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映画『国宝』「芸でしか語れない人間」の物語 李相日監督が見た吉沢亮という“器”

 俳優の吉沢亮主演、横浜流星共演、芸にすべてをささげた歌舞伎役者の激動の人生を描いた映画『国宝』が現在公開中だ。任侠の家に生まれ、数奇な運命によって歌舞伎の女形となり、やがて人間国宝へと上り詰めていく主人公・立花喜久雄の一代記を描く。世襲制の色が強い伝統芸能の世界でのし上がっていく喜久雄の栄光と挫折、そして梨園の複雑な人間模様が濃密に描かれる。

映画『国宝』李相日監督 (C)ORICON NewS inc.

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【画像】吉沢亮、横浜流星、渡辺謙ほかメインキャストの場面写真


 作中では「二人藤娘」「曽根崎心中」をはじめとする歌舞伎の人気演目を、吉沢と横浜が吹き替えなしで踊り、演じたことも話題に。5月にはカンヌ国際映画祭「監督週間」に選出され、ワールドプレミア上映が行われた。本作でメガホンをとった李相日監督に、映画の魅力や制作の背景について語ってもらった。

――カンヌでの世界初上映の反応はいかがでしたか?

【李相日監督】本当にありがたい反応でした。カンヌでは途中で観客が退席し、上映終了時には半数ほどしか残らないという話も聞いていたので不安もありましたが、今回はほとんどの方が最後まで観てくださいました。上映後の拍手や歓声からも、喜んでもらえたことが伝わってきました。「よくやった」「良いものを観た」と感じていただけたのではないかと思います。

――映画を拝見して、歌舞伎を観た気分になりました。

【李監督】そう言っていただけるとうれしいです。実は、そうした感想はあまり多くないのですが、まさにそういう感覚を目指して作っていました。基本はリアリズムが基調ですが、「二人藤娘」や「曽根崎心中」といった歌舞伎の舞台シーンと、通常のドラマシーンとを明確に分けるのではなく、全体を通して“ひとつの歌舞伎演目を観ているような感触”が残る映画を目指しました。

――歌舞伎に着目したきっかけは?

【李監督】はっきりとしたきっかけはないんです。ある時ふと「自分は日本の伝統芸能にあまり触れてこなかったな」と気づきました。『悪人』(2010年公開)を撮ったあと、もっと映画表現の幅を広げたいと考え、自然と伝統芸能への関心が高まっていったんです。そこから歌舞伎に触れるようになり、今回の作品につながっていきました。

映画『国宝』場面写真 (C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

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――原作の吉田修一氏とは、『悪人』『怒り』(16年)に続く3度目のタッグですね。

【李監督】そうですね。吉田さんに「歌舞伎を題材に映画を撮りたい」と話したのはだいぶ前で、その時は特に大きく話が広がったわけではありませんでした。でもその後、吉田さんが歌舞伎俳優・中村鴈治郎さんのもとで3年間黒衣として修行をし、その経験をもとに新聞連載を始めると聞いたとき、何か大きな山が動き始めたような感覚を覚えました。完成した小説『国宝』を読み、映画化を進めてみようと考えました。

――主人公・喜久雄役に吉沢亮さんを選んだ理由は?

【李監督】4〜5年前になりますが、『国宝』を読んで映画化を考え始めた時、喜久雄を演じられるのは吉沢くんしかいないと直感しました。

――吉沢さんの魅力とは?

【李監督】そうですね……喜久雄という人物と吉沢くんが非常にシンクロしていると感じたのは、どちらも“芸”や“芝居”といった表現手段でしか自分を語ることができない、という点です。それしかないし、それだけがあるとも言える。

 それに加えて、吉沢くんは“人形のよう”でもあるんです。陶器でできた中が空洞の人形のように、叩けばコンコンと響くような、そんな繊細さと深さがある。その“空っぽさ”が、逆に奥行きのある存在感を生み出して、不思議と見る者をひきつける。

 本人に尋ねても「特に何も考えていません」と答えるでしょうけど、その“何もない”の中に、豊かで重層的な“何か”が潜んでいるように感じられる。そうした感触こそ、喜久雄という人物の本質に通じると思いました。

映画『国宝』場面写真 (C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

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――ご本人がどう思っていようと、“そう見える”ことは大事ですよね。上方歌舞伎の名門の御曹司として生まれた大垣俊介役の横浜流星さんについては?

【李監督】横浜くんは、「自分とは違いすぎるキャラクター」と言って、撮影の前半は苦労していましたが、むしろ共通点も多いと僕は思っていましたので、「さっさと受け入れればいいのに」と思っていました(笑)。

 俊介は、一度歌舞伎の世界を離れ、自分の血筋や宿命を理解して戻ってくるのですが、そこからの“横浜流星”とのシンクロ率はとても高かったと思います。横浜くんは、とてもひたむきでストイック。それは、もっとうまくなりたい、もっと、もっと…という「欲しがり」ともいえます。その“欲しがり”な性格の良さが演技ににじみ出てきました。

 最終的に「曽根崎心中」で“命を燃やして舞台に立つ”姿は、言葉にするとチープに聞こえるかもしれませんが、本当に説得力がありました。

映画『国宝』ポスタービジュアル (C)吉田修一/朝日新聞出版 (C)2025映画「国宝」製作委員会

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■トム・クルーズと歌舞伎に相通じるものが!?

――出世作の『フラガール』(06年)公開から19年になりますが、現在の心境は?

【李監督】よくここまで来られたなという思いです。常に「次の1本を撮る」ことだけを考えてきました。振り返ると、もう少し多く作品を撮っていてもよかったとは思いますが、1本1本に時間がかかってしまいましたね(笑)。

――映画と伝統芸能の融合を経て、あらためて“映画”について感じたことは?

【李監督】映画って、起承転結や感情の起伏があって、構造的な“波”を持つものですよね。でも、キャリアを重ねるとその波を崩したくなる衝動が生まれる。とはいえ、観客がそれを受け入れられるかは別問題。観る側と作り手のリズム感がずれていくのを感じることもあります。黒澤明監督でさえ、初期と晩年では語り方がまったく違います。自分もまだまだ模索していくと思います。

――映画館で観てもらいたいと思いますか?

【李監督】もちろんです。今は映像を配信で手軽に観られる時代ですが、本作は“映画館で体験する”ことに大きな意味があると思っています。映像、音響、物語、そのすべてを“体で浴びる”ように感じてもらえるはずです。歌舞伎を知らない方にも、ぜひ気負わず観ていただきたいです。

 『ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング』と同じくらいの上映時間ですし(笑)、トム・クルーズのアクションと歌舞伎のアクションには相通じるものがある。それは、どちらも“堂々としている”ことです。ぜひ劇場で体験してみてください。

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