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ガンプラ│トップモデラーインタビュー(ガンダムプラモデル)
『ポケ戦』の“神作画”にインスパイアされ、うねる波間を進撃するハイゴッグを立体化
記憶に残るガンダムの名シーンを「ジオラマで再現したい」
【仁誠】子どもの頃、模型作りは人並みにやっていました。当時はSDガンダムが流行っていて、SDガンダムのカードダスや模型を楽しんでいました。その後、中学生の頃に『Vガンダム』(1993年放送開始)がリアルタイムで放送されているのを見て、初めてリアルタイプのガンプラを制作しました。ただ、当時はそこまで本格的にハマっていたわけではなく、それから15年後経って、30歳の頃に『ガンダムUC』を見て模型制作に復帰し、本格的にハマりました。
――最初のリアルタム視聴は『Vガンダム』とのことですが、ガンダムシリーズの中で一番好きな作品は?
【仁誠】1999年に放送された『∀(ターンエー)ガンダム』です。“ガンダムの生みの親”である富野由悠季監督が「全てのガンダムを全否定し全肯定もする」という意図で制作した意欲作で、一部のファンからはガンダム版「世界名作劇場」と呼ばれています。
――今や多くの人が使う“黒歴史”という用語は『ターンエーガンダム』によって広まりましたし、他のシリーズとは一線を画す“牧歌的”な雰囲気も人気です。
【仁誠】本作はガンダムシリーズの知識がなくても見られる内容なのでオススメです。特に最終話、エピローグの5分は必見です。名曲「月の繭」(作曲:菅野よう子)と共に物語が終わり“神話”となる点は印象深いです。
――他のシリーズ作品の思い出は?
【仁誠】『機動武闘伝Gガンダム』の主人公ドモン・カッシュ対東方不敗のシーンも捨てがたいです。放送当時、作画の良さと展開の熱さで目頭が熱くなりました。あと、『ガンダムUC』のユニコーンガンダム2号機バンシィが落下しながら変身をするシーンも思い出深く、このシーンが模型制作に復帰するきっかけになっています。今も、こうした名シーンの数々を「ジオラマで再現したい」という想いが強いです。
長い腕を持て余すハイゴッグのポージングは『ポケ戦』のオマージュ
【仁誠】camouflage(カモフラージュ)です。波に溶け込む迷彩をイメージした作品です。正面からはハイゴッグのアングルを、上部からはカモフラージュを意識して2つのアングルが主役になれるように制作しました。
――本作を制作するにあたって、参考にされた作品はありますか?
【仁誠】ハイゴッグが初登場する『ポケットの中の戦争』です。ハイゴッグのシーンは伝説のアニメーター・磯光雄さんが担当されていて、何度も見返してしまう神作画です。劇中のハイゴッグの動きにインスパイアされて制作しました。
――では、本作で設定したストーリーを教えてください。
【仁誠】ハイゴッグが連邦軍の目標を見定め、海上に浮上してきたイメージです。前進するハイゴッグを表現するため、突き出した右腕と、ダラリと下げた左腕が特長です。
――長い腕を持て余しぎみにし、左腕を引きずるようなポージングは『ポケ戦』でも見受けられるシーンですね。あと、ボディに施された波模様の迷彩も印象的です。
【仁誠】迷彩模様は、作品名に「カモフラージュ」とつけたくらいなので強いこだわりがあります。これは海の模様を迷彩の様にカラーリングすることで、ジオラマを真上から見た際のポイントとなるよう考えました。
――波の表現も素晴らしいですね。
【仁誠】波は初めて作ったのですが、ハイゴッグの動きに合わせて高くうねる大波を制作しました。現実には、この様な大型ロボットが海上で動く事を目にする事は出来ません。ロボットの動きで立つ波、本来海にある波、双方をイメージして形状を制作しました。結果、良い感じの波が立てれたと思います。
――模型制作で技術的な「壁」を感じるのはどんな時ですか?
【仁誠】ハイゴッグの際は模型制作の復帰後2作品目だった為、今よりも工作の知識も少なく苦労した記憶があります。
――その「壁」をどう乗り切ましたか?
【仁誠】時間です。焦らず、ゆっくり知識を蓄え勉強する事で当時としては満足出来る物が出来ました。ハイゴッグを制作中、出来ない工作があった場合は作業を中断し、その技術を身につける為に他の模型を制作しました。波模様のカモフラージュ塗装も他のエヴァンゲリオンの模型で練習し、その後ハイゴッグに使用しています。
――今後作ってみたいガンプラ作品は?
【仁誠】現状、ハイゴッグが最初で最後の波表現になっているので、水を絡めた作品をまた作ってみたいですね。あと、『ターンエーガンダム』の作品にも挑戦したいです。
――仁誠さんにとってガンプラとは?
【仁誠】好きなシーンや機体を制作することで、作品をより身近に感じられる素晴らしいコンテンツだと思います。ガンダムシリーズの魅力はもちろん、メーカーの努力で模型のクオリティも年々高まっています。モデラーにとってはとても贅沢な事だと思います。作品やメーカーに感謝しつつ、これからも楽しんでいきたいです。
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