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福山雅治 SPECIAL INTERVIEW 軸をはみだした!? 以前よりもはるかに表情がある湯川学
必要以上に近づきすぎると甘くなってしまう…
福山僕のなかで眠らせていた湯川を引っ張り出してきた、という感じです。どの役を演じるときもそうなんですが、あまり事前に作り込まないんです。お芝居は共演者あってのものですから、共演者とのやり取りを含めて湯川を構築していくようにしています。あと、今回は海の近くでの撮影ということもあって、海が舞台だと湯川はどんな感じになるのかなと、自分でも楽しみでした。とは言っても、(シリーズとしてすでにキャラクターの)もとが出来上がっているから、そういう楽しみ方ができるのかもしれないです。
──“子ども嫌い”の湯川先生が、恭平くん(山ア光)と海での実験を重ねるシーンでは、今まで見たことのない湯川先生を見ることができた気がします。どんな現場でしたか?
福山別の映画ですが、是枝(裕和監督)さんの『そして父になる』で子どもたちと共演していたのと、それ以前にも『映画ドラえもん のび太と奇跡の島 〜アニマルアドベンチャー〜』の主題歌「生きてる生きてく」をやったこともあって、最近はだいぶ子どもに近づいていたんです。『そして父になる』を撮影していると、街の子どもたちが「あっ、ドラえもんのおじちゃんだ! ドラえもんの歌を歌っている人だー!」って言うわけですよ。おっ、これはいいなと(笑)。
──子どもにも大人気だったんですね。ただ、資料には光くんと敢えて距離を置いた、とありました。その理由は?
福山『そして父になる』の現場では、3歳、4歳、5歳の子どもたちと一緒だったんですけど、3歳はまだ何も分からない、4歳はようやく言葉がわかってきた、5歳はもう(大人に近い)人間になっている、というのをその現場で知ることができました。今回の『真夏の方程式』の光くんは撮影当時8歳で、完全に人(大人)です(笑)。個という人格を明確に持って日本語を使ってコミュニケーションをとれるので、距離をどう取ったらいいのか迷いました。ただ、彼はあまりお芝居の経験がないと聞いていたので、敢えて距離を持った方がいいかなと。それは相手のためでもあり自分のためでもあって。必要以上に近づきすぎると、どうしても甘くなってしまいますので……。
──それは、素の福山さんの優しさがにじみ出てしまうから?
福山僕くらい爽やかで優しい人間となると、そうとしか言えないですね(笑)。これは僕の好みの問題ですけど、あまり撮影現場で談笑するのは好きじゃないんです。段取りを含めて早く(芝居を)やりたいタイプ。もちろん、雑談が多かったり和気あいあいとするのもいいことではあるけれど、それよりはそれぞれの仕事をフルに発揮して全力で作ることを楽しみたい。とくにロケだと天候も含めて待ち時間があるわけだから、ベストな瞬間を逃したくないんです。なので、現場では西谷監督ともほとんど話をしていなくて、僕の演技が違えば西谷監督の方から言ってくるだろうし、僕も疑問に思ったら話しに行きます。言葉ではなく表現でディスカッションしたいんです。
“湯川”をどれくらいの振り幅でどう使うか
福山経験したことは、子どもを役者として使わないという是枝さんのアプローチです。子どもに芝居をさせないで、そのままの状態を撮るんです。事前に台本は読ませず、セリフは現場で子役の耳元でささやいて(笑)、それを言わせる。途中で違うことを言いはじめたとしても(大人の役者が対応してくださいと)「お願いします」と言われるので、そうなると大人の芝居が一度壊されるわけです。壊されて、そこで何が出てくるのかを是枝さんは楽しみにしているし、どう拾ってくれるのか僕らも楽しい。セリフはあるけれどエチュード(即興劇)のような、そのライブ感が僕は楽しくて。その経験がなかったら『真夏の方程式』の撮影で相当困っていたかもしれないです(笑)。
──とてもいい流れだったんですね。また、同じ『ガリレオ』シリーズでもテレビドラマと映画では湯川先生のトーンが違う。それもおもしろさのひとつですよね?
福山西谷監督と僕のなかで“湯川”という“乗り物”をよりコントロールできるようになってきたんだと思います。湯川像のしっかりとした軸がすでにあるので、この乗り物をあとはどれぐらいの振り幅でどう使っていくか。今回はドラマも映画『真夏の方程式』も、以前よりもはるかに表情があります。(今回の映画では)どれくらいやったら湯川をはみ出すのか、どれくらいやっても湯川をはみ出さないのか──それを試してみたかったんです。
──湯川先生という“乗り物”、かなり乗りこなしている感じですか?
福山いえ、きわどいコーナーをドリフトするところまではいっていない(笑)。まだ、グリップ走行で押えている感じです。
──ということは、乗りこなすまでまだまだシリーズは続くと期待していいですか?
福山ただ、原作があと残り2本くらいなので、東野圭吾先生次第というか。僕が言うのもおこがましいですが……。あとは、毎回の事件のなかにどこまで物理学の要素を入れていけるのか、ということ。だいぶ物理学の要素が減ってきているんです(笑)。湯川先生って意外と事件解明が好きなんじゃないの? というギリギリのところでやっています(笑)。
ダークヒーロー!? 存在が痛快なキャラクター
福山純情篇、旅情篇、湯けむり篇とかですか(笑)。それ、みなさんが許してくれるかなぁ。舞台は必ず旅先で、そこで美女と出会って、事件に巻き込まれて……。それは湯川じゃなくていいですよね(笑)。
──ですよね(笑)。続いて少し大きな質問なんですが、福山さんは役者、音楽家、写真家……さまざまな分野で活躍していますよね。そこに舞い込むオファーから「これをやりたい」と、選ぶ基準、決め手は何ですか?
福山役者に関しては、台本を読んで完成品をイメージして、この作品だったら自分でも観てみたいと思うかどうか。役に対して、これをやりたいと思ったことは一度もありません。作品としておもしろいかどうかはわからないけれど、この役をやってみたいというアプローチや判断基準はないんです。もちろん、『ガリレオ』シリーズも今回の『真夏の方程式』もそう。自分で観たいもの、自分で聴きたいものじゃないと人には勧められないですからね。
──完成品を観てみたいと思って参加したその先には、湯川学を演じる楽しさもあるわけですよね?
福山湯川学のキャラクターが、事件の内容や被害者・加害者の心情にまったく興味がない、その在り方が痛快なんです。(ふつうの人が抱く心情が)欠落しているという設定がおもしろい。ひょっとしたら、この人はマッドサイエンティストなんじゃないかって思わせるような匂いすらしますから。それに、湯川にはダークヒーローのニュアンスもあって、それは演じていて楽しいです。まあ、僕が湯川学を演じているので……、そのダークサイドを見えにくくさせているというのはあるかもしれないですけど(笑)。冗談はこのくらいにして、湯川のダークサイド(のストーリーを今後)は、描けるかもしれないですね。
(文:新谷里映/撮り下ろし写真:草刈雅之)
映画情報
真夏の方程式
美しい海が残る玻璃ヶ浦。そこでは海底資源の開発計画を推進する企業側と、環境保護グループが意見を衝突させていた。地元の住民も巻き込み、町全体が大きく揺れ動いていた。その開発計画の説明会にアドバイザーとして招聘された湯川。
翌朝、堤防下の岩場で男性の変死体が発見される。男の身元は湯川が滞在している『緑岩荘』の宿泊客で、引退した元捜査一課の刑事・塚原だった。現地入りした捜査一課の岸谷美砂は、湯川に協力を依頼。事件を巡る複雑な因縁が、次第に明らかになり……罪を犯した人物は一体誰なのか。そして湯川が気づいてしまった、哀しき事件の真相とは―――。
監督:西谷弘
出演者:福山雅治 吉高由里子 北村一輝 杏
【公式サイト】
全国東宝系で公開中 (C)2013 フジテレビジョン アミューズ 文藝春秋 FNS27社
関連リンク
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・映画『真夏の方程式』公式サイト