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松坂桃李インタビュー『甘えやすい性格だからハードルを高くしないといけない』

 2016年はドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)での童貞教師役や、石田衣良の小説が原作の舞台『娼年』での男娼役など体当たりの挑戦を見せてきた松坂桃李。最新主演作であり、人気ボーカルグループ・GReeeeNの名曲「キセキ」誕生秘話を描いた映画『キセキ ―あの日のソビト―』では、ジン(GReeeeNのプロデューサーJIN)役を演じ劇中では歌声も披露。30歳を目前に、より多彩な役柄に向き合っている松坂に現在の俳優業について語ってもらった。

自身の父親との関係がフラッシュバックした劇中シーン

――GReeeeNという実在するグループのプロデューサーJIN(ジン)を演じるにあたり、どんなふうに役作りをしていったのでしょうか?
松坂桃李僕はいつも作品に入る前に、しっくりくるアーティストを選んで、その作品の撮影期間中はずっとそのアーティストの曲を聴くようにしているんです。今回はそれが、Pay money To my Pain(P.T.P.)というバンドで、彼らの曲を毎日聴いて気持ちを高めながら撮影現場に向かうようにしていました。

――P.T.P.の曲がしっくりきたポイントを教えていただけますか?
松坂桃李P.T.P.は、JINさんが2008年までギターで参加されていたバンドなんですけど、彼らは日本のオルタナティブロックやメタルバンドの先駆けだったそうです。僕は劇中でハイスピードというバンドのボーカルを担当しているので、そういった意味でもP.T.P.がしっくりきたんだと思います。良い曲が多くて、ハートに刺さるすごくカッコいいバンドなんですよ。
――演じる役に合った音楽を探し、その曲を聴きながら撮影に挑まれるという姿に松坂さんの作品への真摯な気持ちが感じられます。
松坂桃李ありがとうございます。恥ずかしながら今作が決まるまではP.T.P.を知らなかったのですが、今回の仕事がきっかけで知ることができて本当に良かったと思います。JINさんの音楽に対する思いを大切に演じたいという気持ちがあったので、彼らの曲を毎日聴くようにしていました。

――昨年9月の前回のインタビューで、今作について「撮影が終わってから気づいたことがあった」とおっしゃっていました。どんなことに気づいたのでしょうか?
松坂桃李ジンが将来のことで父親と口論になって家を出ていくシーンは、自分にも似たようなことがあったなと完成作を観て改めて思ったんです。ただ、僕の場合はジンのように「これがやりたいんだ!」という強い想いがあって家を出たわけではなくて(笑)。この仕事に就いたあと急に忙しくなってしまって、大学を休学しなきゃいけなくなったんです。それを父親に話したら「ふざけるな!」と怒られ、「いやいや、決まっちゃったんだから仕方ないじゃん」と僕も言い返して。で、「出ていってやるよ!」と勢いでタンカを切ってしまったんですけど、それが劇中のシーンとフラッシュバックしたというか。僕にも似たようなことがあったなぁと気づかされました。

歌うシーンがないから受けたのに…劇中で歌うのは最初で最後(笑)

――今作では父親役を小林薫さんが演じてらっしゃいましたが、共演されてみていかがでしたか?
松坂桃李小林さんが現場に入られた瞬間に父親としての“大黒柱”感や威厳がビシビシと伝わってきました。小林さんがスタンバイしているセットに入るたびに異空間に行くような不思議な感覚になるというか(笑)。“ここから先は覚悟して本気でいけよ”と気が引き締まりましたね。小林さんとご一緒したシーンを観て驚いたのが、ジンと弟のヒデがそれぞれ父親と一対一で話すシーンがあるんですけど、台本にも書かれていないし菅田と打ち合わせしたわけでもないのに、ふたりとも父親の前で正座していたんです。役とはいえ、僕ら兄弟なんだなと実感できたというか。僕も菅田も小林さんの威厳のある父親感に圧倒されたのかもしれません(笑)。
――ヒデを演じた菅田さんは事務所の後輩であり、これまでに何度か共演されています。松坂さんにとって菅田さんはどんな存在ですか?
松坂桃李才能あふれた役者だと思いますし、菅田と芝居することで受ける刺激もあります。彼は役者以外にも歌を歌ったり洋服を作ったりしているクリエイティブな人間なので、一緒にいるとおもしろい部分がたくさん見えてくるんです。僕は歌えなければ洋服も作らないので、菅田に対して自分にないものを持っていると思えます。だからこそ共演したときに刺激を受ける部分も多いですし、タイプが違うからこそ共演する確率が高い。似ていないから今作で兄弟役もできたので、それはとてもラッキーなことだと思っています。ただ、ガッツリ共演するのはオリンピックのように4年に1回で十分ですけど(笑)。
――今まで歌う芝居はNGにしていたぐらい歌が苦手とお聞きしましたが、ジンがステージで歌うシーンはすごく様になっていましたよ。
松坂桃李ありがとうございます。今作のお話をいただいたときに「ジンはプロデューサー役なので」と聞いてお受けしたんです。準備稿には歌うシーンが無かったはずなのに、決定稿を読んだらハイスピードのライブシーンが追加されていて驚きました(笑)。

――台本に書かれていたらやるしかないですしね(笑)。今後も歌うシーンに挑戦していただきたいです。
松坂桃李そう言っていただけるのはすごく嬉しいんですけど、劇中で歌うのは今作が最初で最後かもしれません(笑)。

マネージャーと仕事に関して話し合う機会が増えた

――2016年は舞台『娼年』で男娼の役を演じたり、ドラマ『ゆとりですがなにか』でコミカルな役を演じるなど幅広い作品に出演されていました。お仕事を受ける際に以前と変わった点はありますか?
松坂桃李変わったというよりは、3年ほど前から自分に対して高いハードルを課すようにしていきたいと思うようになったのが大きいかもしれません。以前と比べてマネージャーと仕事に関して話し合う機会が増えましたし、色の違う作品にどんどん挑戦していきたいと思っていたタイミングで、ちょうど幅広いお仕事の依頼をいただけたので、ありがたかったです。

――だからこそ今作で歌うシーンにも挑戦することができたり?
松坂桃李そこに関してはマネージャーにうまく丸め込まれた感じはありますけど(笑)。

――新しい面を見せていくことで、周りが抱く松坂さんへのイメージがどんどん変わっていくのを肌で感じることはありますか?
松坂桃李イメージは後からついてくるものだと思うので、まずは自分がどうなるかわからないという領域でやってみることが大事かなと。例えば『娼年』のお話をいただいたときも、「男娼という役をやる自分が全く想像つかない。どうすればいいのかな」とある種の不安や緊張感がありました。でも、未知の領域だからこそ全力で取り込むことができますし、自分のなかの新たな引き出しを見つけたり、持っていなかった引き出しを作ることが楽しく感じられるんだと思います。
――どんどんハードルを高くしていきたいと?
松坂桃李そうですね。演じている姿が自分で想像できる範疇の役だと甘えが出てしまう性格なので、そうならないためにも常に高い位置にハードルをもっていかないといけないと思っていて。どうなるのか想像つかないほうがやりがいを見い出しやすいんだと思います。

――2017年はどんな年になりそうですか?
松坂桃李来年は20代最後の年なので、やらせていただくお仕事すべてが自分のなかで勝負の作品になると思います。まだ詳細はお話できませんが、「これは大変だな……」と思えるような大勝負のものも決まっています。2017年もみなさんに応援していただけるように全力でがんばります!
文:奥村百恵/撮り下ろし写真:RYUGO SAITO
ヘアメイク: AZUMA@MONDO-artist(W)/スタイリスト: 伊藤省吾(sitor)

キセキ ―あの日のソビト―

 厳しい父(小林薫)の反対を押し切り、家を飛び出したミュージシャンの兄ジン(松坂桃李)。父の想いを受け、歯医者を目指す弟ヒデ(菅田将暉)は歯科大に合格したが、仲間との出会いにより音楽の魅力に引き寄せられていた。一方、ジンは仲間たちとの意識のズレにバンドは解散状態に……。そんなとき、弟たちの才能を知ったジンは、彼らの音楽手伝うことに決める。

監督:兼重淳
出演:松坂桃李 菅田将暉 忽那汐里 平祐奈 横浜流星 成田凌 杉野遥亮 早織 奥野瑛太 野間口徹 / 麻生祐未 小林薫
2017年1月28日(土)公開
(C)2017「キセキ あの日のソビト」製作委員会
【公式サイト】(外部サイト)

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