例年、就職ランキングの上位に入っている人気の航空会社に就職するにはどうすべき? 前回は毎年国内で1、2を争うほど数多くのキャビンアテンダント(CA)を輩出している関西外国語大学の授業に潜入して、エアライン就活のポイントを探ってきた。その中で浮かび上がったのが「総合的な第一印象」、「語学力」、「のびやかで豊かな人間性」というポイント。今回は、さらに踏み込んだ話をうかがった。 一般企業との違いは? 航空会社が求める「第一印象」
就活のカギを握る“総合的な第一印象”。一般企業の就活でも苦戦する人が多い中、サービス業の花形職業であるCAならばよりハードルが高くなるはず。これまでに多数のCAやGSを養成してきた元CAの木野本美千代先生によると、第一印象の構成要素は、主に「挨拶」「表情」「声」「言葉遣い」「立ち居ふるまい」「身だしなみ」なんだそう。木野本が教鞭を取る関西外国語大学のる「エアライン講座」では、それぞれ細かく指導している。 (左)挨拶はビジネスマナーの基本から指導。立ち居振る舞いは、歩き方や歩き姿の練習も行っている/(中央)表情については「笑顔でいることの意義や良い笑顔に必要な心の持ち方も説明しています」と木野本先生/(右)「ハキハキと明るく大きな声を出すと、誰に対してもオープンな心で接し、積極的に行動できる、というプラス要素をもたらします。また、仕事ではアナウンス業務を行うほか、緊急時には地声での誘導も必要になります」(木野本先生)
そのほか、CAは外見の美しさも重要なポイント。講座ではエアライン業界独自のポイントも教えているんだそう。「一般企業の就活メイクでは、アイシャドウなどをあまり使いませんが、航空会社の就活では、”眼ヂカラ”を引き出すために使います。また、黒のスーツが多いので、顔立ちがより引き立つように、ファンデーションをワントーン明るくするなどの指導をしています」と木野本先生。内面については日本国憲法、国連、円の動きなど時事に関するテーマの調べ学習を取り入れているという。
興味深いのは、指導の徹底ぶり。面接会場へ入室する際の笑顔は、「部屋へ入る前から笑うくらいの表情づくりを前提にしています。発声も徹底的に練習しますし、座位の姿にも、存在感や華があるかどうかにこだわります」。そのため、一般企業向けの面接対策セミナーにCA希望の生徒が出席すると、他の学生とは所作や第一印象のレベルが違うという。エアライン就活の指導内容は、一般企業での就職活動にも生かせるのだ。 CAやGSになるために、必要な語学力と学び方って?
前回は、CAやGSに必要な語学力について、TOEIC710点以上のレベルが必要だと紹介したが、2015年度の新卒採用では、少し変わっているようだ。木野本先生に聞くと、「採用試験応募要項を見ると、JALがTOEIC600点以上です。ANAは英語力についての記載はありませんが、過去の経緯からTOEIC600点以上を基本としていることは間違いないと思います」とのこと。実際に、これまでの関西外大の内定者はTOEIC700前後が平均となっており、高い英語力は必須のようだ。
英語力アップは、関西外大の専門分野。同大学には、英語圏をはじめ各国のネイティブの外国人教員が185名在籍し、TOEIC 730点以上を4年間の到達目標としている外国語学部英米語学科をはじめ、各学部学科のカリキュラムで高度な英語力を養成している。CAやGSの仕事現場では、海外の人々との対人能力や英語運用能力も求められるが、関西外大では、外国人留学生も多く、交流イベントのほか、学内での国際交流センターやインターナショナル・コミュニケーション・センターで、日ごろから日本人学生との異文化交流が行われている。 (左)梅村美帆さん 外国語学部英米語学科4年生/(右)橋本沙彩さん 外国語学部英米語学科4年生
普段の学習や体験をベースに、さらに英語力をアップさせるプログラムもある。「エアライン講座」を受講した梅村美帆さん(外国語学部英米語学科4回生)は、大学のプログラムで約3カ月間、カナダへ留学した。「英語力が大きく伸びたきっかけは、留学です。2回生で受けたTOIECは500点前後でしたが、3年後期の留学後には750点に上がりました」という。同じくカナダ留学を経験した講座受講生の橋本沙彩さん(外国語学部英米語学科4回生)も、「TOEICの勉強はずっとしていましたが、特に留学後はすごく伸びていました」と語る。もちろん、授業だけで語学力が伸びる人もたくさんいる。しかし、一定期間、英語に囲まれて過ごす留学は、学んだ英語力が開花するきっかけになるようだ。 人間力を磨いておけば、就職や仕事の現場で必ず生きる
今の航空業界は、海外の航空会社や、ピーチ・アビエーションなど安さを売りにしたLCCの台頭で、企業間の競争が激しくなっている。そのなかで、顧客を獲得するためには、サービスや設備の充実とともに、それを支える「人」、つまり人間力が大切になる。
接客業務と保安業務をこなすCAの仕事は、人間力が求められるシーンが多い。「接客面では、ホスピタリティの発揮が欠かせません。CAには、常に、一人ひとりのお客様が今、何を求めているかを瞬時に察し、喜んでいただける方法を創造することが求められています」。保安面では、「起こることの予測や、周囲にアンテナを張ることでお客様からも機体からも異常を見抜く力が必要とされます」とのこと。つまり、接客面でも保安面でも、”機転を利かせる=人間力”が必要とされているのだ。 木野本美千代先生
木野本先生に、これからCAやGSをめざす学生たちへのアドバイスを聞いてみた。「計画的に行動することです。1回生の時から、学生生活をどのように充実させるか、どの段階で600点以上を獲得するかを考えながら、行動することが大切です。人間力を培うためには、何でもやってみるという気持ちが大切です」。そして、最終関門である採用試験では、自分を存分に表現することが重要という。「講座では、基本を教えますが、一人ひとりの学生は同じではありません。そのため、礼儀や所作の指導では、自分らしさの表出を大事にします。面接では、堂々と、のびのびと自分らしさを出すこと。そこにウェイトを置いています」。
自分らしく、充実した大学生活を送り、しっかりと英語と専門知識を学ぶこと。それが、CAやGSになる秘訣といえるだろう。 関西外国語大学
世界52ヶ国・地域、375の海外大学のネットワークを持ち、年間の留学派遣学生数は1551人にものぼる。また、世界約40ヶ国・地域から706人の外国人留学生、約200人のネイティブ教員が在籍し常に外国語教育をリードしている。
〒573-1001 大阪府枚方市中宮東之町16-1