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大杉漣さん、生前最後の収録現場で見せた“現場者”の姿とは?
自然と周りに人が集まる“ガキ大将”的存在感
『バイプレ』のストーリー設定は、昨年放送した前作と同様、おじさんたちが“ひとつ屋根の下で暮らす”というもの。今作の舞台となった廃屋“島ハウス”の外には、焚火場、ドカン風呂、5人が乗っている自転車など、作品内でお馴染みの小道具が置かれている。この日の取材は、“島ハウス”を舞台にしたシーン撮りが行われていた。
朝9時に現場に到着した取材班。その時、すでに8時から撮影が始まっていた大杉さんはスタッフと珈琲を飲みながら談笑していた。その後、遠藤憲一、田口トモロヲ、松重豊、光石研らも続々と現場入り。すると、示し合わせたわけでもなく5人は自然と輪となり、談笑を始める。もちろん、中心にいるのは大杉さんだ。
その場にいた取材班は「撮影中のONの時も、撮影待ちのOFFの時も、5人は常に大杉さんを中心に輪となっていた」と振り返る。仲間から愛され慕われる大杉さんを囲む空気感は、カメラが回っていても回っていなくても、いつでも場の雰囲気を盛り上げる“ガキ大将”を慕って集まる少年たちのようだったとも。
撮影で「オッケー」が出た直後、焚火場から移動する際、ワザと焚火に足を突っ込んでつまずきかけ、「アッチー!アッチ!アッチ!」と盛大なリアクションを見せる大杉さん。それを周りのスタッフやジャスミン役の北香那が見て大笑い。さらに遠藤に向かって「エンちゃんがどいてくれないからだよ!」と言えば、遠藤も「どくのも変ですよ(笑)」と二人で丁々発止のやりとりをはじめ、現場はさらに大きな笑いに包まれた。そこからは、長年苦楽を共にしてきた俳優仲間としての連帯感や、気がおけない仲間ならではの“空気の良さ”を感じた。
現場にいることにこだわり、誰よりも気配りをした“現場者”
さらに、その流れで体調管理にはヨーグルトがいいという話になると、マネージャーに頼んで撮影現場にヨーグルトを30本ほど差し入れ。焚火を囲みながらバイプレイヤーズの面々がヨーグルトを飲む光景は、なんともほのぼのしていた。そんな風に、周りへの気配りを決して忘れないその姿に、“誰からも慕われる”という大杉さんの素顔が見てとれたという。
そんな茶目っ気を見せる一方で、撮影中に多趣味な一面も覗かせていた。プライベートでもギターを弾くという大杉さんは、撮影セッティングの合間に“島ハウス”に置いてある楽器をよく弾いていた。ハーモニカ、打楽器、ギターと、それぞれの楽器でドラマエンディング曲となっている竹原ピストルの『ゴミ箱から、ブルース』を奏で、その器用な一面を垣間見せていた。周囲の空気を壊すでもなく、誰の邪魔をするでもない。その一部始終を見ていた取材班は「撮影合間の喧噪の中、現場に溶け込みハーモニカを奏でる大杉さんの姿は、映画のワンシーンのようだった」と述懐する。
そして、取材班が最も印象的だったと語るのが、セットチェンジの合間、控室に戻らず海の前にあるテーブルチェアで台本読みをはじめた大杉さんの姿。寝間着姿のシーンだったため、トレーナーにスウェット姿という“日曜のおじさんスタイル”ではあったが、台本に集中するその後ろ姿は「仲間と輪になっていた時とはまた別の、名俳優としての色気があり、とにかく格好良かった」のだという。
大杉漣さんの長男・隼平さんは27日、自身のインスタグラムで次のように語っている。「父は本当に『現場者』でした。現場にいることを常に心がけていました。そしてそれを全うしました」。誰からも愛され、誰よりも現場を愛した大杉漣さんのご冥福をお祈りいたします。