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『家政夫のミタゾノ』が提示した、コロナ後のドラマ制作のあり方 「以前にはもう戻れない」Pが語る気概

 シリーズ4作目となった今期も、松岡昌宏演じる“女装家政夫”の強烈なインパクトが変わらぬ人気を集めている金曜ナイトドラマ『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日系)。話題性の高さとそれに伴う好調な視聴率を獲得している本作だが、コロナ禍におけるリモート撮影を敢行した特別編も注目を集めた。“家政夫”のブレないキャラをベースにしつつも、時世の流れをうまく盛り込んだ物語で、視聴者の心をつかんでいる。

疑惑の不倫夫(袴田吉彦)を徹底追跡するミタゾノさん(7月3日放送、第5話より)(C)テレビ朝日

疑惑の不倫夫(袴田吉彦)を徹底追跡するミタゾノさん(7月3日放送、第5話より)(C)テレビ朝日

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■型にはまらず、守っていたものを“壊した”シーズン4

 2016年10月期に放送を開始し、2018年からは毎年4月期にオンエア。現在、シーズン4を迎えてもなお人気を博している。ミタゾノを始めとする風変わりで個性豊かなキャラクターたちの人間模様や、さまざまな家庭の裏に潜む人間ドラマが、毎話挟み込まれる家事の裏技テクニックとともにラストが二重、三重に練られる巧みなストーリーで描かれ、そのアクの強いクセになるおもしろさが多くのファンを獲得している。

 長期シリーズ化することで危惧されるのが、マンネリ化によって視聴者に飽きられることだろう。秋山プロデューサーに聞くと「シーズン1から基本的に変えていない」という潔い返答だった。

「コンセプトはずっと変わらず、松岡昌宏さんのブレない演技が作品を支えています。シーズンごとに相棒の家政婦には新しい方に入ってもらって、それまでと違う波を起こしてもらうことで、それぞれのシーズンならではの雰囲気を出したいという思いはありますが、そのときの時世や話題性のあるネタを取り上げていく、毎話の枠組みも同じです」

 といいつつも、1話完結の本作は、毎話において物語のメインになるゲストが変わり、さらに舞台となる家庭によってドラマのジャンルがコメディドラマ、サスペンス、ヒューマンドラマなどと変わってくる。シリーズとしては長く続いているものの、毎話の毛色が異なる、変化のある物語なのだ。

「お約束ごとがベースにあるうえで、いかに毎回カタチを崩していくか。ミタゾノのパターンが視聴者に浸透しつつあるところをあえて壊して、変化をつけることは意識しています。とくに今期は、さらに自由度が増している感があって尖がっている内容です。型にはまらないように、これまで守っていたミタゾノのイメージの一部を壊したり、視聴者の予想を裏切ったりすることを意識していますね」

■満足度トップを記録したコロナ禍での“リモート”特別編

 オリコンのドラマ満足度調査「オリコンドラマバリュー」で本作は、毎話高い評価をキープしており、平均満足度86Pt(100Pt満点)を獲得。そのなかでも目立ったのが、4月期ドラマで最高値となる94Ptを記録したコロナ禍のリモート制作による特別編(5月29日放送)だった。

 緊急事態宣言中の5月頭にリモートドラマ用のオリジナル脚本を10日間ほどで仕上げ、手探りのなか撮影が敢行されたという。

「カメラは主に小型カメラやキャストそれぞれのスマホで、メイクも本人にやってもらう。できること、できないことを1つひとつ精査して、リモートドラマ作りにおける必要最低限のものを明確にしていきました」

 これまでのドラマ制作で培ってきたスキルをすべて捨てたうえでのチャレンジだったと語る。そこで、役者のネット環境がそれぞれ異なることによる不都合に気付いたという。

「映像のアップ時間が人によって違ったりして、その不便さもありました。ネット環境が改善されれば、表現の幅は間違いなく広がります」

 リモートドラマは、画面の変化が少ないぶん、役者の演技力、脚本と演出のおもしろさが如実に表れる。つまり、役者の演技にごまかしは効かず、制作者側にもよりクリエイティブの手腕が求めらるだろう。特別編は、物語をPC画面上で見せながら展開させるという、リモート撮影を逆手に取った脚本でアイデアを効かせた。

「リモートの決められた画角の分割映像で観るドラマには、やはり限界があると感じます。ドラマの設定や役者の芝居、演出をトータルで考えて、“リモートで観るドラマ”として違和感のない作品を考えて作らないといけない。いまのネット環境と映像機材でできる最大限で制作したのが、あのカタチです。芝居を含めて、脚本、演出の力が問われる撮影でした」

■ソーシャルディスタンス続く現場での挑戦

 現在も撮影が続いている本作は、撮影時の役者以外はソーシャルディスタンスをキープする感染防止対策を徹底した、コロナ後の新たな仕様の現場に臨んでいる。

 秋山プロデューサーは「コロナ後のこれからは、緊急事態宣言の前の状態に100%は絶対に戻らない。これからしばらくはいまの体制が続くと思います」と語る。

 意欲的なリモートドラマの制作を経て、新たなスキルが備わった本シリーズ。制作陣からは、コロナ後の撮影環境にも関わらず、これまで同様の安定したおもしろさを提供してくれるであろう安心感がうかがえる。ドラマ撮影にも大きな変化が訪れているなか、スタッフの挑戦が続く。
(文/武井保之)

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