(更新:)
ORICON NEWS
日テレ“水ドラ”、明確なテーマとネット戦略で築いたブランド力
女性視聴者をターゲットに多くの話題作を生み出してきた老舗ドラマ枠
近年では、未成年が母になるという衝撃のテーマで注目を集めた『14才の母』が最高視聴率22.4%のスマッシュヒット。また最高視聴率40.0%を記録した大ヒット作『家政婦のミタ』は、視聴率が右肩上がりに伸びていくという、昨今にはなかった異例の盛り上がりも話題を呼び、「面白ければ視聴者はドラマを観るのだ」という、テレビドラマ不況説に対する強烈なカウンターを見せてくれた。
ほか、前期のTBS系の話題作『カルテット』の脚本家・坂元裕二氏が手掛けた松雪泰子主演『Mother』や満島ひかり主演『Woman』が放送されたのもこの枠。母性や、シングルマザーの生き様を描いた内容はもちろん、映画界で活躍する存在だった満島をテレビ界に知らしめた功績も大きい。こうして多くの話題作を放送してきたが、傾向として顕著なのは、20〜40代の女優が主演する作品が多いこと。もしくは、その年代の女性に遡求する作品が多いことが挙げられる。
「ネットはテレビの敵ではない!」SNSなどを絡めた的確な話題作り
『家売る女』では、結婚後初ドラマの北川景子を、一切笑わない役で起用した戦略が大当たり。『世界一難しい〜』の大野智や『〜校閲ガール〜』の石原さとみなど、ネットが“バズ”りやすい俳優の起用と配役など、日テレ水曜ドラマ枠は戦略が安定している印象がある。「元々チャレンジングな枠ですが、そこにこの戦略が功を奏し、ここ最近の水曜ドラマの価値を上げる結果に繋がっているように思います」(衣輪氏)
一方で、ドラマ枠のブランド化は制作側にとって諸刃の剣にも!?
それぞれの枠に特色がつくことで、視聴者は“好みのドラマ”にありつけるという利点があり、自然とその枠の人気にもつながる。一方で、「こうしたドラマ枠のブランド化は、ターゲットを絞り込むことに繋がり、制作陣にとっては諸刃の剣になる。従来のやり方では危険」とも衣輪氏は語る。
「枠のイメージが“ひとり歩き”した場合、自身の首を締めてしまうことになりかねないのです。例えば月9は、世間では“キラキラの恋愛”のイメージが定着し、伝統であるかのように錯覚させられてしまった。視聴者のみならず、制作側もこの風潮に流され、時代を切る切り口が鈍っていったのではないでしょうか。フジのプロデューサー陣と話すと、そもそもの『その時代を切り取った、なんでもありの枠』への立ち返りが見られるので今後に期待ですが、過去の大成功で月9が大きくなり過ぎた故、なかなか身動きが取れない印象。ネットで視聴者が様々な意見を交わし合える今の時代、ドラマ制作者や編成には、ブランド力を高めるとともに、イメージを“ひとり歩き”させない戦略も必要となってくるでしょう」(同氏)
水曜ドラマ枠今期の『母になる』は良質かつ、非常にチャレンジングな、いかにも“同枠らしい”内容。枠のブランドを高めつつ、そのイメージに足を捕われないよう“良質な作品を送り続けられるのか?”が、テレビドラマにとって難しい時代だが、水曜ドラマ枠は巧みに操るネット戦略とぶれないテーマ性で枠の安定感を誇っているのだ。
(文/西島享)