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本広克行監督 『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』DVDインタビュー
なんで『FINAL』って言っちゃうのかな
【本広】 たしかにウルッとしましたね。でも、それ以上に『踊る大捜査線』シリーズってものすごくプレッシャーがかかる作品なんです(笑)。そもそもドラマや映画ってフィクションですから、自由にやっていいものだし、楽しんでいいものだと思っています。けれど、『踊る』はあまりに大きくなりすぎてしまって……すべてが大変になってしまった。感激するはずの完成披露イベントでも、監督の立場としては、あれだけの役者が勢揃いするわけですから、全員を立てなければならないな……とか、そういう心配をしちゃうんです(笑)。でも、本当に『FINAL』を送り出すことができてよかったですね。
──心のうちを明かしていただきありがとうございます(笑)。そういう影の苦労もあるわけですね。でも、それだけシリーズが大きく成長した証。『踊る』の歴史をふり返ると、15年続くってすごいことだと実感しますね。
【本広】 ふり返ってみると、『踊る大捜査線 THE MOVIE』までは、(スタッフも予算もそれほど多くなかったため)やることが多すぎて寝られなくて。時間は足りないけれどやりがいのある時代でしたね。ただ、当初はあんなに劇場版がヒットするとは思っていなかったんです。だから、『THE MOVIE』のラストシーンに関しても(ドラマのノリで)、“実は寝てました〜”っていうギャグのつもりだったのに、劇場に観に来た方々は、感動して泣いてしまっているわけです。作り手としては予想外の展開。「これでいいのか?」となりますよね。でも、観たあとに気持ち良くなってもらえればそれも受け入れてもらえるはずで──笑って、泣けて、元気が出る、それが『踊る』なんだなと。そして、続編『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』のあたりからは、役者がみんなさらに有名になって、その後のシリーズはいろいろ調整で大変なことも出てきて……。最初、無名だったユースケ(・サンタマリア)なんて、『2』の時には主役級でしたからね(笑)。
──そして『FINAL』では、ほぼオールキャストが揃うという、本当に豪華なキャスティングでしたね。
【本広】 そうなんです。『FINAL』だから……という苦労もありました(苦笑)。最初は『FINAL』ではなく『4』と言っていて、僕らのなかでは『OD4』という記号で動いていたんです。でも、途中から『FINAL』になって。ただ、監督の立場としては「なんで『FINAL』って言っちゃうのかなぁ」と。というのは、『FINAL』と言った途端、すべてのセクションから『FINAL』ならこうしよう、ああしようと、まあいろいろあるわけです。ドラマの初めから一緒に作っていた亀山さんは、今は現場にはなかなか来られないですから、(全シリーズを分かっているのは)僕ひとり。すべてをまとめるのはやっぱり大変でしたね(笑)。と言いつつも、僕が成長できたのはこの作品のおかげ。この作品があったからこそ、そのほかの映画もたくさん撮らせてもらいましたから、やっぱり特別な作品です。
このシーンは当時のままでいいんです
【本広】 青島が、現場の声を上層部に真っ正直にとうとうと話すシーンですね。あのシーンは僕も織田さんもやりたかったシーンで、君塚さんに何度も台本を書きかえてもらったんです。みんなで1ヶ月半ほど話し合いながらセリフを決めていきました。僕の台本には、織田さんが追加で殴り書きをしたセリフで埋まっていて、本当にいいシーンになったと思います。また、あのシーンは第1話で青島が登場するシーンと同じアングル、同じカット割りをしているんです。だからドラマの第1話を観て『FINAL』を観ると、笑えるくらい一緒なんですよ。それは敢えて狙ったこと。美術さんたちは「昔は無理だったけど、今だったらこういうのも用意できるよ」って言ってくれたけど、「いや、このシーンは当時のままでいいんです」と。青島の演説、ものすごくいい演説になりました。最後に室井さんが少しだけ笑うのもいいんですよね。
──本当にいい演説でした。そして、第1話と見比べます!ほかに、このシーンは力を入れた、何度も見返したくなる、というお気に入りのシーンはありますか?
【本広】 青島が小池(小泉孝太郎)に自白させようとするシーンですね。青島に問い詰められる小池が鳥飼(小栗旬)の顔をうかがうんですけど、鳥飼は「俺は関係ない」という態度で。その微妙な立場の演技がね、すごく深いんですよ。微妙な目線配りだけで関係性を説明できているというか、あのシーンの演出は、自分のなかでも近年まれにみる名演出だなと。俺もここまできたか、天才だなって(笑)。とにかく、青島から動き出した無言の演技が小池、鳥飼、久瀬(香取慎吾)……と将棋倒しになっていくんです。誰かがひとりつまずいたらダメになってしまう、本当に奇跡のシーンですね。
──たしかに、あの緊迫感にハラハラドキドキさせられました。一方、これが『踊る』だなぁという、楽しくて仕方なかったなぁ、笑ったなぁという『踊る』らしさが出ているお気に入りシーンをひとつ挙げるとしたら?
【本広】 ビールを隠蔽しているシーンですね(笑)。くだらなすぎるんですけど、ああいうの好きなんです。ただ、これまでと少し違うのは“間”で笑わせているということ。ビールが見つかって、ふつうなら「いやいやいやー!」って慌てる感じで隠蔽するけれど、今回は間で表現しようと思ったんです。真下が「それ、何?」って言うと、青島たちはちょっと止まって「何でしょうね〜」と。で、おもしろいのは、遠くの方でプリンターのガガガガガッっていう音が流れていたりするんです。しかも、最後のシーンでは、青島との会話で室井さんが「なんてなっ」って和久さんの口癖を真似ると、周りがしーんとなるんですね。で、その奥でもガガガガガッって(笑)。音にはすごくこだわっているので、そういうちょっとした背景にある間とか音も楽しんでいただけたら嬉しいですね。
(文:新谷里映)
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DVD情報
踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望
湾岸署管内で開催中の国際環境エネルギーサミット会場で誘拐事件が発生。数時間後に被害者は射殺体で発見される。使用されたのは、警察が押収した拳銃。緊急招集された捜査会議では、全ての捜査情報を管理官・鳥飼へ文書で提出することが義務付けられ、所轄の捜査員には一切の情報が開示されない異例の捜査方法が発表される。 そんななか、第2の殺人が発生。そして、捜査員たちを嘲笑うかのように起こった第3の事件。「真下の息子が誘拐された……!」――疑念を抱きながら必死に真実を突き止めようと捜査する青島。その捜査こそが、青島、最後の捜査になるとも知らずに……。
監督:本広克行
脚本:君塚良一
出演者:織田裕二 深津絵里 ユースケ・サンタマリア 柳葉敏郎
【OFFICIAL SITE】
2013年4月26日(金)DVD『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』リリース
(C)2012 フジテレビジョン アイ・エヌ・ピー
関連リンク
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