2026年、全国的に「麻疹(はしか)」の感染報告が相次ぎ、医療現場からは警鐘が鳴らされている。さらに、新生活が始まったこの時期は、子どもから大人へ感染する「おたふく(流行性耳下腺炎)」への警戒も必要。こうした感染症に大人がかかった際の重症化リスクや、後遺症の恐怖、そして「免疫空白世代」が今とるべき対策とは? クリニックフォアの内科医・渥美義大先生に聞いた。
■「免疫空白世代」、自分の接種回数がわからない場合はどうすれば?
――全国的に「はしか」の感染報告が増えています。医療現場でもその兆候を感じていますか?
「学会や各所からの報告が増えてきており、国内で散発的に感染が広がっている実感はあります。増加の理由は、インバウンドの方々が増えてウイルスが持ち込まれるきっかけになったことが一つ。また、ワクチンの接種機会が1回、もしくは全くなかった、免疫的な『空白の世代』がいることが挙げられます」
――30代〜50代が「免疫空白世代」と言われるのは、なぜでしょうか?
「年代によって麻疹ワクチンの定期接種制度が異なっており、現在の30〜50代には、接種回数が1回のみだった世代や、定期接種制度開始前に成長した世代が含まれます。また1回の接種では十分な免疫がつかないことがあり感染リスクが残る場合があるためです」
――接種回数がわからない場合は、検査をすればいいのですか?
「医療機関ではしかの免疫がついているかどうか検査をすることは可能です。ただ、接種歴が不明な場合に、検査をせずに『追加接種』をすることも可能です。3回以上打ったとしても健康へのリスクは高くないとされています。心配な方は医療機関で相談の上、もう一度打っておくという判断もありだと思います」
■大人世代の症状のつらさ、脳炎や合併症リスクも
――はしかは「空気感染」が怖いと言われますが、満員電車やオフィスでのリスクはどの程度でしょうか?
「麻疹ウイルスは非常に感染力が高く、換気が不十分な密閉された状態ではウイルスが空間に滞留します。最近ではオフィス回帰が進んでいるので、混雑した環境での感染リスクは十分にあると考えられます」
――大人がはしかにかかった場合、どのような症状やリスクがありますか?
「高熱が出て、肌に特有の皮疹(ひしん)が出るだけでもかなりしんどいですが、重症化する場合もあります。肺炎や脳炎、また非常に稀ですが数年〜十数年後に起こる神経の合併症(亜急性硬化性全脳炎)を発症するリスクもあり、警戒が必要です」
――はしか以外にも、この時期に注意が必要な感染症について教えてください。春先からGWにかけては、子どもから大人へ「おたふく風邪」が移るケースもあると聞きました。
「4、5月はお子さんが新しい生活環境に入り、そこで感染したウイルスを大人がもらってしまう可能性は十分にある時期です。おたふくのワクチンは、日本では残念ながら任意接種(自費)であるため、接種率が上がらず免疫がない人が残ってしまうというリスクがあります」
――大人がおたふくにかかると、生殖機能に影響が出るそうですね。
「男性の場合は精巣炎(せいそうえん)という合併症があり、稀に将来の妊娠に関わる問題(不妊のリスク)になることがあります。精巣炎は思春期以降の男性で2割程度の方に合併するとされ、思春期前のお子さんでは比較的稀とされています」
――女性の場合はいかがですか?
「精巣炎ほど頻度は高くありませんが、『卵巣炎(らんそうえん)』を合併するリスクがあります。こちらも将来的な生殖機能に影響を及ぼす可能性は否定できません」
――「おたふく難聴」という後遺症についても教えてください。
「ムンプス難聴(おたふく難聴)は一度起こってしまうと改善が難しく、一生後遺症が続いてしまう可能性があります。割合としてはおたふく風邪のかかった人の数百人から千人に一人程度と言われていますが、日本では年間で100人を超える人が合併しているといわれています」
■マスクで防げない「空気感染」、感染拡大を防ぐ受診の仕方とは?
――では最後に対処法について聞かせてください。普段の生活の中でできる、物理的な対策についてはいかがでしょうか。
「はしかのような非常に小さくて空気感染するウイルスに対しては、一般的なマスクだけでは完全に防ぐことは困難です。人が大勢集まる過密な環境を避けることが一番の対策になります。特に、ご高齢の方や妊娠中の方がご家族にいる場合は、混雑した場へのお出かけを少し慎重に考えることも、リスク管理として必要かもしれません。何よりも最大の予防策はワクチン接種です」
――もし、「体調がおかしい」と感じた時の初動についてはどうすべきでしょうか。
「無理に出勤・登校しないことが鉄則です。はしかであれば熱の後に皮膚に症状が出ますし、おたふくであれば耳の下の腫れなど、特徴的なサインがあります。そうした異変を感じたら、まずは医療機関へ電話連絡するなどして、ご自身の情報や症状を伝えてか受診方法の指示を仰いでください。昨今ならまずはオンライン診療で受診することも感染拡大を防ぐことにもつながるでしょう」
【監修】
クリニックフォア監修医/内科医 渥美 義大
神戸大学医学部卒。東京都済生会中央病院で糖尿病内科スタッフやチーフレジデントとして勤務。現在は糖尿病専門医・日本内科学会認定医として、質の高いプライマリケアの実現と慢性疾患管理の向上に尽力している。
■「免疫空白世代」、自分の接種回数がわからない場合はどうすれば?
――全国的に「はしか」の感染報告が増えています。医療現場でもその兆候を感じていますか?
「学会や各所からの報告が増えてきており、国内で散発的に感染が広がっている実感はあります。増加の理由は、インバウンドの方々が増えてウイルスが持ち込まれるきっかけになったことが一つ。また、ワクチンの接種機会が1回、もしくは全くなかった、免疫的な『空白の世代』がいることが挙げられます」
――30代〜50代が「免疫空白世代」と言われるのは、なぜでしょうか?
「年代によって麻疹ワクチンの定期接種制度が異なっており、現在の30〜50代には、接種回数が1回のみだった世代や、定期接種制度開始前に成長した世代が含まれます。また1回の接種では十分な免疫がつかないことがあり感染リスクが残る場合があるためです」
――接種回数がわからない場合は、検査をすればいいのですか?
「医療機関ではしかの免疫がついているかどうか検査をすることは可能です。ただ、接種歴が不明な場合に、検査をせずに『追加接種』をすることも可能です。3回以上打ったとしても健康へのリスクは高くないとされています。心配な方は医療機関で相談の上、もう一度打っておくという判断もありだと思います」
■大人世代の症状のつらさ、脳炎や合併症リスクも
――はしかは「空気感染」が怖いと言われますが、満員電車やオフィスでのリスクはどの程度でしょうか?
「麻疹ウイルスは非常に感染力が高く、換気が不十分な密閉された状態ではウイルスが空間に滞留します。最近ではオフィス回帰が進んでいるので、混雑した環境での感染リスクは十分にあると考えられます」
――大人がはしかにかかった場合、どのような症状やリスクがありますか?
「高熱が出て、肌に特有の皮疹(ひしん)が出るだけでもかなりしんどいですが、重症化する場合もあります。肺炎や脳炎、また非常に稀ですが数年〜十数年後に起こる神経の合併症(亜急性硬化性全脳炎)を発症するリスクもあり、警戒が必要です」
「4、5月はお子さんが新しい生活環境に入り、そこで感染したウイルスを大人がもらってしまう可能性は十分にある時期です。おたふくのワクチンは、日本では残念ながら任意接種(自費)であるため、接種率が上がらず免疫がない人が残ってしまうというリスクがあります」
――大人がおたふくにかかると、生殖機能に影響が出るそうですね。
「男性の場合は精巣炎(せいそうえん)という合併症があり、稀に将来の妊娠に関わる問題(不妊のリスク)になることがあります。精巣炎は思春期以降の男性で2割程度の方に合併するとされ、思春期前のお子さんでは比較的稀とされています」
――女性の場合はいかがですか?
「精巣炎ほど頻度は高くありませんが、『卵巣炎(らんそうえん)』を合併するリスクがあります。こちらも将来的な生殖機能に影響を及ぼす可能性は否定できません」
――「おたふく難聴」という後遺症についても教えてください。
「ムンプス難聴(おたふく難聴)は一度起こってしまうと改善が難しく、一生後遺症が続いてしまう可能性があります。割合としてはおたふく風邪のかかった人の数百人から千人に一人程度と言われていますが、日本では年間で100人を超える人が合併しているといわれています」
■マスクで防げない「空気感染」、感染拡大を防ぐ受診の仕方とは?
――では最後に対処法について聞かせてください。普段の生活の中でできる、物理的な対策についてはいかがでしょうか。
「はしかのような非常に小さくて空気感染するウイルスに対しては、一般的なマスクだけでは完全に防ぐことは困難です。人が大勢集まる過密な環境を避けることが一番の対策になります。特に、ご高齢の方や妊娠中の方がご家族にいる場合は、混雑した場へのお出かけを少し慎重に考えることも、リスク管理として必要かもしれません。何よりも最大の予防策はワクチン接種です」
――もし、「体調がおかしい」と感じた時の初動についてはどうすべきでしょうか。
「無理に出勤・登校しないことが鉄則です。はしかであれば熱の後に皮膚に症状が出ますし、おたふくであれば耳の下の腫れなど、特徴的なサインがあります。そうした異変を感じたら、まずは医療機関へ電話連絡するなどして、ご自身の情報や症状を伝えてか受診方法の指示を仰いでください。昨今ならまずはオンライン診療で受診することも感染拡大を防ぐことにもつながるでしょう」
【監修】
クリニックフォア監修医/内科医 渥美 義大
神戸大学医学部卒。東京都済生会中央病院で糖尿病内科スタッフやチーフレジデントとして勤務。現在は糖尿病専門医・日本内科学会認定医として、質の高いプライマリケアの実現と慢性疾患管理の向上に尽力している。
2026/05/14