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【おかえりモネ】主人公のセリフが少ない? 挑戦的な脚本と演出

 女優の清原果耶がヒロインを務める連続テレビ小説『おかえりモネ』がついに最終回を迎えた。5月17日にスタートした本作は、120話というストーリーを通して、作り手のさまざまなチャレンジが伺える味わい深い朝ドラとなった。

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■当事者であり部外者という立ち位置の主人公

 物語は、清原演じる宮城県気仙沼湾沖の自然豊かな島で育った永浦百音(通称・モネ)が、中学3年生のときに経験した東日本大震災によって負った心の傷と向き合いながら、少しずつ自分の道を探していく姿が描かれるストーリーだ。

 最初に感じたのが、モネの立ち位置。モネが生まれ育った亀島は、震災によって津波や火災の大きな被害を受けた。モネの家族は、震災で命を落とした人はいなかったが、幼なじみである及川亮(永瀬廉)は母・美波(坂井真紀)を失うなど、島民は深い悲しみを受けた。そんななか、モネは震災当時、高校の合格発表のため仙台にいたため、大きな地震を経験したものの、島民が受けたような被害は免れることとなった。

 つまり、本作の主人公は、日本全体では、震災という大きな災害の当事者でありつつも、妹の未知(蒔田彩珠)からは「お姉ちゃん、津波見てないもんね」と言われてしまうように、部外者として見られるという立場になってしまった。この未知の言葉こそ、モネが高校卒業後「島を離れたい」と思うようになってしまったきっかけであり、その後のモネの行動の指針となっていた感情だ。

 当事者であり部外者というモネの立ち位置は、震災というものを客観的にも主観的にも伝えるうえで、大きな役割を果たしている。もしも主人公が震災によって家族を失うなどの大きな喪失感がある人物だったら、主人公の物語としては深く感情移入できるのかもしれないが、ここまでモネの周りをとりまく人々たちをフィーチャーした群像劇的な視点はなかったのかもしれない。

 モネをはじめとした永浦家の面々はもちろん、亮と新次(浅野忠信)、明日美(恒松祐里)、三生(前田航基)らの島の仲間たち、さらにはモネが高校を卒業後に就職した森林組合がある登米市の人々、東京の気象予報会社・ウェザーエキスパーツの人々、モネが東京で下宿していたシェアハウスの人々など、それぞれの持つ物語にかかわるモネの視点は、こうした設定だからこそ生まれた深みだったと思われる。

 NHKは震災から10年が経過した今年、「あの日、そして明日へ それぞれの3654日」というプロジェクトを展開し、ドキュメンタリーやドラマ、バラエティなどを通じて“被災地のいま”を伝えた。その際、もっとも慎重に考えていたことは「被災者と言っても、100人いれば、100通りの思いがある」ということだった。

 被災者にある程度の距離を持って寄り添う視点は、モネの立ち位置にも共通しており、物語全体に優しさと考える余地を与えているようにも感じた。

■脚本家・安達奈緒子と主人公・清原果耶の強い信頼関係

 もうひとつ、本作で特徴的だったのが、主人公のセリフの少なさ。過去の作品と比べて数量的な比較はデータを持っていないので本当に“少ないか”は分からないが、モネは言葉よりも表情や立ち振る舞いで気持ちを表現するシーンが非常に多かったように感じるため、感覚的には「少ないな」と感じた。

 近年、生活スタイルの変化により視聴方法は多岐に渡っているが、基本連続テレビ小説の放送時間は午前8時から(再放送は午後0時45分)。出勤や通学など、バタバタとしている時間に放送されることから、“ながら観”でも話が入ってきやすいように、主人公のセリフが多かったり、ナレーションを多用することが多かったりしたが、『おかえりモネ』はその逆をいっている。

 もちろんコロナ禍によるリモートワークの普及など、これまでと大きく視聴環境も変わった1年だったが、それでもなかなかチャレンジングな脚本および演出に感じた。そこには、脚本を担当した安達奈緒子と清原の絶大なる信頼関係があるのだろう。

 清原と安達は、清原の代表作と賞賛する人も多い『透明なゆりかご』(2018年/NHK)でタッグを組んでいるが、放送が始まる前のインタビューで清原は「安達さんが私の芝居の癖を分かって書いてくださったのかなと思っているのか、物語に空間を感じるんです」と信頼を口にしていたが、この言葉通り、セリフに頼ることなく、深くじっくりと感情で物語を進行させる作りになっている。

 SNS上では「しっかり観ないと話が入ってこない」「テンポが遅い」という指摘も見られたが、逆に言えば、こういった意見が出ることも含めて、登場人物に寄り添うという強い意志が脚本に感じられた。もちろん、それは清原をはじめ「演じ切れる」と信頼した俳優たちへの信頼感、そんな脚本に答える演者たちの素晴らしい演技があってこそ成り立つもの。前述したような指摘が出るということは、「じっくりとテレビの前で見逃したくない」という思いにも置き換えることができる。

 物語を通じて終始落ち着いたトーンながら、最後は登場人物たちがみな、歩幅は短いかもしれないが、新たな一歩を踏み出す。そこには震災を乗り越え立ち直ろうとする人、新次のように「立ち直らない」ことを貫く人など、さまざまな“思い”があるが、そのすべてを当事者であり部外者であるモネが、自身に投影しながら、逃さず受け入れる覚悟を持って見続ける視線には、強い愛が感じられた。(文:磯部正和)

関連写真

  • 120_21A_21B_013_1028S
  • 『おかえりモネ』最終話より(C)NHK
  • 『おかえりモネ』最終話より(C)NHK
  • 『おかえりモネ』最終話より(C)NHK
  • 『おかえりモネ』最終話より(C)NHK

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