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空席が続く国民的ヒロイン 人気の“高さ”と“幅”を兼ね備える存在は今後現れるか?

 いつの時代にも多くのドラマや映画で主演を飾る人気女優は定期的に生まれている。だが、若者から年配層まで、老若男女を問わず愛される“国民的ヒロイン”は久しく現れていない印象を受ける。そこにはテレビをはじめとするメディアをとりまく環境の変化が関わっているのだが、果たして今後、そんな絶対的なヒロインが誕生することはありえるのだろうか?

かつてほどの勢いが無くなった老若男女への人気の広がり

 人気の“高さ”だけでなく“幅広さ”も兼ね備えた国民的ヒロインといえば、60年代なら吉永小百合、70年代は山口百恵が挙げられる。吉永は映画が娯楽の筆頭だった時代に『キューポラのある街』『青い山脈』『伊豆の踊子』など多くの作品に主演し、“サユリスト”と呼ばれるファンを生んだ。山口はアイドル歌手としてヒットを連発する一方、大映ドラマ『赤い』シリーズやリメイク版『伊豆の踊子』などの映画で女優としても存在感を発揮。劇的な引退とも相まって伝説的存在になっている。

 80年代以降は、最高55.3%の視聴率を記録した朝の連続テレビ小説『澪つくし』(NHK総合)でヒロインを演じた沢口靖子、朝ドラに大河ドラマと主演して民放でも『やまとなでしこ』(フジテレビ系)などをヒットさせた松嶋菜々子、同じく大河ドラマほかヒット作に主演して『NHK紅白歌合戦』の司会も務めた仲間由紀恵や綾瀬はるかが“国民的”の系譜に連なる。

 ただ、老若男女への人気の広がりはかつてほどではなくなっている。これは時代の流れからの必然で、音楽でジャンルや趣向の多様化により、今はセールス的に大ヒットした曲も特定層以外には聴かれていないのと同じだと言えるだろう。

 『東京ラブストーリー』などトレンディドラマがブームの90年代からすでに、“F1層がターゲット”といった言葉が飛び交い、視聴率は30%を越えても知らない人はまるで知らない状況が生まれていた。テレビは一家に一台からひと部屋に一台となり、さらにワンセグも普及。テレビ離れが進んで、視聴率は10%を越えれば“合格”という状況のなか、ドラマは中高年層向けに舵を切る作品が増え、若者向けは配信系で展開するなど、作品ごとの絞り込みはより進んでいる。

 そうなると、主演級の女優でも万遍なく幅広い層への認識はされにくい。家族みんなで話題を共有されることはなく、人気の“高さ”は手にしたとしても“幅広さ”までには至らず、国民的ヒロインはより生まれにくくなってきた。

きっかけは朝ドラ?次期“国民的ヒロイン”に近づく若手女優とは?

 そんななか、その空席に近づけるか注目される若手女優のひとりが、『時をかける少女』(日本テレビ系)で連ドラ初主演した黒島結菜だ。沖縄出身の19歳。昨年『カルピスウォーター』CMや映画6本に出演し、ドラマでも一昨年の宮藤官九郎脚本『ごめんね青春!』(TBS系)の生徒会長役などから着実にステップアップ。『時をかける少女』は視聴率こそ振るわなかったが、若い世代に人気の高校生モノでありつつ、たびたび映像化された作品のリメイクで、チャンネルを合わせた40代以上の視聴者にも彼女の素朴で一生懸命な佇まいは好感度が高かった様子。人気の“高さ”はこれからにせよ、“幅広さ”に繋がる資質は得難い。
 久々の国民的ヒロイン“候補”は、ドラマ不況の近年も好調なNHK朝ドラから生まれる気配があり、10月から放送の『べっぴんさん』でヒロインを務める芳根京子にも期待がかかる。黒島と同じ19歳で、昨年のドラマ『表参道高校合唱部!』(TBS系)で初主役に抜擢されていた。現在は『三ツ矢サイダー』CMも好評だが、フェミニンというよりナチュラルな存在感は万人から支持されそう。
 放送中の『とと姉ちゃん』は、近年の朝ドラのなかでもとりわけ好調な視聴率で推移しているが、ヒロインの高畑充希は14歳から舞台を中心にキャリアを積んできた24歳。もともと演技力は評価されつつ主役タイプではないとされてきたが、『とと姉ちゃん』をまっとうし、認知度を上げた。誰からも嫌われない女優ぶりで、意外と遅咲きの国民的ヒロインになるかもしれない。

 そもそも朝ドラ人気を復活させたのは3年前の『あまちゃん』で、ヒロインの能年玲奈は国民的ヒロインに手がかかりそうだった。現在は女優活動が見られないが、愛らしい笑顔と演技を待望する声も根強い。復帰すれば再び国民的人気を得る可能性もあるだろう。
(文:斉藤貴志)

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