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全局を通じて唯一“枠”として語れる『日9』ドラマ ブランド確立した日曜劇場の軌跡
実力ある俳優に正当な評価を与えるには“社会派”枠が最良
大沢たかおもパリコレ出演歴や『MEN'S NON-NO』のモデル的なイメージがあった。映画『解夏』(2005年)や『地下鉄(メトロ)に乗って』(2007年)などで映画ファンから“実力派”の声はあったものの、それが広く浸透したきっかけはやはり『JIN-仁-』だった。
「これは、社会派ドラマは役者としての“正当な評価”が得られやすいから。コメディ系やトレンディ系とは視聴者の姿勢が違う。そんな中、『日曜劇場』は同枠を“俳優としての立場がワンランク上がる”枠として広めることに成功しました。結果、制作側と役者による、良質な作品を作るという“共犯関係”はより盤石となった」(衣輪氏)
また昨今は“飛び道具”的なキャスティングも目立っている。『下町ロケット』出演の落語家・立川談春といえば“立川流四天王”と呼ばれ、最もチケットの取れない人気落語家の一人。同じく池井戸作品の『ルーズヴェルト・ゲーム』(2014年TBS系)、映画『七つの会議』(2012年)でもヒール役などで演技力を発揮。池井戸作品 (主に日曜劇場)以外では演技を見ることの出来ない存在として希少性を確立している。
芸人のイモトアヤコや吉本新喜劇座長の内場勝則も独特の存在感を発揮。古舘伊知郎のドラマ出演、加藤綾子の本格ドラマ出演など勇気あるキャスティングもあり、賛否両論はあるものの、数字を大きく左右する失敗がないのは「さすが」というほかない。
フォーマットの確立とマンネリは表裏一体? 平成を“平静”に締める「安定の下剋上」は視聴者にどう捉えられるか?
「ですがその『日曜劇場』にも、2018年『下町ロケット』続編あたりから暗雲が。一部ではあるのですが、SNSやネット掲示板に『柳の下のどじょう』『飽きた』『飛び道具的な配役の多さにうんざり』などの声が挙がっていたのです。今はSNS時代。一部の声が何かのきっかけで炎上した場合、一時期のフジのように一気に局そのものを叩く流れが始まることがあります」。盤石な枠といえども、経年劣化の可能性は決して否定はできないというわけだ。
「某キー局プロデューサーが『TBSはドラマの成功により局イメージが向上した。大切なのはやはりドラマだ』とボヤくのを聞いたことがありますが、本作の評判次第でTBSの局自体のイメージが変化する可能性もある。『日曜劇場』は一年半前から企画が決まっているといわれますから、失敗したからといってすぐに方針を変更できないのが辛い。『日曜劇場』らしすぎるが故、TBSとしてもかなり勝負どころ。見逃せません」(衣輪氏)
令和以降、「日9」ブランドはどのような動きを見せていくのか。TBSの手腕に期待する意味でも、まずは『集団左遷!!』を楽しみに待ちたい。
(文/西島亨)