)中で、マスク・生活用品はどうなっているんだ?と伝えると危険をあおることになる。じゃあ目に見えないウイルスを相手に、映像取材で何を伝えられるかといったら、自宅で子どもたちが何をするべきなのか?改めて何に気を付けたらいいか?をやるしかないと思います。専門家の人の話もどれが正しいかわからない。行政批判をしていればいいということでもない。あおられると、変に怖い印象になっちゃう。どうしようどうしようとなる。もしかすると、全然関係ない話題のほうがいいかもしれない。正しい情報を知りたいのはもちろんですけど、どこかで切り離して、じゃあ違うことは、という思考も必要かなと。報道とはいえ、やはりテレビはエンターテインメント性がないとだめだと思っているので。
山田理当然ありました。あの時に生中継をした立場として、ずっと震災について取材する責任があると思っていました。今もあります。ただ、系列内でもアナウンサーが営業にいくのはよくあるケースで、会社員なのでしょうがないですよね。もちろん自分のスキルが違う形で生かされることも多々あって、営業でも勉強になっていることもたくさんあるので、楽しいですよ。最近、局内で部署間をまたいで業務をする制度も新しくできて、去年の夏は実況を手伝ったりもしました。
――今後の目標を教えてください。
山田理震災から数年後、奥尻町の町長をスタジオにお呼びしたことがありました。その時、町長は自信満々に「北海道南西沖地震から5年で、奥尻島は完全復興しました」と宣言されたことが印象的でした。それが岩手でいつになるかわからないけど、沿岸に住んでいる方が「復興したよね」という声が拾えるような仕事をしていきたいですね。岩手県全体では規模も違いますし、町が復興したからといって心の復興は進まない部分もあるので、すごく難しいですけどね。 “復興”という言葉ってこの9年間ずっと使われているものの、そもそもそのゴールが何なのか、ということも含めて、今後も伝えていきたいです。
ネット上でどれだけ称賛されていても、「褒められることではない」「反省ばかり」と語る山田理さん。岩手朝日テレビでともに働いていた後輩によると、彼は「社内のみならず、岩手県中で引く手あまたな人」だと語る。
あのニュース映像を見る限り、正直インタビュー前は厳格で怖いイメージがあったが、実際の山田さんは驚くほど穏やかで、謙虚で、温和な方だった。一度は“報道に何の意味があるのか”と思い悩んだものの、営業職に移っても、“報道の人間”という意識は今も常にあるという。何らかの形で地元に貢献したい――。その思いは十分に果たしているだろうが、これからも山田さんの地元への恩返しは続く。