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ORICON NEWS
なぜ『ポッキー』CMは踊らなくなったのか?
子ども向けから一変 夜の街で“大人のたしなみ”として流行 幅広い世代への訴求
発売から20年経ち、時代はバブル景気に突入。同社は、もっと大人にも『ポッキー』を食べてもらおうと考え、ある施策を打ち出した。それが「ポッキー・オン・ザ・ロック」である。『ポッキー』をマドラー替わりに使ってクルクル回す、あの食べ方だ。
同社は、「ポッキー・オン・ザ・ロック」というキャッチフレーズでキャンペーンを展開。CMには松田聖子を起用し、実際に『ポッキー』を使ってグラスの中でクルクル回す演出を取り入れた。CMは大きな話題となり、子どももジュースで試すというプチ社会現象も起きた。
また80年代は、「旅にポッキー」というテーマでもキャンペーンを展開した。当時、女性ファッション誌はこぞって旅特集を組むなど、OL同士の旅行がはやっていた時代。そこで『ポッキー』CMでは、松田聖子に加え菊池桃子を起用し、さまざまな観光地で『ポッキー』を食べる姿を映した。『ポッキー』は持ち運びにも適しているお菓子なので、OLにも食べてもらおうという思いがあったのだろう。
“ガッキー”ブレークのきっかけ 『ポッキー』CM=踊る定着
キャッチコピーは「Stick to fun!」。『ポッキー』があると楽しい時間が過ごせるというメッセージを伝えるため、CMにダンス演出を取り入れたのであろう。結果、『ポッキー』の食感や軽やかさが、見事にダンスで体現されていた。
さらに2008年には忽那汐里、2015年には 三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE を起用するなど、ダンスCMを続けて展開。『ポッキー』CMと言えば“踊る”というイメージが定着していった。
男性から中高生、そして主婦層へ ターゲットは常に変化
これまで『ポッキー』CMにダンスが取り入れられてきたのは、あくまで中高生にアプローチするためだろう。現にYouTube上では、中高生らによる“シェアハピダンス”の投稿が相次ぐなど、幅広い支持を得ていた。
しかし実際に購入しているのは、中高生より購買力のある主婦層だ。「お母さん買って」と子どもから頼まれて購入しているケースも多いはず。今回の「何本分話そうかな」シリーズは、購入している主婦層をメインターゲットにしてCMを制作したと思われる。
SNSで「ポッキー&プリッツの日」普及 しかしロングセラー商品ゆえの悩みも
今も『ポッキー』には、お酒と合う、旅のお供にも合うというイメージが浸透している。それは『ポッキー』CMにおける財産であり、『ポッキー』の概念は、現在の“シェアハピ”にも脈々と受け継がれている。
しかしロングセラー商品のゆえ、食べる人は常に固定化しがちだ。CMは単に商品を売るためだけに存在しているのではない。視聴者を楽しませるために、その時代に合った社会的意味を持たせるために、どの会社もあの手この手で策を練っている。今後、『ポッキー』がテレビCMやSNSなどを通して、どんな新しい食べ方や楽しみ方を提案してくれるのか、楽しみにしたい。
(文:衣輪晋一)