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草なぎ剛に訪れた変化の時、香取と稲垣も「違うステージに入った」

草なぎ剛

 公開延期となりながら、6日から3週間限定の劇場上映が決まった草なぎ剛主演映画『台風家族』。草なぎにとっても「特別」な本作では、クズな父親役を演じながらも、自身の両親への思いがリンクしたという。年齢を経たからこそ受け入れられる、親子の関係とは? 同じく今年、相次いで“父親役”を演じた香取慎吾、稲垣吾郎への見方も語った。

「愛や感謝だけじゃなくて、後悔とか恨みも含めて」…年々増していく“親”への感情

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――『台風家族』は、本来なら6月に公開予定だったのが3ヶ月延期され、6日にようやく公開になります。
草なぎ剛 映画って、撮影したら公開されるのが当たり前だと思っていたけど、そうじゃないこともあるって初めて知った。今回、ファンのみんなが声を上げてくれて、なんとか公開にたどり着くことができた。そういう意味でも、僕にとって特別な意味を持つ作品になりました。公開できるだけで幸せだなって。

――本作は、市井昌秀監督が12年間も温めてきたテーマだったそうですが、誰にも多少なりとも思い当たる“家族”のみっともなくて、必死で、だからこそかけがえのない関係性や思いが描かれていて。でも全体のバランスでいうと、ハラハラする部分と笑える要素が9割。特に草なぎさん演じる小鉄は、かなりのクズでしたね(笑)。
草なぎ剛 弱いやつなんです、小鉄って。10年前に銀行強盗をして行方をくらました両親の見せかけの葬儀をするために、兄妹で集まることから物語が始まるんですけど、撮影の現場がもうね、暑くて暑くて(笑)。残された遺産を、兄妹4人で分けることになって、小鉄は長男であることを盾に、全取りしようとするんです。ネチネチと、小狡い手を使って(笑)。さらに、父親のことを徹底的に恨んでいて、ありえないくらいに恨み節を言うんです。

――小鉄を演じたことによって、実際の家族への思いに変化があったりしましたか?
草なぎ剛 ありました。実際、僕もこの歳だから、普段から父ちゃん母ちゃんのことを思う時間が増えてきていて…。映画の中で、小鉄が「父ちゃん」「母ちゃん」と叫びながら走るシーンがあるんですが、今思うと、そこは演技じゃなかったのかもしれない。僕の今の気持ちと台詞がすごく近くて、本当は僕も「父ちゃん」「母ちゃん」って叫びたかったのかなって思った。

 自分の親も歳を重ねて、反発したりぶつかりあったり、いろんなことがあったとしても、本気で親のことを思うと自分がものすごく純粋になれる。そのことに、結構グッと来てる。今になって、人間の中にある“心の叫び”とか“むき出しの感情”の多くは、親に対して向けられるものなんだなってわかった。それは、愛や親しみや感謝だけじゃなくて、後悔とか恨みなんかも含めて。親子の関係って、お互いにものすごいエネルギーが注がれているんだなと思います。

監督とは水と油の関係?「今までで一番、自分の中のネチネチとした部分が出てる」

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――今まで草なぎさんは、クズの役も何度か演じてきているように思います。これまでの役との違いは?
草なぎ剛今までの役は、もうちょっと前に折れてたの(笑)。でも、小鉄は折れない。しつこい。それが小鉄の気持ち悪さであり、魅力なんじゃないかな。完成した映画を観たときに、今までで一番、自分の中のネチネチとした部分が出てると思いました。というか、そもそも監督がしつこいんです(笑)。去年の夏の暑い盛りに、実際の民家を使って撮影をしたんですが、舞台みたいなワンシチュエーションの会話劇で、逃げ場がなかった。暑いし、会話劇だから台詞を間違えられないし、急に長回ししたりするし、もうしっちゃかめっちゃかで(笑)。だけど、そういう極限状態に置かれたからこそ、兄妹と本当にぶつかり合えたんだと思う。だから、この映画を観た人には思い切り笑っていただきたいです。うん。

――笑えることはもちろんですが、「この人クズ!」と思う行動が、実は愛情の裏返しだったりして、その不器用さにホロリとするシーンも多かったです。
草なぎ剛 脚本は、すごく良くできていると思う。監督も、「こんなに緻密に計算されたホンはない」と自負してました(笑)。僕自身も、「監督は天才かもしれない」と思うほど、全ての台詞が緻密な計算の上に成り立っている。どんな些細な台詞にも、ちゃんとそれを言うだけの背景があって、次のシーンへと確かなバトンを渡している。でも、僕がそのことに気づいたのは、出来上がった映画を観てからです。撮っている時は、「これ伝わるのかな? 大丈夫かな?」ってすごく心配だった。でも完成を観たら、「そうだったのか」と、すべてが腑に落ちて。

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――撮影中には気づかなかったと。
草なぎ剛 一つは、暑い中での撮影だったこともあると思うんです。台詞の意味を説明されるんだけど、暑すぎて、言ってることがよくわからなかったりしたから(笑)。後半は、ワンシチュエーションの会話劇からロードムービーっぽい展開になるんですが、それも面白いのかどうか、やっている方は半信半疑というか…。でもすべてが繋がってみたら、監督が描きたかったことがわかって、監督のことをすごく好きになった。撮影中は、水と油の関係性だったから(笑)。

――水と油? 普段穏やかな草なぎさんからそんな言葉が出るのは意外です。
草なぎ剛 作品に対するアプローチが真逆という意味です。正直いうと、僕はリハーサルとか、あまり気が進まない方なんです。本番まではあまり作り込み過ぎないで、余白を残していきたい。その場で生まれたものを大事にして、自由にやりたいなって思うタイプ。でも監督は、「前日入りして入念にリハーサルをしよう!」と言っちゃう人(笑)。そのリハーサルも夜中までやったりして、とにかく真面目なんです。1分1秒たりとも集中力を切らさずに、モニターを見つめているような感じだから、逆にこっちが緊張してきちゃって。ときには、モニターじゃなくカメラの横から僕らを見るので、「近い!」「やりにくい!」って思うほど、圧がすごかった(笑)。その真面目さに面食らいました。

――それは強烈ですね。
草なぎ剛 でも、だからこそ、僕の心の中の小鉄をあぶり出してくれたのかなとも思う。いつものようにやっていると、そこから抜け出せなかったかもしれないから。それとも、妥協しない監督のしつこさが、小鉄に乗り移ったのかな。最後は現場にいる誰もが、「監督のために頑張ろう!」というふうになっていましたね。監督は、まさに台風の目でした。僕らは現場で、市井昌秀という台風に巻き込まれただけなのかもしれない。

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