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オタクの“聖地探し”が図らずも大きな“町おこし”に

 日本のアニメは世界に冠たるコンテンツであり、膨大な経済効果を生み出すことはもはや常識だが、マニアックなアニメファンの間で盛り上がっている“聖地巡礼”も、ここにきてすっかり定着しているという。“聖地”とは、アニメ作品の舞台になった場所や、制作時に何かしらの関係を持った土地のこと。ファンたちが聖地を“巡礼”することで、その地域に思わぬ経済効果をもたらし、場所によっては数十億円レベルの効果を生み出すという。この地方自治体×アニメという異色のタッグによる地域活性化は、さらなる広がりをみせている。

“聖地巡礼”への便乗に嫌悪を抱くコアなアニメファンたち

  • 実写化映画も公開された『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(C)ANOHANA PROJECT

    実写化映画も公開された『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(C)ANOHANA PROJECT

 この“聖地巡礼”は、実は4、5年前から話題となっている。2007年にアニメ化されて大ブームを巻き起こした“空気系”(美少女キャラの他愛もない日常を淡々と綴る)学園アニメ『らき☆すた』の舞台・鷹宮神社のモデルとなった、埼玉県鷲宮町の鷲宮神社には“巡礼者”が殺到。2008年は30万人だった初詣客が、2009年には42万人に激増し、埼玉県久喜市(鷲宮町は後に久喜市に編入)はアニメ放送後3年間で22億円もの経済効果があったことを発表した。また、2011年に放映されたアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』(通称“あの花”)のクライマックスシーンを飾る、埼玉県秩父市の龍勢祭に11万人が殺到するなど(前年は7万5000人)、アニメの聖地巡礼が大きな経済効果をもたらすことはすでに“実証済み”なのである。

 アニメの舞台となった自治体が便乗し、イベントの開催やグッズを製作する動きも今や珍しいことではない。しかし、こういった動きすべてがアニメファンに喜ばれているわけではないという。
「自治体が、あまりにも露骨に巡礼客を狙ったことをすると、原作のファンからは“あざとい”として拒否反応を示されます。特にアニメ好きのオタク層は、こういう商売のネタ的なことをされるのを極端にイヤがりますから、自治体の安易な“先行投資”はリスクがともないます」(アニメ雑誌編集者)

自ら聖地を見つけだしPR活動 自治体をも動かす

 一方、ファンの噂がSNSで拡散されて聖地化した場所は、ファンが自らの手で作り上げたとあって好意的に受け止められやすい。『らき☆すた』と同じ空気系アニメ、女子高の軽音楽部部員の日常を追った『けいおん!』では、女子高の校舎のモデルが滋賀県犬上郡豊郷町立豊郷小学校旧校舎ではないか? とファンの間で盛り上がると、巡礼者が殺到。ファンに歩み寄った自治体と、外部からの訪問者が急増したことで子どもたちの安全を気に掛ける住民との間に“ズレ”が生じる問題も起きたが、ファンを受け入れようとする地元の姿勢によって“聖地”としての人気を定着させた。
  • 倉吉市・石田耕太郎市長と『ひなビタ♪』メンバー

    倉吉市・石田耕太郎市長と『ひなビタ♪』メンバー

 また、同じく女子中高生のバンドが町おこしをするという、SNS、音楽配信、アニメ等のメディアミックス作品『ひなビタ♪』では、同作品に登場する商店街はここなのでは?と話題になった鳥取県倉吉市も、観光客が激増。すると“歴史・文化・伝統が色濃く残る街”倉吉市が、作品の舞台である“架空の都市”倉野川市と姉妹都市提携を発表し大きな衝撃を与えた。市民の動揺はあれど、「若い層の人に倉吉の魅力を伝えたい」と語る市長の期待通り、20代の『ひなビタ♪』ファンが巡礼に訪れ、『ひなビタ♪』のみならず倉吉市の魅力をも満喫しているという。

オタクたちの発想から新しいビジネス展開が生み出されていく時代

 「“経済効果”を期待する動きはどんどん広まっています。人気ゲーム『アイドルマスター』に登場する“高槻やよい”の誕生日・3月25日には、物語にはまったく関係ないのですが、大阪府“高槻”市の定食チェーン店「“やよい”軒」にファンが殺到するという現象が続いています。これに対応した店側も、ファンたちを歓迎するパネルを設置しました。こうした“アニメ×地方自治体”の関係に“企業”が絡んでくるケースは増えていて、成功を収めています」(前出・編集者)

 『天空の城ラピュタ』のバルス現象(ラピュタを崩壊させる呪文・バルスを全員でTwitterでつぶやく)ではないが、こうしたアニメファンたちの横のつながりはSNSの発達によって飛躍的に拡大し、ちょっとしたアイディアや感想が、図らずも巨大なイベントに発展する可能性を秘めている。言ってみれば、アニメとは全く関係のない場所に広告代理店の戦略が絡んでなくても、いわゆるオタクたちの発想から新しいビジネス展開が生み出されていく時代なのだ。

 そして、“高槻やよい”の聖地巡礼に代表されるような、アニメファン×地方自治体×地元企業それぞれがウインウインの関係になることは、本来の意味での“民間レベルの町おこし”であり、日本の地方再生の鍵を握っているのかもしれない。

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