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『凪のお暇』と名作『すいか』、画面から漂う心地良さと物語の核の部分の共通点

 黒木華主演のドラマ『凪のお暇』(TBS系)が好評だ。コンフィデンス誌のドラマ満足度調査「ドラマバリュー」でも、開始早々から高い満足度を維持している。黒木華と高橋一生中村倫也というメイン3人の演技の上手さによる安心感は絶大。しかし、それだけでなく、一部ではある名作ドラマと似た空気に魅了されている人たちがいるのだ。

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■初回開始後数分で「継続視聴決定」を確信させた稀有なドラマ

 ドラマは第2話まで観てから継続視聴するか否かを判断するという人が、実は多いと思う。第1話がおもしろくても、第2話から内容が薄くなったり、逆に第1話は説明ばかりで難解でとっつきにくくとも、第2話以降に本題が見えてきたりするケースは多々あるからだ。

 しかし、開始後、ものの数分で「絶対に好き」「継続視聴決定」と確信してしまうドラマがときどきある。今クールではそれを『凪のお暇』に感じた人がけっこういたのではないだろうか。

 原作とはキャラも空気感も少々異なる部分もある。しかし、キャストの演技だけでなく、脚本も演出も巧みで、実写化で人間が演じることによって、さらに体温や深みのある物語になっている。

 しかし、そうしたクオリティの高さだけでなく、この作品には一見して画面から漂う色味や音、美味しそうな匂いすら立ち込めそうな心地良さがある。これは記憶の奥底にある大好きな何かに似ていると思ったら、木皿泉氏脚本のドラマ『すいか』(日本テレビ系/2003年)だった。

 気になって調べてみたら、Twitterでも以下のようなコメントが見られた。「『凪のお暇』おもしろいな、昔好きだった『すいか』ってドラマ思い出す…全然違うけど…」「今日も初っ端から『すいか』感満載〜〜!」「凪とすいかの類似性を感じているツイを見て、嬉しい。家の周りや音楽や住人達に『すいか』を思い出させる要素があるんだよね〜」「『凪のお暇』を観て『すいか』が思い浮かんだ 緑に包まれたアパート 扇風機 音楽の世界観」

『すいか』は、視聴率は振るわなかったものの、高い評価を受け、いまだに“名作”として語り継がれている作品である。その根強いファンたちの間で、『凪のお暇』に『すいか』感を感じている人は少なからずいるようだ。

■『凪のお暇』と『すいか』から漂う相似点

『すいか』の出演者は小林聡美、ともさかりえ、市川実日子、浅丘ルリ子、小泉今日子など。『凪のお暇』にはそんな『すいか』の住人・市川実日子が登場してきて、ちょっと嬉しくなってしまったが、その他の登場人物は別である。

 また、『凪のお暇』が「メンヘラ製造機」と呼ばれるゴン(中村倫也)と、「モラハラ元彼」の慎二(高橋一生)との関係により、恋愛要素多めであるのに対し、『すいか』は明確に“女性たちの物語”だ。さらに、『凪のお暇』はTBSだが、『すいか』は日本テレビ。前者は原作漫画があるが、後者は脚本家のオリジナル。放送局も違えば、脚本家も演出家、プロデューサーも違う。

 しかし、両者が似ているのは、黄色っぽいあたたかな色味の画面や、アコースティックギターやアコーディオン、ピアノなどの優しく懐かしくほんわりとした音楽(『凪のお暇』音楽を手がけるパスカルズには、元「たま」のメンバーがいる)。セミの声やヒマワリの花、扇風機、風で揺れる木々など、夏を感じさせる音や色に溢れていること。ささやかだけど、ニオイや温度が伝わってきそうな美味しそうな食べ物がたくさん登場すること。

 そして、メインの舞台となる「エレガンスパレス」(凪)と「ハピネス三茶」(すいか)が、それぞれ緑に囲まれ、立地的にも公道から少し奥まった場所に木の柵などで囲まれていて、どこか俗世間から隔絶された楽園のように見えること。そこに風変わりで歪で、優しい人たちが集っていること。この空気感だけでちょっと深呼吸してしまいたくなる人はけっこういるのではないだろうか。

■逃避したくなる気持ちを心地よく包み込む夏のドラマ

『凪のお暇』の場合、描かれるのは、空気を読み過ぎて自分の主張ができなくなってしまった主人公が、全てをリセットして自分を変えようともがく物語。一方、『すいか』は、同僚が3億円を横領して逃走したことをきっかけに、現状に煮詰まった34歳信用金庫職員が「ハピネス三茶」という下宿に住む風変わりな人々の交流を通して本当の自分を見つけていく物語。

「煮詰まった・行き詰った主人公が、これまでの人生をリセットして、自分を変える・取り戻す」という核の部分も共通している。現実のシビアさを描く一方で、一時的に重い荷物をおろし、逃げることや休むことを許容してくれる、クスリと笑えて可笑しくも優しい物語に、救われたり癒されたりするのだ。

 ちなみに、『すいか』が放送されたのは2003年7月期。暑さのせいで、休んだり現実逃避したくなったりするのか、それともお盆で魂がこの世に帰ってくる時期だから、現実と非現実の境があいまいになる季節なのか。

 理由はわからないが、夏になると今の人生をリセットしたくなる、どこかに逃避したくなるという人は多いのではないか。そんな気持ちを心地よく包み込む夏のドラマ『凪のお暇』と往年の名作『すいか』。改めて比べて観たくなってしまった。
(文/田幸和歌子)

関連写真

  • 視聴者から高い満足度を獲得する、TBS系金曜ドラマ『凪のお暇』※写真は第4話より(C)TBS
  • 金曜ドラマ『凪のお暇』第4話シーン写真 (C)TBS
  • 金曜ドラマ『凪のお暇』第4話シーン写真 (C)TBS
  • 視聴者から高い満足度を獲得する、TBS系金曜ドラマ『凪のお暇』 ※写真は、第4話より (C)TBS
  • 視聴者から高い満足度を獲得する、TBS系金曜ドラマ『凪のお暇』 ※写真は、第4話より (C)TBS
  • 視聴者から高い満足度を獲得する、TBS系金曜ドラマ『凪のお暇』 ※写真は、第4話より (C)TBS
  • 視聴者から高い満足度を獲得する、TBS系金曜ドラマ『凪のお暇』 ※写真は、第4話より (C)TBS
  • 視聴者から高い満足度を獲得する、TBS系金曜ドラマ『凪のお暇』 ※写真は、第4話より (C)TBS

提供元:CONFIDENCE

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