(更新:)
ORICON NEWS
狙いは“洗濯男子”? 衣料用洗剤CMの変遷に見る男性タレントの起用理由
1980〜90年代は、日本における洗濯業界の“革新の時代”
88年には、P&Gジャパンの『アリエール』もコンパクト化するなど、以降、小型の粉末洗剤が主流に。また野原氏によると、洗濯機も同時期に大きく変わったという。
「1990年に全自動洗濯機が二槽式洗濯機の販売数量を上回った。洗剤のコンパクト化もあり、1980〜90年代にかけては、日本における洗濯業界の“革新の時代”だったといえるかもしれない」(野原氏)
だが現代では、共働きが増え、積極的に家事をする男性も増えつつある。そういった時代を反映させてか、2010年頃から衣料用洗剤CMに男性タレントの起用が目立ち始めた。「日本は核家族化が進行している。また未婚率も高まっており、男女ともに生涯一人暮らしの方も増えている。母親や主婦だけが家事や洗濯をする時代ではない」(野原氏)
同社が行っている「家事実態の変化」の調査によると、2006年に比べ、2016年には家事の担い手の変化があり、特に洗濯は、夫の参加率が高まっているという。野原氏は「CMで、男性が洗濯をする姿を描くことで、時代の風刺にもなる。お母さんが洗濯物を広げて干すようなCMは、もはや古い」と断言する。
テーマは「革新」 旬の若手俳優5人が「#洗濯愛してる会」結成
出演者には松坂桃李、菅田将暉、賀来賢人、間宮祥太朗、杉野遥亮と、今を時めく旬の若手俳優5人を起用。シリーズの新CMが放送されるたびに、ネット上では「#洗濯愛してる会 の会員になりたい!」、「好きなメンツばかり」といった投稿が相次ぐなど、注目を集めている。
設定にもこだわっている。松坂桃李(トーリくん)は、サークルのリーダー的存在で、「ワンハンドプッシュ」タイプの『アタックZERO』への愛は誰よりも深い。菅田将暉(スダくん)は人並み外れた嗅覚の持ち主で、洗剤の消臭力にこだわる明るいオタク。賀来賢人(カッくん)は実験大好きでお調子者。間宮祥太朗(ショータロー)は陽気なムードメーカー。情に厚いがちょっとおバカで、ドラム式洗濯機を買う前にドラム式専用の『アタックZERO』を買ってしまうタイプ。杉野遥亮(スギノ)は、人にも衣類にも優しいピュアボーイで、4人の弟分的な存在…。こうした細かな設定から新製品の良さをアピールするのに合わせ、各俳優の個性や魅力をも見せていく手法を取っている。
ターゲットは“洗濯男子”? 「ワンハンドプッシュ」が見せるダイバーシティ
だが同社の新CM「#洗濯愛してる会」シリーズでは、“独身男子”風の若者が実際に洗濯する姿を全面に描き、“洗濯愛”を語り合う内容となっている。新CMのターゲット層も、同世代の若い男性なのか聞くと、野原氏は「メインターゲットはあくまで女性だが、男性にも使ってもらいやすい洗剤に仕上げている」と語る。
「旦那さんに洗濯してもらうときにもプッシュ回数を言えば伝わりやすい。お手伝いしたいお子さんにも、うってつけ。また赤ちゃんを抱えたままでも、片手で扱えるので便利。目の不自由な方でもメモリを見ることなく計量することができる。『アタックZERO』は、ダイバーシティ(多様性)も考えた商品となっている」(野原氏)
2019年度の『アタックZERO』の目標販売額は、300億円だ。「たかが洗剤。洗えれば、どの製品でもいいのではと思われがち。その中で『アタックZERO』はどれだけ新しい洗剤なのか伝えるために試行錯誤した。ただCMの5人の俳優たちの“わちゃわちゃ感”を通して、『何かすごい、とんでもない洗剤が発売された』という空気感は伝えられたのではないかと自負している」(野原氏)
ターゲットの幅の広がりや開発競争の激化に伴う熾烈な“洗剤商戦”から目が離せない。
(文:衣輪晋一)