(更新:)
ORICON NEWS
過去の名曲を効果的に再利用 ドラマ主題歌“受難の時代”だからこその施策
脚本と同等に主題歌にも徹底的にこだわった野島伸司作品
かつて野島は、Huluオリジナルドラマ『雨が降ると君は優しい』の主題歌に、自身が「世界で一番好きな曲」と断言するボズ・スキャッグスの「We're All Alone」を採用した際、「僕にとって、主題歌はとても大切な存在です。特にシリアスなドラマの場合、主題歌ひとつで世界観を壊されてしまうこともありますから」(『シネマトゥデイ』2017年9月1日掲載より)と、ドラマにおける主題歌の重要性な立ち位置を強調。
トレンディドラマ全盛期には、人気アーティストの新曲を主題歌に採用することによって、CDの売上にもつなげるという流れが定番であり、いわばテレビ局とレコード会社はwin-winの関係であった。一方、野島作品はそうしたビジネス面に忖度せず、あくまでドラマの内容を中心に国内外の過去の名曲を主題歌に採用する“異色”な存在だった。
木村拓哉主演ドラマもタイアップに縛られない作り
ほかにも、スリー・ドッグ・ナイトの「Joy To The World」(『ランチの女王』/フジテレビ系)、アース・ウインド&ファイアーの「September」(『続・平成夫婦茶碗』/日本テレビ系)など、さかのぼれば過去の名曲を使用したドラマは意外と多いのである。いずれにしても、過去の名曲であれタイアップ曲であれ、ドラマの内容と主題歌がマッチしているかどうかが肝心であることは言うまでもない。
過去の名曲が「ドラマ離れ」の救世主になる可能性も
そうなると、過去の名曲ではビジネス的なヒットは望めないかと言われると、決してそんなことはない。当然ドラマでまた火が点けば、再版、そしてベスト盤を発売して“リバイバルヒット”も期待できる。実際、野島作品の『未成年』主題歌、挿入歌に採用されたカーペンターズのベスト盤は、ドラマ効果により累計200万枚を突破した。
かつて音楽ライターの宇野維正氏が、自身のツイッターで、「ドラマ主題歌のタイアップなんてほとんど何の効果もないんだから、昔の野島伸司ドラマのようにがんがん洋楽クラシックを使うべき。良くも悪くもその方が話題になるし、そしたら数字にもつながるよ」(2014年1月5日)と提起しているように、“過去の名曲”の可能性に期待する声もある。「ドラマ離れ」の風潮に加え、これまでのタイアップ方式が崩壊している今、“過去の名曲主題歌”がドラマ復活の起爆剤になる可能性は非常に高い。