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際どい役どころもあえて挑戦……人気俳優たちが続々と舞台に挑むワケ

  • 『キャバレー』で初めてミュージカル出演する長澤まさみ

    『キャバレー』で初めてミュージカル出演する長澤まさみ

 若手イケメン俳優の王道を歩んできた俳優の松坂桃李が、R15指定の舞台『娼年』に先月26日より出演、タイトルに見合った“どエロ”な演技を披露して話題になっている。一方、もはや大物女優の仲間入りを果たした長澤まさみも、初のミュージカル『キャバレー』で胸元も露わにセクシーすぎる歌姫を演じている。松坂も長澤もドラマや映画で実績を積み、確固たるポジションを築いているはずだが、なぜここにきて、こうした官能的な舞台に挑戦する必要があるのだろうか? 彼らに限らず、一歩間違えばそれまでのキャリアに傷がつきかねないリスクを犯してまで、舞台に挑戦する理由とはいったいどこにあるのか? 大物俳優たちをも惹きつける舞台の“魔性”の魅力に迫ってみたい。

“ひと皮剥けたい”という願望や欲望に火を点ける舞台の“魔力”

 『娼年』は、直木賞作家・石田衣良原作の小説『娼年』と『逝年』を舞台化したもので、普通の大学生・松坂がボーイズクラブの経営者である高岡早紀と出会い、娼“夫”の仕事を通してやりがいを見つけていく……という内容。松坂はイケメン俳優の登竜門とも言える“戦隊ヒーロー”で華々しい主役デビューを果たして以降、正統派俳優として順調な道を歩んできた。そんな松坂が、あえてここにきて“R15指定”の舞台に挑み、高岡をはじめ須藤理彩や江波杏子らのベテラン女優らと共演し、全裸まで披露するのである。松坂自身も、「なかなかないチャンス。ここまでの濃さの役はもう(やることが)ないだろうなと。それくらいの気持ちで臨んでいます」と闘志を見せていたが、鑑賞したファンたちにも「覚悟を持って観劇したものの、桃李くんの覚悟が並大抵ではなかった…」「初日なのに、もしこれ以上進化していくとしたら、松坂桃李は得体の知れない怪物なんじゃないか」「目を奪われてしまいましたが……もちろん、拍手喝采」等々、絶賛されている。

 一方、長澤の『キャバレー』のヒロインは、かつて藤原紀香や松雪泰子が演じてきた由緒ある“大人のミュージカル”。本作の演出家・松尾スズキ(劇団「大人計画」主宰)は、「長澤さんは“何でもやります!”と言い切りました。その心意気にとことん乗っかり、“何でも”の向こう側がミュージカルというエンタメの世界でお互いに覗けたら、それを幸せと感じたく思います」と語り、長澤も「以前から松尾さんの舞台に出るのが夢だったので、松尾さんの演出を受けられることが今から楽しみです」と意気込んでいる。その言葉に偽りはなく、舞台では長澤ファンも固唾を飲むほどの妖艶な肢体を惜しげもなくさらしているのである。

 「おふたりともこれまでの舞台経験は少ないですが、今回の舞台で大きく成長していくと思います。よく蜷川(幸雄)さんの舞台でも、藤原(竜也)さんや小栗(旬)さんなどが、若手時代に蜷川さんに罵倒されたり灰皿を投げつけられたりしながら成長していく……という話を聞きますね。松坂さんや長澤さんのように、すでに安定したポジションに至った役者さんたちの中にもまだまだ、もう“ひと皮剥けたい”という願望があるんだと思います。その熱情と言いますか、“欲望”に火を点けてくるのが舞台の“魔力”なのでしょう」(エンタメ誌編集者)

自身の力量を見極めたいという“本能” パブリックイメージを覆すことでキャリアアップも

 これまでも藤原紀香や米倉涼子ら、キャリアを積んだ俳優らが舞台に挑み、文字通りの体当たりの演技を魅せてきた。確かに舞台は、映画やドラマのように“撮り直し”がきくわけではない。観客と演者との“真剣勝負”であり、その緊張感やスリルが俳優たちを魅了するのだろうか?

 「もちろん、舞台では失敗は許されない、といった身の引き締まるような緊張感は出演者全員にあるでしょう。一方で、お客さんたちはその日その日で、毎回“違う”自分を見てくれます。同じ役柄・演出でも、毎回舞台で完璧に同じ演技をするということはあり得ません。不調なときもあれば、新しい発見もあります。そうした日々の自分の成長する姿も、舞台ではお客さんに披露することができるんですね。この“快感”は役者さんにとっては“麻薬”みたいなものだと、聞いたことがあります」(前出の編集者)

 舞台はまさに“生もの”であり、自分の演技に対する観客の反応や自分の成長ぶりすらも、実感としてダイレクトに得ることができるということか。ドラマや映画、CMなどの活動とは別に、舞台に挑戦する俳優たちが後を絶たないのは、やはり自分にもっと実力をつけたい、そして自分の力量を見極めたいという、役者としての“本能”に根差したものなのかもしれない。

 さらに、これまでのパブリックイメージを覆すような役を“演じ切る”ことで、俳優としての幅や深みも増し、更なるキャリアアップにつながる可能性も秘めている。ある程度のキャリアを重ねた俳優や女優たちが、あえて際どい役どころを舞台でチャレンジするのは、現状の殻を破りたいという意識の表れだと言えるだろう。

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