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男の趣味連載【HOBBULOUS LIFE】Vol.3 DIY(=Do IT Yourself)コーヒー <後編>おいしい1杯を探求する
薀蓄も楽しみのひとつ。進化するコーヒーの世界を知る
「いままでは量産型のコマーシャルコーヒーが主流だった」と話す堀口さん。農園ごとの味の違いまでには目が向かず、生産国単位でごっちゃに扱われるのが関の山だった。「もっといいものを飲みたい、というムーブメントが2000年ぐらいから起きて、ここ15年ぐらいで質の高い豆が流通するようになりました。とは言っても、それはコーヒー豆全体の約6〜7%程度。今後、もっと流通量が増えて、おいしいコーヒーを飲む機会が増えると嬉しい」と語る。
奥深いコーヒーの世界は、こだわる分だけ楽しめる。個人が楽しむときの“こだわりポイント”も、時代ごとに変化しているという。「最初に注目されたのは、淹れ方。そこから焙煎方法によって味が変わるということが浸透し、いまやっと、原材料の生豆の品質に目が向きました」。コーヒーを淹れる工程を逆行し、“こだわりポイント”が川上へ移行している。「コーヒーはワインと同じ」と言うように、今後は国やエリアはもちろん、生産者単位で楽しむことがスタンダードになるかもしれない。
インテリアとしてもかっこいい、集めたくなるアイテムたち
Person ―人物―
喫茶店ブームの頃に学生時代を過ごしたという堀口さん。「コーヒーが好きで、いつか自分の喫茶店を開きたいと思っていました」。その夢が叶ったのが40歳。「何がいいコーヒーなのか最初はわかりませんでした。日本中はもちろん、ヨーロッパやアメリカをはじめ、世界中のコーヒー屋さんの豆を試したけれど、これだ!と思うものはなかった」そう。焙煎が深く、しっかりした味わいながら焦げのような苦味のない、やわらかい味を目指し、何度もトライして少しずつ掴んでいった。行き着いた先は、焙煎用の釜まで従来のものから変えたほど。「既存の焙煎機だと、ある程度以上の深煎りは焦げてしまう」。そのこだわりが、夢の自分の店「堀口珈琲」で提供されている。
コーヒーとは、未知の領域がまだまだあり、未完成な世界だと言う。「ワインレベルまで理解されるまでに、もう少し時間がかかります」。その難しさ、奥深さが魅力でもあるが、やっと少しずつわかってきた世界だそう。堀口さんにとってコーヒーとは、「追いかけても逃げていく、掴まえることができないのに、なぜか惹かれてしまう女性のような存在です(笑)」。
「堀口珈琲」代表
堀口俊英(ほりぐち・としひで)
日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)理事。日本コーヒー文化学会常任理事。1990年世田谷区に「堀口珈琲」を開業。日本におけるスペシャルティコーヒーのパイオニア。喫茶・カフェの開業支援を行うほか、年間100回のコーヒー関連セミナーを主催。「珈琲の教科書」(新星出版社)、「コーヒーのすべてがわかる事典](ナツメ社)「スペシャルティコーヒーの本」(旭屋出版)その他著作多数