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際どい役どころもあえて挑戦……人気俳優たちが続々と舞台に挑むワケ
“ひと皮剥けたい”という願望や欲望に火を点ける舞台の“魔力”
一方、長澤の『キャバレー』のヒロインは、かつて藤原紀香や松雪泰子が演じてきた由緒ある“大人のミュージカル”。本作の演出家・松尾スズキ(劇団「大人計画」主宰)は、「長澤さんは“何でもやります!”と言い切りました。その心意気にとことん乗っかり、“何でも”の向こう側がミュージカルというエンタメの世界でお互いに覗けたら、それを幸せと感じたく思います」と語り、長澤も「以前から松尾さんの舞台に出るのが夢だったので、松尾さんの演出を受けられることが今から楽しみです」と意気込んでいる。その言葉に偽りはなく、舞台では長澤ファンも固唾を飲むほどの妖艶な肢体を惜しげもなくさらしているのである。
「おふたりともこれまでの舞台経験は少ないですが、今回の舞台で大きく成長していくと思います。よく蜷川(幸雄)さんの舞台でも、藤原(竜也)さんや小栗(旬)さんなどが、若手時代に蜷川さんに罵倒されたり灰皿を投げつけられたりしながら成長していく……という話を聞きますね。松坂さんや長澤さんのように、すでに安定したポジションに至った役者さんたちの中にもまだまだ、もう“ひと皮剥けたい”という願望があるんだと思います。その熱情と言いますか、“欲望”に火を点けてくるのが舞台の“魔力”なのでしょう」(エンタメ誌編集者)
自身の力量を見極めたいという“本能” パブリックイメージを覆すことでキャリアアップも
「もちろん、舞台では失敗は許されない、といった身の引き締まるような緊張感は出演者全員にあるでしょう。一方で、お客さんたちはその日その日で、毎回“違う”自分を見てくれます。同じ役柄・演出でも、毎回舞台で完璧に同じ演技をするということはあり得ません。不調なときもあれば、新しい発見もあります。そうした日々の自分の成長する姿も、舞台ではお客さんに披露することができるんですね。この“快感”は役者さんにとっては“麻薬”みたいなものだと、聞いたことがあります」(前出の編集者)
舞台はまさに“生もの”であり、自分の演技に対する観客の反応や自分の成長ぶりすらも、実感としてダイレクトに得ることができるということか。ドラマや映画、CMなどの活動とは別に、舞台に挑戦する俳優たちが後を絶たないのは、やはり自分にもっと実力をつけたい、そして自分の力量を見極めたいという、役者としての“本能”に根差したものなのかもしれない。
さらに、これまでのパブリックイメージを覆すような役を“演じ切る”ことで、俳優としての幅や深みも増し、更なるキャリアアップにつながる可能性も秘めている。ある程度のキャリアを重ねた俳優や女優たちが、あえて際どい役どころを舞台でチャレンジするのは、現状の殻を破りたいという意識の表れだと言えるだろう。