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“盛れる”写真撮影の変遷 なぜ若者は自撮りをするのか?
自分の写真を撮って共有する 若者の心理の変化
かつて庶民にはなかなか扱いづらかったカメラが身近になったのは、1980年代、フジフイルムの『写ルンです』に代表されるような、“使い捨てカメラ”と呼ばれるレンズ付フィルムが登場してからだろう。シャッターやフラッシュなど撮影機能を極限まで抑えた使い捨てカメラは、通常のカメラのような質の高い写真こそ撮れはしないものの、一般庶民が日常生活の1シーンを収めるには十分な撮影能力を有しており、旅行や女子高生などの間では欠かせないアイテムになった。きちんとした格好をして撮影に臨むのでもなく、運動会やお祭りなどイベントの撮影をするのでもなく、普段の自分たちの生活の様子を撮影して、楽しむ。筆者も中高生時代、使い捨てカメラを持ち歩いて写真を撮っては、親しい友人同士で交換などして楽しんでいたものだ。
写真加工機能の進化で“他人に見せる”ことに抵抗がなくなる
そしてこのプリントシール機のブームや、カメラ機能を搭載した携帯電話で撮影したいわゆる“写メ”がブームになった頃から、いかに自分の写真を“盛れる”かが重要視されていったように思う。写メが流行った頃には角度や光の具合を調整していかに奇跡の一枚を撮れるか、若者たちはテクニックを磨いていたし、近年のプリントシール機は目を大きく、体型を細く…など、過剰なまでに写真を加工できる。これにより、普通の子にも「他人に自分の可愛い写真を見せたい」という願望が生まれたし、これが今の写真加工アプリの過熱ぶりにつながっていることは間違いないだろう。
昔は家族や仲間内で楽しむだけだった写真は、プリントシール機、写メという段階を経て、日常生活を撮影し、他人に見せることが当たり前となった。さらにSNSの普及により、写真を誰かと共有し、“いいね”と認めてもらいたい、という願望も高まっている。今後、この流れにさらに拍車がかかっていくのだろうか? いずれにせよ、“自撮り”文化は素人撮影文化の進化とともにあるようだ。