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多部未華子、想像ができなかった難役への挑戦!「ほかの人に演じさせたくない」
私の想像では及ばないかもしれないけど…
多部時代背景も年齢も、73年間生きてきた重みや経験も、全然想像がつかなくて……。73歳をイメージすることは難しいですが、今回の作品では、(2人1役で若返る前のヒロインを演じた)倍賞(美津子)さんが生きてきた時代、倍賞さんが見てきたものが大事なんだと肝に命じていました。私の想像なんかでは1ミリも及ばないかもしれませんが、とにかく倍賞さんが経験してきたこと、生きてきた時代を背負っているんだという心構えでいました。
――役について、撮影前に倍賞さんとはどんなやりとりをされましたか?
多部撮影が始まる前に一度、水田伸生監督と倍賞さんと3人でお話する時間をいただきました。(若返る前の)カツと(若返った後の)節子、ふたりの共通項というのか、例えば走り方など見た目のことから、戦災孤児で飢えて生きてきたからすごく愛には深いとか。そういうことは常に共通で意識していようねという話を、いちばん初めにさせていただきました。
――撮影が始まってからは、すんなり2人1役になれましたか?
多部同じシーンはありませんでしたが、同じ日に撮影することが多かったので、現場を見学させていただきました。倍賞さんもリハーサルの様子を見に来てくださったり、最初はそうやってお互いを意識しながらやっていった部分がありました。
――冒頭「東京ブギウギ」を口ずさみながら下町の商店街を闊歩するときの、倍賞さんの軽妙なダンスも、事前に打ち合わせられたものですか?
多部あれは現場で突然、倍賞さんがあの動きをされて。水田監督と「あれは取り入れないとね!」と言い合ったくらい、突然のことでした。
経験したことのないドキドキを初めて体験する感覚
多部撮るのがすごく早いんです。リハーサルも早くてすぐに本番になり、本番も2〜3回撮ってOKというスピードでした。本当にテンポのいい監督で、本番までいい緊張感が保てるので、私はすごく好きでした。緊張感と刺激と、慣れないまま本番に入ったときの瞬発性というのか、そこでパッと出る突発的なものもあって。そういうことができる現場って、すごく贅沢ですし、楽しかったです。おもしろいシーンはおもしろく、シリアスなシーンはシリアスに、現場の空気感も水田監督が率先して作ってくださるので、俳優がどれだけそれに応えられるかという現場でした。周りの環境のせいにできないくらい、素晴らしい状況を作ってくださいました。監督は偉大だなということを、今回すごく感じました。水田監督と出会えてよかったと思います。
――水田監督も『謝罪の王様』(2013年)をはじめ、コメディ映画でヒットを連発してきましたが、多部さんもテレビドラマ『デカワンコ』(2011年)『ドS刑事』(2015年)などで、抜群のコメディエンヌぶりを発揮されてきました。喜劇はお好きですか?
多部好きは好きですが、喜劇がとくに好きっていうわけではありません。シリアスなものより、(喜劇の)現場は明るいから好き、というくらい。(コメディに多く出演しているイメージがあるのかもしれませんが)そればかりではなく、いいバランスでやれているのかなと思います。
――オファーを受けて出演を決める際のポイントにしていることは?
多部出演作を選ぶときの決め手は……やはり、ほかの人に演じてほしくないと思うかだと思います。私にしかできないとかは思いませんが、自分がチャレンジしたいか、したくないかというのはあります。
――今回、要潤さんふんする、音楽プロデューサー・小林さんとのコミカルな恋模様も、楽しかったです!
多部恋といえば恋ですが……あまり恋だとは思わなかったんです(笑)。どちらかというと、経験したことのないドキドキを初めて体験する感覚というのか。
――例えばバーベキューのシーンで、小林さんから差し出された肉にかぶりついちゃう節子の初々しい感じは、いまのハタチよりピュアに見えたりもして。その辺のジェネレーションギャップも計算した上での演技プランだったのでしょうか?
多部あれは台本にはなかったんですが、現場で監督が提案されたのかな? 要さんが提案されたのかな?……でも、いまのハタチは違うんですか?
――ご自身のハタチの頃と比べると、いかがですか?
多部いや、私もあんな感じでしたよ!(笑)。そんなに変わらないんじゃないかな。いまはみんなLINEとかSNSでコミュニケーションをとっているので、もっと簡単な感じなのかな?
歌以外は楽しいことばかり(笑)
多部難しかったといえば難しかったですが、どのシーンも楽しかったです。例えば次郎役の志賀(廣太郎)さんと今後共演させていただくことがあるとしても、きっとおじいちゃんと孫とか、上司と部下のような関係だと思うのですが、今回は対等に話すシーンばかりだったので、なかなか貴重だなと思いました。だから志賀さんとのシーンはすごくおもしろかったし、楽しいことばかりでした。歌以外は(笑)。
――ヒロインの憧れの映画は『ローマの休日』でした。多部さんにも、憧れの映画ってありますか?
多部オリジナル版の『怪しい彼女』(2014年)を観たとき、“あぁいいな、すごくおもしろかったな。これをやれるんだ、やったー!”って感じだったんです。ある意味、憧れですね。
――どこに魅かれたのでしょう?
多部物語の筋が通っているし、歌もすごく素敵でした。どの世代が観てもあてはまる家族ものって、大体ヒューマンドラマっぽくなってしまいますが、コメディも満載で、感動もできて“この後、どうなるんだろう?”という展開のおもしろさもあります。でもすごく前向きに終わる映画だなと。登場人物みんなが魅力的で、どの人も皆いいなと思いました。すごくよかったんですよ。だから歌のこととか何も考えずに“わー、やりたい、ラッキー!”って思ったんですが、ちょっと大変でした(苦笑)。
――要さんが瞬きを忘れてしまうほど、聞き惚れた多部さんの歌声に、オファーが殺到するのは必至だと思いますよ?
多部いや、歌には自信がないので!(笑)
(文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡)
あやしい彼女
戦中生まれの下町育ち、早くに夫を無くし、女手一つで娘を育ててきた。望むような人生を生きられなかった主人公に訪れた二度目の青春! 突然若返った彼女は、こうなったらとことん好きなように生きてやる! と髪型も服装もチェンジ、家族も名前も捨て去って、新たな人生をスタート。
そんな彼女の天声の歌声は、魂を震わせ、たちまち周囲を魅了していく。
監督:水田伸生
出演:多部未華子 倍賞美津子 要潤 北村匠海 金井克子
2016年4月1日(金)より全国ロードショー
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