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野村萬斎 「己を知り、異文化の刺激を“自分ごと”に変換する」
歴史上の“天才”花僧を天真爛漫に表現した
「今回は“華道家”というよりは“天才である人”を演じる苦労がありました。花が好きで、花の力を信じている。そんな自分と花に嘘をつかないようにすること。その想いを見た目に表すために、精神的姿勢や花にどれだけ対峙しているかということを見せないといけなかった。とにかく花しか見ていない、天真爛漫さを心がけました。ありがたいことに芸能の世界にいると周りに天才はいるものですから、今回は身近な天才音楽家を参考にしました。昔から仲のよい知人で、即興演奏もできる人なんですが、とにかくずっと笛を吹いている。泳ぎ続けないと死んでしまう回遊魚のように、まるで吹いていないと死んでしまう、みたいな人です。
笛を吹いていることが彼にとっての“命の発散”で、相手がどう思うかなんて考えもしない。時間の感覚やTPOの分別がなく、どこでも吹ければいいんです。自分が吹けば思いは人に伝わると信じている。天才となんとかは紙一重と言いますが、音楽ばかりやっているので社会性が欠如している部分があって、僕は「5歳児」と呼んでいるんです(笑)。その人のことを参考にしました。人の名前を憶えられない専好さんもきっと彼と同じで、花しか見ていないのだろうと思いました」