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“白マスク”はダサい?おしゃれアイテム化で若者が支持、”新世代マスク”躍進のワケ
発売当初は30代〜40代男性ターゲット、CMは『キン肉マン』起用でインパクト重視
堀田さん 花粉症の方を対象としたインターネット調査で、約80%がマスクによる花粉対策が不十分であると感じていました。そして、花粉用マスクとして重視するのは「顔にフィットする(顔に密着する)」、「呼吸がしやすい」、「花粉を通しにくい素材である」であること。花粉対策としてマスクの着用は最もポピュラーでありながら、ユーザーが満足していない事実に疑問を感じ、マスクを使用する方のQOL(Quality Of Life)を高める製品を考えました。そして化粧用パフにも使用されている柔らかく伸縮性のあるポリウレタンをベースにした新ポリウレタン素材を開発。顔に密着し、花粉の侵入を徹底ガードする、全く新しい「新世代花粉用マスク」を発売することにいたしました。つまり、アイデアの源は課題を解決することにあったということです。
――そのような今までに無いマスクの開発はとても苦労したのではないでしょうか。
堀田さん 具体的に申し上げることはできないのですが、非常に長い年月を経て進めてきました。また、現在も開発は進められています。これまでには、ポリウレタンを安定的にマスクに加工する点や、マスクの色や形の決定には最後までこだわり、何人もの関係者が試作や試着を繰り返し、調整しながら現在の形に収まりました。
――実際に使ってみると、その機能以上に快適さを感じます。
堀田さん 伸縮性に優れた素材ですから、長時間着用でも耳が痛くならないことや、通気性が良い素材ですからメガネをかけてマスクを着けてもマスクが曇りづらいなど、マスクユーザーにとってうれしい特徴を兼ね備えたマスクに仕上げることができました。
堀田さん 機能性の高いマスクを花粉対策のギアのように30代〜40代男性に広げることを目標としていました。そのために、機能性を中心としたアピールを実施していました。
――当初、CMには『キン肉マン』の人気キャラクター「正義超人ロビンマスク」を起用されており、『キン肉マン』ファンから再現度で賞賛の声も上がっていましたね。
堀田さん 30代〜40代の男性に向けて、これまでにない全く新しいマスクの登場感をたたせるためには、製品に負けないくらいのインパクトをCMで表現する必要があると考え、「ロビンマスク」をクオリティ高く実写化することにしました。プロモーションの一環としてOOH(屋外広告)も展開。フォトスポット化していく様子を確認しながら、ファンの方にもお楽しみいただけていると喜んでいました。
ファッション性シフトが奏功、20代女性もターゲット層に
堀田さん 意識調査で、男性が一番重要視するのはマスクの機能性であることがわかりました。一方で、白マスク姿を“ダサいもの“と感じており、見た目については半ばあきらめているという声も。女性は「カラーマスクの着用は恥ずかしい」と敬遠するグループと、「自分好みであれば着用したい」という積極的なグループに大別されました。これらのことから、マスク市場は急激な拡大によって、単なる衛生材料という存在から身に着けるアイテムと考える層が出現しているのではないかと捉えました。そこで、カラーマスクへの挑戦に踏み切りました。
――その後カラーバリエーションも増えていきさらにファッション性が高まっていますね。
堀田さん 『PITTA MASK GRAY』を発売した2014年にLOOK BOOKを公開。GRAY以降の展開は、気分やコーディネートにあわせて色でマスクを選択できるようにカラーラインアップを強化しています。NAVYのように日本人に馴染みの深いカラーから、Baby PinkやSoft Beigeなど女性のスタイルや嗜好に合わせたカラーを展開したことで、ファッションアイテムとして使用いただけるものと考えています。
――また、MVも制作されてスタイリッシュに展開されていました。プロモーション方法は発売されてからどのように変化しましたか?
堀田さん 発売当初は30〜40代男性への訴求としてキャラクターを用いた話題性で拡散を狙うことからスタートし、その後、製品の機能をシンプルに訴求するものに変化しました。急激な需要の高まりから生産が追いつかずプロモーションの実施が叶わない時期を経て、マスクの広告としては類のない「ミュージックビデオ」を制作することに。MVでは子どもから大人まで使用可能なファッション性を伝えるだけに留まらず、ハードなダンスシーンでも息がしやすいばかりかマスクがずれないことも訴求しています。昨年度は初めて女性を意識した3色アソートモデルのアイテムも販売。20代女性をターゲットにプロモーションを展開したことで、多くの女性にも愛用していただいています。
堀田さん 発売3年間は販売数を大きく増やすことができませんでしたが、2016年ごろから販売数が増え始め、5年間で発売当初と比較して97倍となりました。
――97倍! 浸透をご実感される機会は格段に増えたのではないでしょうか。
堀田さん 『TOKYO FASHION WEEK』に集まるファッショニスタの方々が『PITTA MASK』を着用してファッションを楽しんでいる姿や、著名人の方々の着用画像からインスピレーションを受けた若年層が、花粉症対策が必要とは考えられないタイミングに着用する姿こそが「MASK×FASHION」の象徴ではないかと思います。その姿を見るにつけ、ファッションアイテムとして受け入れられつつあるのではないかと感じています。
インフルエンサーの着用もカギに、アジアでも浸透へ
堀田さん 大変うれしく思いますし、ウェブやSNSによって製品が想定以上のスピードで大きく広まったので、大変ありがたいです。また着用経験者からは、いろいろな機能や着け心地の良さから他のマスクには戻れないといった声もあり、口コミが太く強いものになっていると感じています。
――このような反響はどのくらい想定されていましたか?
堀田さん SNSが盛んな時代ですから、「インフルエンサーとして著名人の誰かが画像を上げてくれれば広がるのになぁ…」くらいは願っていましたが、ここまで大きく広がるとは想定しておりませんでした。ファッションアイコンの方々が着用する画像を見ることはカラーマスクを見慣れていく効果を生んでいて、着用のハードルが下がっているように感じています。そして、自分でも着けたい、おしゃれをしたいというマインドが広がり、受け入れられるようになってきたと思います。
堀田さん 海外に向けての引き合いが増え始めたのは2016年でした。現在販売されているのは、中国、韓国、香港、台湾、タイなど東アジア、東南アジアの地域です。
――海外と日本で反響に違いはありますか?
堀田さん 中国や韓国では、芸能人のマスクというイメージが先行しているようです。また、中国では、白い肌が美徳とされていることから、UVカット機能に関する着目度が高いのではないかと思います。