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江口洋介×上白石萌歌×大森寿美男、新ドラマ『天使にリクエストを』語る

 新型コロナウイルスの影響で撮影・放送が延期されていたNHK総合の土曜ドラマ『天使にリクエストを〜人生最後の願い〜』(毎週土曜 後9:00〜9:49、全5回)がきょう19日よりスタートする。主演の江口洋介上白石萌歌、そして作者の大森寿美男氏が、《探偵ドラマ》と《福祉》という意外な2つの要素をつなげる本作の魅力について語り合った鼎談の模様を届ける。

総合テレビ・土曜ドラマ『天使にリクエストを〜人生最後の願い〜』(9月19日スタート)江口洋介、上白石萌歌、志尊淳、倍賞美津子が出演 (C)NHK

総合テレビ・土曜ドラマ『天使にリクエストを〜人生最後の願い〜』(9月19日スタート)江口洋介、上白石萌歌、志尊淳、倍賞美津子が出演 (C)NHK

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 このドラマの題材となっているのは、末期患者の「最後の願い」をかなえるボランティア活動。2007年、オランダで始まって以来、このサービスを利用した人は 1万4000人を超え、活動はヨーロッパだけでなくアメリカ、イスラエル、オーストラリア、南米にも広がりを見せ、すでに日本でも行われている。

 人生の終わりに何を望むか? 生きる意味を失った探偵のもとに舞い込んだ奇妙な依頼。集まったのは、いずれも心に何かを抱えた変わり者ばかり。傷だらけの天使(エンジェル)たちが、死にゆく人の「最後の願い」を かな えるために走り出す。

――最初に脚本を読んだ時の印象は?

【江口】毎回人生のテーマがあって、さらに後半には歌を歌うシーンも出てきて、人生を感じさせながら歌とリンクさせていく。テーマがテーマなので、結構ウェットな芝居が多くなるのかな、と思いました。撮影延期の影響で、全5回をいっぺんに撮るというスケジュールになったこともあり、通常1回 ずつ撮影していく連続ドラマとは違う、5時間ドラマに向かうような気分で始まりました。コロナ禍で、生命というものを意識せざるを得ない時期を越えての撮影だったので、島田という役を身体に入れながら演じつつ、ベースに流れている歌のような感情と言うか、ある種の切なさ、でもその向こうには希望がある、そういうことを意識しながらやらせてもらいました。

【上白石】脚本を読んだ時感じたのは、今までにない切り口だなと。探偵色もありながら、人の人生の最後に寄り添う福祉の精神が混ざるっていうのは、今までにない化学反応が起こりそうだなと感じていました。わたし、大森さんの作品が元々大好きなんです。

【大森】本当ですか? ありがとうございます。

【上白石】重いテーマなんですけど、その中で寺本さん(志尊淳)とのコミカルなやり取りがあったりとか、人と人との会話の温もりが脚本に詰まっていて、早くセリフを口にしたい!っていう気持ちが、自粛期間中ずっとありました。演じていてもすごく楽しかったです。

【江口】僕は50歳を過ぎてますが、20代の上白石さんと志尊君、それに倍賞美津子さんと、年齢やタイプの異なる人物が出てきて。それぞれの年代による、生や死に対しての価値観の微妙な違いが、みんなで話すシーンに織り込まれている感じがありました。

【大森】そうですね。これを書いている時はまだコロナの”コ”の字も全然意識していない時期だったんですけれども、どうしても僕らの中では、死というものを、災害や不幸のように感じてしまう所があるじゃないですか。コロナでこれだけ日常が変わってしまうのも、その根底にあるのは、死への恐怖 だと思うんです。でもね、人間は誰しも、最後は死を迎えるわけで、それがそれこそ最大の不幸であるとしたら、人生の最後に最大の不幸が待ってるって思うのも、なんかつらいじゃないですか。

【江口】そうですね。

【大森】でも、生き残ってしまった人にとって、どうしても受け入れがたい死もあるわけです。そういう死も見つめていかないと、やはり死を美化する物語になってしまうと思ったんです。死と生というものが、表裏一体ではなく、両方表にあって、人間の通る道の上に生も死もあるということを、当たり前のように描いていかないと、本当の人間の背負 っている宿命みたいなものが見えてこないだろうなと。主人公の島田は、物語の最初 、 絶望の淵にいるような、一番受け入れがたい死を背負った状態でスタートします。自分の人生と向き合えなかった主人公が、人の人生と向き合うことで、本来の自分を取り戻していったり、また生きることに前向きになっていく話になるかなと思ったんです。人の死によって我々は生かされているということもあると思うんです。

――本作では、毎回、キャストが昭和歌謡を歌うシーンがあります。

【上白石】選曲は大森さんがされたんですか?

【大森】そうですね。僕からのリクエストだと思ってください(笑)。話の内容とリンクした曲を選ばなきゃいけないという事もありましたが、本当は最後に依頼人が聞きたい曲をリクエストされて、それを車の中で流すという設定を考えていたんですよ。でも、これは本人が歌ったほうが説得力があるんじゃないかなと。歌わせないと、もったいないんじゃないかと思って、歌ってもらうことにしたんですけども、大正解でした。歌うって祈る行為に似ているところがあるじゃないですか。まだ第1回と第2回でセットになっている最初のエピソードしか見ていないんですが、その第2回ラストの上白石さんの「アカシアの雨がやむとき」、あれはすばらしい。想像した以上にすばらしかった。

【江口】なかなか手ごわかったです(笑)。僕もふだん歌を歌うんですけど、演じている気分の中で歌を歌うとなると、ギャップがあるんですよ。

【上白石】わかります(笑)。

【江口】出来上がってみると違和感はないんだろうけど、演じている時は「なんでこいつ、ここでこれを歌ったのかな」って、心情を考えちゃうんです。だからどういう心情でつなげようかと、第1回の「無縁坂」もすごく苦労しました。「このフレーズは心情として歌えないだろう」とか、いろいろなことを思ったりして。上白石さんは絶対知らない曲ですよね。

【上白石】脚本を読んで、「へ〜、こんな曲があるんだ」って知って歌い始める、みたいな(笑)。

【大森】第1回はカラオケですが、第2回から設定としては歌っているのではなく、曲を流しているんですよ。それを表現として歌ってもらっているので、実はあそこだけ“ファンタジー”なんです。

【江口】ファンタジーですね。確かに。

【大森】ぜいたくですよね。上白石さんは、ああいう昭和歌謡を歌ったのは初めてでしたか?

【上白石】私、昭和歌謡すごく好きなんです。

【大森】やっぱり。似合いますもんね。

【江口】「♪ア・カ・シ・アの〜」って、こぶし入ってるの聞いてゾクっとしましたね 。この年齢であのこぶしが決まるっていうのは。

【上白石】いま昭和のポップスとかはやってるじゃないですか。私もすごく好きで。でも 『アカシアの雨がやむとき』は今回初めて知った曲だったので、十八番にしようかな。

【大森】絶対したほうがいい。

【江口】残りますからね、歌は。人から人へ。

――本作のモチーフになっている。「最後の願い」という活動を聞いたときどう思 いましたか?

【江口】ホスピスから車で最後の願いをかなえに行くというヨーロッパが舞台のドキュメンタリーを観て、それがなかなか沁みる感じでして…。日本でもそういう活動をしている人たちがいるというニュースも見ました。それから、台本を読み直してみると、やりたい事がより明確に立体的にわかりまして。ドキュメンタリーで車いすを押して海まで行く人の姿を見た時に、最後に来たかった場所に来られた人もすごく心が満たされただろうし、寄りそった人もすごく豊かな気持ちになれただろうなと感じたので、これはいいドラマになりそうだと直感しました。でも、自分にとって最後の願いはなんだろうと思うと、考えさせられましたね。

【上白石】人生って終わりがあるから輝くものなのかなと思っているんです。自分が人生の最後を迎えるときに何を思っているかっていうのはすごく興味がありますね。いまの「欲」ってこの時代を映していると思うし、自分が死ぬ前にはその時代も大きく変わって、自分の「欲」も変わっているだろうし。でも大きいことは望まずに、「猫を抱きたい」とか、そういうことだといいなと思います。

【江口】意外とささいな事かもしれないね。

【上白石】そうですね。

【大森】「地球最後の日に何が食べたい?」ってよく聞くじゃないですか。あれは食べたこともない高級料理をあげる人って少ないと思うんですよ。その人の生活史が垣間見えるような、記憶にこびりついているような食べ物を食べたいって考えると思うんですね。きっと「最後の願い」もそうで、大きな願いを最後にかなえてあげることではなくて、その人らしく最後までいさせてあげることだと思うんですよね。だからこそ、実際活動している人たちも、どんなことしてもかなえてあげたいって強く思えるから、続けられるんじゃないかなと思うんですよね。そして、そういう風に思ってくれる人がもし側にいてくれたら、本当に天使のように思うんじゃないかと。

■第1回「探偵挽歌」(9月19日放送)

 酒浸りの生活を送る元マル暴刑事の探偵・島田(江口洋介)は、資産家風の女・和子(倍賞美津子)から変わった依頼を受ける。余命幾ばくもない幹枝(梶芽衣子)の「最後の願い」を叶えるため、富士宮に連れて行って欲しいというのだ。助手の亜花里(上白石萌歌)に背中を押され引き受けると、幹枝は、かつてここで捨てた子どもを探し出して謝りたいと本当の望みを口にする。有力候補は暴力団の組長。だが島田には、暴力団絡みで子どもを亡くし、妻と別れた過去があった。

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