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“人気ロケ地”を目指す地方観光局、その狙いとは?

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    映画『クリーピー 偽りの隣人』で起用された三の丸庁舎 提供:いばらきフィルムコミッション

 観光都市として見事なV字回復を遂げた熱海。その裏には“熱海のADお助け公務員”なる公務員の奮闘があったことが、メディアでも取り上げられるようになった。本来なら番組のADの仕事である撮影場所の許可取りや、ロケ弁当の手配などの雑用を代行することで、番組ロケを誘致→テレビ番組で露出を増やす→イメージアップ→観光客を呼び戻す…という一連の活動を行ない成功させてきた。こうした映画・テレビ番組等のロケ地を誘致する“フィルムコミッション”は、今や全国各地の地方自治体や観光協会で展開。中でも圧倒的な“ロケ地人気”を誇る茨城県の「いばらきフィルムコミッション」を例に、フィルムコミッションの“目的”と“効果”について探ってみたい。

全国で広がるフィルムコミッション ロケ地としての活動が“新たな地域資源”に

 フィルムコミッション(以下FC)は、1940年代にアメリカ・ユタ州に発足したのが始まりといわれる。日本では、大林宣彦監督が故郷の広島県尾道市の地元賛同者の協力を得て、1980年代に撮影した映画『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』のいわゆる“尾道三部作”がその先駆けとされるが、実際に組織として立ち上がったのは2000年、大阪ロケーション・サービス協議会(現大阪フィルム・カウンシル)が設立されたのが最初だ。

 FCの目的は、「いばらきフィルムコミッション」(事務局は茨城県商工労働観光部観光局観光物産課フィルムコミッション推進室)の米川洋司氏の言葉を借りれば、「映像を通じて本県の知名度向上やイメージアップ、観光など交流の促進を図ること、新たな地域資源を発掘し、魅力ある地域づくりにつなげること」だという。つまり、映画やテレビ番組などのロケ地となることで、地元地域の活性化を図るわけだ。

“中途半端”感から脱却なるか!? “ロケ地”として数々の作品に起用される茨城

 「茨城県のロケ地としての魅力は3つあります。(1)自然の風景、レトロな風景、現代の風景など、さまざまなロケーションの撮影が可能なこと、(2)映像制作会社が集中している東京から近距離にあり、高速道路などの交通ネットワークが充実していること、(3)全県的なロケ支援体制が確立していることです。特に(3)は、各市町村で構成する茨城県フィルムコミッション等協議会を設置して、県で対応できない案件を市町村で対応するなどの連携によって、さまざまな撮影に対応しています」(前出・米川氏)

 ブランド力のある東京に近いような近くない…という位置関係で“中途半端”と評価されることも多い茨城、ロケ地として見れば東京から近いという“地の利”に変わり、都会ではないことで自然環境も豊か。さらには県内の21市4町にFCがあるという万全のバックアップ体制を敷くことにより、“茨城をまるごとお貸しいたします”というキャッチフレーズ通りの活動を実現しているのである。

 実際、この茨城県あげてのFC活動の結果、設立時の2002年には32作品、撮影延べ日数227日だったロケが、2015年度には583作品、撮影延べ日数1130日と飛躍的に伸びている。2015年に公開された興行収入10億円以上の邦画(実写)27作品のうち、県内FC支援でロケ誘致(2014〜2015年撮影)したものは、『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN』『寄生獣』『図書館戦争 THE LAST MISSION』『バクマン。』『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN エンド オブ ザ ワールド』『龍三と七人の子分たち』『寄生獣 完結編』『バンクーバーの朝日』『イニシエーション・ラブ』『天空の蜂』と10作品もあり、“あ〜、あの映画のあのシーンは茨城で撮ったんだ!”と思い当たる人も多いのではないだろうか。

地元の長所を生かす政策がもたらした“経済効果”と“郷土愛”

 とは言え、地元の単純なイメージアップだけではなく、それなりの“効果”いわば“実”の部分もなければ、FCは成立しない。最近の映画では、CMの煽り文句などで“エキストラ〇〇〇〇人の巨大ロケ敢行!”的なフレーズもよく目にするが、2015年度の映画やドラマ83作品には、総勢4800人もの茨城県民がボランティアエキストラとして参加しているのである。
「スタッフさんのご苦労を思い出しながら作品を見るのがおもしろい。エンドロールで茨城の地名や施設名等が出ると、ブランド力アップにもつながるではないでしょうか。これからもたくさんロケに来てほしいです」(出演作品『スキャナー』/いばらきFCのプレスリリース「観光いばらき」2016年9月2日より)とのエキストラの声にもあるように、茨城県民のエキストラ出演への協力体制が十分に整っていると同時に、参加した県民の郷土愛も強くなるという利点がある。

 そして、いわゆる“お金を落とす”という意味でも、宿泊代、撮影機材のレンタル代など、撮影隊の県内消費推計額は約3億5000万円、撮影隊消費推計額による経済波及効果の推計額は約4億8000万円(金額はともに2015年度)というから、FC活動は着実に経済効果を上げているのである。

 さらには、最近流行っているロケ地巡り=“聖地巡礼”ブームとの相乗効果で、ロケ地見学を盛り込んだツアーも好評というから、国内の人気ロケ地はこれからもますます勢いを増していくだろう。実際、いばらきFCでも、「ロケ誘致・支援をさらに向上させ、海外作品のロケ誘致を図ります。また、ロケ地を活用した観光誘客もさらに行なっていきます」(前出・米川氏)というように、国内どころか海外作品にまで目を向けており、観光客誘致に関しても、さらに活動を強化していく意欲に溢れているのである。今後は、こうした各地域の経済や人々の心を豊かにするFC活動を通して、地方観光局などの自治体のみならず、民間からも地域活性化のアイディアがどんどん求められていく時代になっていくことだろう。

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