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なぜ『ハズキルーペ』のCMは視聴者にインパクトを与えたのか
松村氏「最近はタレントのイメージCMばかり。何の宣伝をしているのか分からない」
松村氏は、渡辺謙&菊川怜が出演する新シリーズ第1弾から、総監督を務めている。それまでの石坂浩二、舘ひろし出演のCMは大手広告代理店が制作していたが、松村氏の意向がCMに反映されなかったという。「役者に商品名言わせてと頼んでも『そんなCMはないですよ』と突っぱねられた。有名タレントが出演する際、タレントに嫌われたらと怯んで制作者は忖度してしまう。だから最近はタレントのイメージCMばかりになっている」
「イメージCMは、スポンサーのためにあるわけではなく、CMクリエイターのために作られている。CMに関する賞が多く設けられているが、そのほとんどは商品が売れた実績を元に選考されていない。選考基準を根本的に変えないと、結局スポンサーが離れていく現状を止める事はできないと思う」
CM効果もあり、『ハズキルーペ』自体の売り上げも好調だ。現在、取り扱い店舗は全国で約5万7000店にまで増加したという。これは全国にあるコンビニの店舗数に匹敵する数字だ。松村氏は「CMは、タレントを見たらすぐに商品を連想できる内容でないと意味がない。有名タレントだけ覚えていて商品が浮かんでこないCMは、制作費を捨てるようなもの」と断言する。
出演タレントを自宅に招待、食事しながら意図を説明
武井咲が出演した第3弾の「クラブ編」は、テレビ業界が驚がくした。武井の主演ドラマ『黒革の手帖』(テレビ朝日系)を彷彿とさせる設定で展開されるからだ。CM秘話について、松村氏はこう語る。
「キャスティングした俳優、女優さんたちは、撮影前に自宅に招いて食事をし、コミュニケーションを取るようにしています。いきなり撮影現場で顔を合わせても、良い演技をしてもらうことは難しい。事前にCMの意図を説明して、納得してもらった上で、撮影現場に入るのが重要なんです」
話題の“ヒップアタック”は松村氏の実体験から発案
この件に対し、松村氏は「セクハラは同意がない場合の話。出演している女性モデルは、自らの意志でオーディションに参加し、選ばれた人たちだ。美脚な人が職業として表現しているだけなのに、それを否定するのは、憲法で保障されている表現の自由を侵害することだ」と、自身の見解を明かす。
「機能など理屈だけで人は動かない。人の脳は、理論を理解する部分と感情で判断する部分がある。大好きやすごいなどは一見、何の意味があるのかと思う視聴者もいるだろう。だが主観的な言葉である大好き、すごいは、脳の感情で判断する部分に強く訴える言葉です。人に何かを判断、実行してもらうためには、脳の構造を理解した上で、人間の持つ脳の両方の機能に訴えかける必要がある。このCMは、そういった部分を戦略的に考え抜いて制作しているのです」
「世の情勢は、常に変わって行くもの。1年先など予測はできない。ましてや半年先でも。毎日が試行錯誤の連続です。事業経営は、薄氷を踏む思いでやるもの。経営トップが判断一つ間違えただけでも、企業は傾きます。『ハズキルーペ』は、お子様からシニアまで全世代に使える商品だが、まだまだ認知は足りない。現在の成功を富士山で例えると、まだ2合目程度。ただ世界を見渡せば、潜在需要は莫大に広がっています。すでに日本国内だけでなく、北米、ヨーロッパ、中東など世界戦略に舵を切っているので、あと5年が勝負と考えています」
今後、革命者・松村氏がどんなCMを制作していくのか。目が離せない。
(文:衣輪晋一)
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松村謙三著『自分の頭で考える』(角川書店より4月27日発売予定)
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