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福山雅治×ジョン・ウー対談、難題と挑戦づくしの撮影で「知らなかった自分」に出会う

 福山雅治が出演する映画『マンハント』が、いよいよ2月9日に公開を迎える。監督は、『男たちの挽歌』や『ミッション:インポッシブル2』ほか、数々の名アクション映画のメガホンをとったジョン・ウーだ。そんな監督のもと、水上バイクに飛び乗る、銃撃戦に挑むなど初の本格的アクションに挑み、これまでにない泥臭い姿を見せた福山。監督は、福山の魅力をいかに引き出し、国境を超えたコラボレーションを成し得たのか。二人の対談から、今作を作り上げた“マジック”が見えてきた。

日本映画に影響受けた監督が描く、「活力と人情味、美に溢れた大阪」

――映画を拝見して、これまで観たこともない映像が詰まっているなと思いました。よく知っているはずの日本のとくにエネルギッシュな側面に出会えたり、近未来的な都会とどこか昭和っぽい、懐かしい人情味のある街並みや、のどかな田舎の雰囲気とが混ざり合っていたり、街だけでなく登場人物にも様々に奥深い魅力が感じられました。
ジョン・ウー 今“昭和”とおっしゃっていましたが、私はもともと、1960年〜70年代の日本映画が大好きで、その時代の大御所の監督たちが手がけた作品を、子供の頃はむさぼるように観ていました。その映画の中のクリエイティブな表現には、非常に影響を受けました。今回は大阪で撮りましたが、だからこそ大阪の魅力を存分に引き出したかった。活力と人情味に溢れていて、それでいて美しい。そんな大阪の雰囲気を。

――では、主人公である福山さんの魅力については、どんなところを引き出したかったんでしょう?
ジョン・ウー 福山さんの持つ温かみのあるキャラクターですね。福山さんは、ミュージシャンとしても愛とか平和といった、大きなテーマで曲を書かれています。もともと、表現の原点に深いメッセージがある。ですから今回は、矢村という役を通じて、世界中の観客の皆さんにも、福山さんが本来持っている希望や温かみを伝えたいと思ったのです。そこで、今までのイメージとはひと味違った“義理人情を大切にする刑事役”というリクエストをしました。今は、それを引き受けてくださったこと、想像以上に魅力的なキャラクターを演じ切ってくださったことに、とても感謝しています。

福山初の本格アクション、「完成するまでは不安は払拭できなかった」

――福山さんは、出来上がったものを観て、どんな感想を持たれましたか?
福山雅治 アクションに絶対的な自信がある人ではないので、この役をお引き受けしたものの、最初は心配しかありませんでした。監督は、もう40年以上アクションを撮られてる方なのに、こんな…僕が、初めてアクションにチャレンジして大丈夫なものかと(笑)。現場では、監督がOKを出してくれているわけだから、それを信じようと思って乗り切ってはいたものの、完成するまでは不安は払拭できなかった。でも、完成したものを観たら、自分で言いますけど、「カッコイイ!」と(笑)。「これは僕なのか?」と、目を疑うほどのカッコ良さに仕上がっていました。これぞジョン・ウー監督マジック!と思いました(笑)。
ジョン・ウー OH!(照れ笑い)

福山雅治 本当に感謝の気持ちでいっぱいです。こんなにカッコ良く撮っていただいて。
ジョン・ウー 福山さんはもともとカッコイイ方で、仕草にしてもアクションにしても、最初から文句なしにカッコ良かった。演技もとても上手だし、今回は難しいアクションもほとんどスタントなしで挑戦して、そのアクション自体にも感情を込めてきちんと演じてくださった。台詞の言い回しも、日本ではこの方がナチュラルだとか、いろんな提案、助言をくださって。刀を使ったアクションがあったんですが、それは実は福山さんからの提案でした。そのシーンも、銃を使ったシーンも、常に福山さんの動きは美しくて、迫力もあった。初の本格アクションとは到底思えない素晴らしさでした。
福山雅治 いやいや(照れ笑い)。僕がずっと不思議だったのは、ジョン監督の撮られるアクションシーンは、カッコイイだけじゃなく、美しさが感じられることです。人が撃たれたり斬られたりするんだけど、そこにかならず、“美”がある。その理由は何なんだろうと。で、現場で監督の撮影を体験してわかったことがあります。

――それはどのような?
福山雅治 銃を撃つ0.2秒ほどのワンカットでも、10テイクとか15テイクとか撮るんです。そのときの体勢、腕の角度、顔の表情、すべてにすごくこだわっている。刀のシーンも、切っ先の軌道や刃の光り方とか、細かいところまで追求されてて、「今度はもう少し上で」とか「動きを大きく」とか、毎回的確な指示が入るんです。たぶん、一つ一つの画が静止画として絵画的に美しいかどうかを見て判断されていたんでしょうね。動画でありながら、すべてがその積み重ね。たぶん他の現場ではなかなか追求しきれないその理想形を監督は突き詰めてゆく。ですから、短いアクションシーンにも膨大なカット数と、膨大な時間がかかっていて。それが美しさに繋がっているんだろうなと思いました。

「必死にならざるを得ない環境」が、役者のポテンシャルを引き出す

――福山さんも本作では、今までにない人間臭さや泥臭さのような部分が感じられたのが、新鮮でした。美しさ、カッコ良さだけではない、もっと内側にあるエネルギーが爆発しているような。
福山雅治 それはたぶん、難題や初めてのことに、たくさんチャレンジさせていただけたからだと思います。水上バイクにしても、ソード(刀)アクションにしても、殴ったり組んだりの格闘技的な動きにしても、英語の台詞にしても。齢50を前にして(笑)、やったことないことにこれだけ挑戦すると、必死さは当然出ますよね。監督は、長年の映画作りを通して、役者のパフォーマンスをどう引き出すかを熟知していらっしゃるのだと思いました。いつも穏やかで、怒鳴ったり声を荒げたりは一切ないのに、長年の経験で、役者が自分自身を追い込み、必死にならざるを得ない環境を作ってくださる。そこで、自分自身をコントロールできない領域に追い込まれた時に、初めて自分でも知らなかった自分が引き出されるんだなと思いました。
ジョン・ウー 福山さんはとても自分に厳しい方で、英語の台詞に関しても、自分から「英語は吹き替えなしでやりたい」と言ったのです。何事にもベストを尽くされる方なんだな、と。
福山雅治 海外の映画では、母国語以外をしゃべる時に吹き替えになるのは普通のことなので、別に自分でやったからクオリティーが高いというわけではない。ただ僕自身、やや声に特徴があるせいもあって、そこは自分でやった方がいいのかなと。それでちょっとワガママというか、頑張らせてくださいとお願いしたんです。

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