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(更新: ORICON NEWS

大人が欲しい“究極のアナログおもちゃ”、「プリントス」ヒットの理由

 「スマートフォンの画面をインスタントカメラで撮影する」という電池も不要の完全アナログ商品が、「その発想はなかった」「むしろ新しい」と話題になっている。昨年12月13日に発売したタカラトミーの「プリントス」(希望小売価格3,700円/税抜き)は、その手軽さと手に取りやすい価格で、発売以来品切れ続出の人気商品だ。潜在的なニーズに見事にマッチしたプリントス、そのヒットの理由とは? タカラトミー/新規事業部・ニュートイ企画部の担当者に話を聞いた。

「後で渡すね」その守られない約束、その場で渡せて手元に残る写真をもう一度

 「現像するまでわからないドキドキ感」や、「その場で印刷できるプリクラ感覚」で一時は低迷していた使い捨てカメラやインスタントカメラが10代を中心に再評価されている昨今。そんな中、新たな写真のおもちゃとして登場した「プリントス」は、あるようでなかった斬新な商品だ。本体のインスタントカメラでスマートフォンの画面を撮影することで、スマートフォンに保存された画像を“プリント”することができる。「その手があったか!」と、思わず頷くアイディア商品だ。

 商品開発を担当したタカラトミー企画開発課・課長の土肥雅浩さんはそのアイディアに至った意外な経緯をこう話す。「今、スマートフォンってみんな持っていて、写真も撮りますよね。スマホ上で写真のやり取りをするけれども、それではどこか味気ない。プリントアウトして渡す喜びや、そこにコミュニケーションの深さがあることは以前からイメージ商品に携わっていて実感していました。そこで、スマートフォンで撮影した写真をその場で渡せる、そんな商品を考えていました。一方で、世界中で人気のあるFUJIFILMさんのインスタントフィルムを上手く活用できる方法も別々の流れで考えていたところ、スマホの画面を撮影すればいいのでは? という発想になりました」。

 また、商品化するにあたり、ある思いもあった。「データの交換だけでなく、写真を撮って『後で渡すね』と言って渡しそびれてしまうこともよくありますよね。でも、今までは当たり前のように現像して焼き増しして配っていました。そんな、かつてやっていたような潜在的な行動は、多くの人に響くだろうと予想していました」(土肥さん)

SNSで拡散、Twitterのオタク人気&インスタ映えで需要拡大

 “おもちゃ”ではありつつ、スマートフォンを持っている20代〜30代の女性向けに開発したプリントス。昨年6月に東京ビッグサイトで開催された『東京おもちゃショー2017』に出展した際の手ごたえもあり、ウケるだろうとは予想していたそう。ところが、いざ蓋を開けてみると、各ECサイトに数万件もの予約が入り発売前から既におもちゃ業界でヒットと言える数字に。そのような想定以上の予約という要因もあり、当初予定していた10月の発売から延期ということにもなったが、満を持して発売して以来、品薄状態が続いている。現在も、ECサイトや一部店舗で入荷待ちとなっており、ここまでの反響は“嬉しい悲鳴”。そこにはSNSでの拡散が大きく影響している。

 Twitterやインスタグラムには多数のタグが存在し、「#プリントス使ってみた」のタグには渾身の作品が多く投稿されている。特にTwitterでは、子どもやペット、思い出の写真はもちろん、“オタク人気”が顕著だ。アイドルやゲームキャラ、アニメの“推し”や、自作のイラストをプリントして、個人で楽しむオリジナルチェキで盛り上がっている。さらに、コスプレイヤーの間で“その場でチェキを量産して渡せるツール”として、拡散された効果も大きい。

 インスタグラムでも、インスタントフィルムの色味はインスタに“映える”。プリントした写真をおしゃれに撮影した投稿が盛り上がるのも必然だろう。「ネットを介して自慢したいし共有したい、そういう方々に拡散していただけたのはありがたいですね」(土肥さん)。

 実際に、公式Twitterでもプリントスについて呟くとRTやいいねなど前例のない数の反応が得られると言う。「#プリントス使ってみた」のまとめ(モーメント)を作成したり、多くのコスプレイヤーが集う年末のコミックマーケット開催時は「#C93」のタグをつけたりと、積極的にプロモーションを行っている。「商品の認知経路も、SNSを見て買ったと言うお客様が多くいらっしゃいます」(マーケティング課・主任の林恵理さん)。

 また、SNSではアジア圏の観光客が自国に持ち帰って投稿している例も見受けられる。元々、海外でもチェキの人気は高く、今後、海外展開も視野に入れているとのこと。そうなればまたSNS上で新しい“プリントス文化”が生まれるかもしれない。

“完全アナログ”におもちゃメーカーのこだわり “失敗”も楽しさのひとつに

 SNSとの親和性の高さは、“完全アナログ”という点でも言える。スマートフォンの画面を撮影する、そのシンプルな構造は、SNSの少ない情報量で「なぜ写真がプリントされたのか」がひと目でわかるので手に取りやすい。そんな“アナログ”へのこだわりはおもちゃメーカーならでは。「デジタルなプリンターだと無線の設定やアプリが必要。おもちゃメーカーなので、それは排除して簡単にしました。玩具では一般的なギア機構を使用したのは、カメラメーカーさんではなくおもちゃメーカーだからこそですね。価格も抑えて、まずは手に取って楽しんでもらおうと考えました」(土肥さん)

 その“アナログ”こそ、この商品の楽しみのひとつ。試行錯誤した作品として仕上がる喜びがある。端が切れてしまう、明るさの微調整が難しいなどの失敗も、自分なりに改善しながら好みの仕上がりを見つけていく過程が楽しい。また、スマホ上で写真を加工したり手書きコメントを入れたりもできるほか、違う写真で複数回シャッターを切って、“多重露光”の写真が撮影できるのも、手動でハンドルを回して写真を取り出すからこそだ。これは、シャッターを押すごとに自動で写真が排出されてしまっては実現できない。スマホに保存されている元の画像はクオリティが保たれているものの、プリントの仕上がりはお楽しみという点で、かつてプリントゴッコや彫刻刀でハンコを自作して年賀状を作った世代は懐かしく感じるだろう。

 “懐かしいようで新しい”“アナログだからこその工夫の余地”その発想が、大人の購買意欲をそそった。また、元・モーニング娘。の辻希美がクリスマスに娘へプレゼントしたエピソードをブログで公開していたが、実際にクリスマスや年明けにお年玉で購入する子どもも増えているそうだ。使い捨てカメラやインスタントカメラが10代にウケたように、アナログならではの試行錯誤は親子間のコミュニケーションにもつながるに違いない。個人での楽しみ、友人との共有、親子で楽しめるおもちゃとして、さらに浸透していくだろう。

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