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過去の名曲を“再利用”する背景は? 制作担当者が明かすCMソングの変化

  • 「君は天然色」を収録した故・大滝詠一さんの名盤『A LONG VACATION 30th Edition』

    「君は天然色」を収録した故・大滝詠一さんの名盤『A LONG VACATION 30th Edition』

最近、テレビCMで懐かしい歌が流れることが多い。たとえば、DREAMS COME TRUEの「LOVE LOVE LOVE」、映画主題歌だったYEN TOWNBANDの「Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜」。サントリー『金麦〈糖質75%オフ〉』のCMで流れる故・大滝詠一さんの「君は天然色」などは、なんと5度目のCM起用となる。すでにドラマや映画、他のCMソングに使用され、一定のイメージが付いた既存曲。それが今、あらためて“再利用”されるメリットとは? CM制作担当者がその背景を明かす。

CM発の爆発的ヒットは減少? 一方で目立つ楽曲の“再利用”

 90年代から2000年代はじめにかけて、CMから多くのヒット曲が生まれた。『カメリアダイヤモンド』の相川七瀬「恋心」、『アルペン』の広瀬香美「ロマンスの神様」、『JR Ski Ski』のglobe「DEPARTURES」、『JAL沖縄旅行』キャンペーンの米米CLUB「浪漫飛行」など、枚挙に暇がない。CM起用を機にブレイクし、ミリオンアーティストが生まれた例も多い。

 ここ数年もCMをきっかけに話題になる楽曲は多く、ホンダ『ヴェゼル』に起用されたSuchmos「STAY TUNE」はその一例だ。またSHISHAMOやWANIMA、竹原ピストルらはCMソングとなったことで認知度を上げ、2017年の『NHK紅白歌合戦』に出演を果たしている。だが今、そんな新しいCMソングをよそに注目を集めているのが、過去にも別のCMやドラマ等で聴きおぼえのある既存曲の“再利用”だ。

誰もが知るドラマ・映画主題歌も再利用、大滝詠一のあの曲は何度目か?

 DREAMS COME TRUEの「LOVE LOVE LOVE」(1995年)は元々TBS系ドラマ『愛していると言ってくれ』主題歌としてヒットしたが、現在スバル『インプレッサ』CMソングに起用されている。同じく同社では、コブクロの「君という名の翼」(2006年・テレビ朝日系ドラマ『レガッタ』主題歌、『JAL先得割引』CMソング)が『レヴォーグ』CMに。また映画『スワロウテイル』の主題歌として制作されたYEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly〜あいのうた〜」(1996年)は、22年後の現在ライオン『ソフランアロマリッチ』CMソングに起用され、再び耳目を集めている。

 そして、とくに多く“再利用”された楽曲のひとつが、故・大滝詠一さんの「君は天然色」。現在サントリー『金麦〈糖質75%オフ〉』CMソングとしてオンエアされているが、これまでにキリン『生茶』(2004年)、アサヒビール『アサヒSlat』(2010年)など飲料系を中心に通算5本のCMに起用されている。大滝さんの名盤『A LONG VACATION』(1981年)に収録された「君は天然色」は、CMソングとしても時代を超えて支持されているのだ。

CM制作者が明かす、既存曲を使用するメリットとは?

 すでに別の商品や作品のイメージが付いた曲を、新たに起用するメリットとはどんなところにあるのか? 『金麦〈糖質75%オフ〉』のCMクリエイティブディレクターを務めた黒須美彦氏は、「懐かしい曲、聴き覚えがある曲には意味がある」と語る。

 「CMソングタイアップには、新曲を使用する場合と、既存曲を使用する場合の2パターンがあります。新曲は楽曲使用料、放送使用料が安かったり免除もあったりで、使用する側としてはありがたいけど、その分、歌を聴かせたいとかサビを使いたいとか、条件も多い。一方、既存曲は、選び方によってはターゲット世代を狙い撃ちできたり、そもそもの曲の魅力で新しい人を取り込めたり、訴求力も上がります。お金はかかるけど」(黒須氏)。

 そんなCMソングだが、“使いやすさ”でいえば、「短くて印象的なフレーズがある曲」だという(黒須氏)。同CMで使用された「君は天然色」も、この条件を満たしている。CMのターゲット層に合っていたことに加えて、これまでのCMとは違った使い方をしたことも功を奏したという。

 「『金麦〈糖質75%オフ〉』は30‐40代くらいがターゲットなので、明るく軽快で、その世代にハマる曲が良かったんです。「君は天然色」は、歌や歌詞も良いのですが、とくにイントロが素晴らしく、すぐに“あの曲ね!”と伝わる。15秒が勝負のCMにおいて、あの予兆的なイントロをうまく活用することで、ナレーションとも被らず、これまでの使われ方とは異なる新鮮な印象を残せたのかも」(黒須氏)

 最近の“再利用”の増加ぶりを見ると、既存曲は使用料が安いのかと思えば、一概にそうとは言えないそうだ。「発売から時間が経っているからといって安いとは限らないですし、問い合わせてみなければわかりません」と黒須氏。「既存曲となると、ついクライアント上層部の方の趣味嗜好に左右される可能性はあるのですが、あくまで商品のターゲットありきです。ただ、新たに楽曲を作るより既存曲のほうが安心感もあり、クライアントに納得してもらいやすい傾向はあります」

アーティスト側にもメリットが、古い曲が再び注目を集めるきっかけに

 一方、このような“再利用”はアーティスト側にもメリットとなる。前述の「LOVE LOVE LOVE」については、SNSでも「懐かしすぎて、思わず手を止めて見入った」「つい最後までCMを見てしまう」「やっぱり名曲」「その先を聴きたくなる」と、多くの視聴者から好評のようだ。

 このように、既存曲の“再利用”は、CM商品のイメージアップだけではなく、アーティストにとってもチャンス。もちろん視聴者にとっても、懐かしさに浸ることができ、若い世代は時代を超えた名曲に出会うことができるとあって、それぞれに良い相乗効果を生み出している。

 だが一方で、このような“再利用”が目立つということは、テレビにおいて中年層以降をターゲットとしたCM、商品が多いということでもある。それは間接的に、テレビで情報を得る若者が減っている、ということかもしれない。そんな状況も含めて、過去の名曲を活用する“再利用”は、今後も増えることになるだろう。新しい曲、過去の曲、どちらであっても、CMから生まれるヒットに期待したい。
(文:森朋之)

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