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神木隆之介『同じ匂いがするから好意を持てる』

ものすごくグロテスクだけれど…疾走感を感じた

──それを表現するためには、なぜ天谷はああいう人物なのかというキャラクターのバックボーンを考えることも必要だった?
神木 ですね。原作漫画にはほんの少しだけ“こういう過去があった”というのが描かれています。それを前提にしながら、なぜ天谷はこんなふうに歪んでしまったのか、だから天谷はこういう価値観で生きてきたのか、そういう彼の背景を理解したうえで、天谷はこういうときはこういう間で話すだろうな、こういう目つきかな……って、研究していきました。

──同級生のことを「無能なクズ」と言うけれど、高畑瞬(福士蒼汰)に対してだけはそうじゃないですよね。なぜ、天谷は高畑の存在を特別に感じているのでしょう?
神木 高畑瞬も世の中をすごく退屈に思っているんです。共通点は、本来絶望的と言われるような諦めてしまいそうな状況のなかで、天谷も高畑瞬も“生きよう”としている。それが他の奴らと違うのかな。全く同じ、とは言えないけれど、何としても生きようとしているのは一緒なんです。死を実感することで初めて自分が生きていることを実感できる。それがすごく気持ちいいと感じる人間なんですよね。だからそれと同じ匂いを持つ高畑瞬に好意を持っているんだと思います。

──天谷と高畑はそういう極限の状況で生を感じるけれど、現実的にこのゲームが自分の身に降りかかったら……。
神木 嫌ですね。恐いです(笑)。でも、何としても生きたい、生きてみせる! とも思います。

──ですよね。天谷は招き猫のステージからの登場になりますが、この映画の冒頭、ダルマのステージはいきなり“死のダルマさんが転んだ”ゲームが始まります。
神木 あの冒頭シーン、ほんとに衝撃的ですよね。僕はあのシーンの撮影現場にはいなかったんですけど、完成した映画を観てびっくりしました。それと同時に、三味線の音楽がすごくいいなぁって。本来、あの状況はものすごくグロテスクだけれど、あの音楽によって疾走感を感じた。すごく楽しめました。

どっちなのか分からない感じを出したかった

──血まみれシーンでしたけど、大丈夫でした?
神木 だいじょう……ぶ、でした。観る前にある程度覚悟をしていたので(笑)。でも、血をビー玉で表現するというのは素敵ですよね。だから僕も観ることができたのかも。

──たしかに、ビー玉独特の色合いが美しくもあり恐くもあり、観たことのない映像でした。そして、招き猫のシーンからは天谷も活躍。キャラクターはすべて3DCG。現場では見えない相手を想像しながら演じなければならない。かなり想像力が必要だったのでは?
神木 そうなんです。すべてグリーンバックの撮影でした。キャラクターが動いたら僕らはこうリアクションするとか、相手が飛んで地面が揺れたらこういうリアクションとか、もちろんキャラクターとの会話もあります。そのなかで一番苦労したのは、みんなとのリアクションの温度差が出ないようにすること。リアクションをとりすぎてもとらなすぎてもダメなんです。

──そのなかでも、一番印象深いステージは?
神木 シロクマのステージですね。天谷的にはあまり動きはないんですけど、相手がどこにいて、いまどういうリアクションを取ればいいのかが、すごく難しかったです。

──心理戦もドキドキさせられましたし、天谷のあの意味深な笑みにゾクゾクさせられました。
神木 あのシーンは、天谷が何を考えているのか分からない、その気持ち悪さを出したいと思っていました。単に危機的状況を楽しんでいるのか、それとも全部を分かって楽しんでいるのか、どっちなのか分からない感じを出したかったんです。

──十分伝わってきました。物語としては非日常ですが、その背景に描かれるものはすごく人間的に興味をそそられる感覚ですよね。
神木 そうなんです。完成して映画を観て思ったのが、“生きたい”という人間の動物的本能を改めて思い出させてくれる映画だなと。それは天谷を演じながらも感じていたことだし、この映画のメッセージでもあると思うんです。

──そして、この天谷という役で、神木さんがもともと持っている好青年というイメージが、いい意味で崩されました。いま以上の悪役に挑戦してほしいという期待も抱いてしまいます。
神木 僕自身も悪役を演じるのは楽しいんです。天谷もそうですけど、日常では絶対にありえないことをやれてしまうのも悪役のおもしろさ。どこまでできるか、挑戦し続けていきたいですね。
(文・新谷里映/撮り下ろし写真:逢坂 聡)

『神さまの言うとおり』特集&インタビュー

神さまの言うとおり

 高畑瞬は、退屈な日常にうんざりしている高校生。ところがある日学校に現れた「ダルマ」が、命を賭けたゲームの始まりを告げる。
 【第1のゲーム】始まりのゲームは、動くと首が吹っ飛ぶ「ダルマさんが転んだ」。瞬はクラスで唯一生き残り、教室を脱出。幼馴染の秋元いちかとともに体育館に向かう。
 【第2のゲーム】他の生き残りも集まる体育館に、「巨大招き猫」が出現。瞬といちかは協力し、その首輪にあるバスケットゴールにシュートすべく、招き猫の襲撃をかわしながら挑む。最終的にシュートしたのは、人を殺すことも厭わない狂暴問題児・天谷武だった。そのころ世間では、世界中で発生しているこのゲームが報道され、生き残った生徒たちを「神の子」と崇め始めていた。
 【第3のゲーム】瞬が気付くと無機質な部屋にいた。中学の同級生らとも再会し、現れた4体の「コケシ」と「かごめかごめ」を始める。知恵を絞り「後ろの正面」を言い当てた瞬は、翔子と共にいちか、天谷らと合流、次のステージに進むため7人のチームを結成する。

監督:三池崇史
出演:福士蒼汰
山崎紘菜 染谷将太 優希美青/大森南朋 リリー・フランキー
神木隆之介

公式サイト】 【予告編
2014年11月15日(土)公開 (C)2014「神さまの言うとおり」製作委員会

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