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『女囚セブン』から見えた“女囚モノ”フォーマットの強み

  • ドラマ『女囚セブン』で主役を務める剛力彩芽

    ドラマ『女囚セブン』で主役を務める剛力彩芽

 現在放送中の新ドラマ『女囚セブン』(テレビ朝日系)では、剛力彩芽による自然体の京都弁の演技が「剛力さんがひと皮剥けた」「剛力彩芽の演技が素晴らしくて見直したわ」等々、ネットで話題になっている。また、“全員、悪女”といったキャッチや、濃厚過ぎるなメンツをそろえて話題を呼び、放送後も曲者ぞろいの囚人たちが見せるドロドロとした人間ドラマが好評だ。改めて“女囚モノ”フォーマットの強さをみせた『女囚セブン』の魅力に迫ってみたい。

イジメ、ケンカ、抗争、そしてお色気……曲者ぞろいの“悪女”物語

 『女囚セブン』は、そのタイトル通り「花園刑務所」という女子刑務所を舞台にしており、女囚同士のイジメ、ケンカ、抗争、そして若干のお色気…という誰もが期待する女囚モノも“お約束シーン”が満載の、まさしく視聴者の期待を裏切らない作品である。

 昭和を知る世代なら当然、梶芽衣子主演の映画『女囚さそり』シリーズという名作を思い起こすだろうし(ちなみに梶芽衣子は剛力の母代わりの置屋の女将役で出演)、2時間ドラマやVシネマなどでも女囚ものは鉄板のテーマだが、本作では囚人服はピンク、食堂のテーブルクロスもピンクのチェックであり、刑務所自体も事なかれ主義で不祥事はもみ消すという、どこか現代風の設定になっている。

 そして、「セブン」=剛力を含む7人の女囚たちは、全員曲者ぞろいだ。剛力は元京都の芸妓ながら同僚を殺した容疑(冤罪?)で収監。政治家秘書(山口沙弥加)、元ヤンのシングルマザー(トリンドル玲奈)、遺産目当ての毒婦(平岩紙)、全身整形の美容整形看護師(橋本マナミ)、老々介護で夫を殺した最高齢(木野花)、嘘だらけの食い逃げ女(安達祐実)といった登場人物は、ドロドロすぎて剛力自体が“喰われ”そうなものだが、剛力は意外にも彼女らの“毒演技”を見事に切り返しているのだ。

女囚シリーズに期待される、刑務所内のイジメや主人公のヒーロー要素

 初回放送では、新人の囚人(ドラマ中では“ドべ”と呼ばれる)としてイジメに遭う剛力だが、激臭の肥料を全身に浴びても無表情だったり、ゴキブリが乗った“ゴキブリライス”を顔色ひとつ変えずに食べるといった“怪演”を見せる。先輩囚人の1人がそんな剛力に親切そうなふりをしながら罠にハメるのだが、剛力は「ほんまはうちに近づくためのお芝居でっしゃろ」と正体を見抜き、「ちゃんちゃらおかしくておへそでお茶沸かして、ぶぶ漬けすするわ!」と罵倒。しかし、最後は「罪は犯すヤツが悪いんやない。犯させるヤツが悪いんどす」となだめるあたり、この手のドラマのヒーロー(ヒロイン)の要素を十分に兼ね備えていると言える。

 また、剛力の京都弁は実に流暢で、芸妓時代の姿も剛力自体が芸妓顔?のためか違和感もなく、“こんなに演技上手かったっけ…?”と思わされるほど抑揚に富んだ演技を披露しでいる。脇を固める“濃い”女囚たちも、視聴者が「女囚」という言葉で想起する“刑務所”“悪女”“ドロドロの人間ドラマ”…といったイメージとうまく重なり、放送前からSNSなどでも期待値が高く、初回視聴率が同時間帯トップの7.5%という好発進も頷けようというものだ。

深夜ドラマだからこそ求められるドロドロの“アダルト”さ

 そうした意味で『女囚セブン』は、深夜ドラマならではの“黒い”テーマが適切に機能し、“女は怖い”といった世間一般のイメージをもうまく活かし、戦略的に非常に成功した作品だろう。その結果、イメージとかけ離れた作品と評価されることは無く、視聴者の期待にも大いに答えることができているのである。

 “悪女が勢ぞろい”したということでも、主役級ではないながらも著名な女優たちのキャスティングは、深夜帯としては“豪華”なものとして映り、実際バイプレイヤーとして実績も実力もある女優たちがいっせいに脇を固めることで、視聴者も安心してドラマを楽しむことができる。そのキャスティング手法は、バカリズムが脚本を担当した日本テレビの深夜ドラマ『黒い十人の女』にも通じる最近のトレンドでもあり、『女囚セブン』というタイトルにしても、某週刊誌を彷彿とさせ、いかにも“ドロドロの女のドラマ”を思わせるものになっている。

 テレビ朝日の「土曜ワイド劇場」なき今、局側には今後も『女囚セブン』のような“深夜ドラマ”枠を活かし、ゴールデンの作品とはひと味違う大人の娯楽として、“アダルト”な作品の魅力を追究していってほしいものである。

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