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倉科カナと松下由樹、役を重ねて変化する魅力 異性ウケから同性ウケへの分岐点

 今クールナンバー1ドラマと評価する声も少なくない『トクサツガガガ』(NHK)。特撮オタクだけでなく、アニメオタク、アイドルオタクなど、異なるジャンルのオタクに共通する愛の深さと奥ゆかしさと妙な自意識、その愛し方の多様性にはリアリティが溢れており、特撮パートの作り込みの本気度もすごい。全てのキャラが愛おしいが、そんななか気になるのが倉科カナ松下由樹の妖しい魅力だ。

■瑞々しいヒロインを取り巻く熟練の「悪巧み」が魅力的

 倉科カナが演じているのは、「30代になり、そろそろ特撮オタクからの卒業を考えている」吉田久美。特撮ショーを追いかけ、スーツアクターの尻を一眼レフの高級そうなカメラで激写している吉田は、小芝風花演じるヒロイン・仲村叶にとって初めての「オタ仲間」であり、「現場参戦」上級者の先輩である。

 初めての現場で目を輝かせるフレッシュな小芝風花と、妖しい笑みをたたえて高速移動しながら高速でシャッターを切る手練れの吉田の対比が、実に良い。また、戦隊モノでいう、途中から加わる「追加戦士」を求め、叶の同僚をオタ仲間に引きずり込もうとする手練手管のテクニックは、さながら「悪の女幹部」のよう(叶にはそう見えている)。

 そんな吉田とはまた別の悪の魅力を放っているのが、叶の母・仲村志を演じる松下由樹だ。叶が3歳のときに離婚し、シングルマザーとして叶と兄を育ててきたという母。特撮が大嫌いで、叶には完全に自分の趣味であるフリフリ、ヒラヒラなどの可愛いモノを押し付ける「毒親」である。強引さで押し切るかと思いきや、涙を効果的に用いて相手を意のままに操ることもできる強敵。叶にとっては、愛する特撮「ジュウショウワン」に登場する敵の大将「ゲンカ将軍」と重なって見えている。

 片や趣味の世界をますます追求し、深淵に導く誘惑の悪友(?)、片や趣味を一切認めず遠ざけようとする敵。まだ青く瑞々しいヒロインを取り巻く熟練の悪巧みは、実に清々しい。

■闇をまとったことで同性に支持される女優へと転身した倉科カナ

 オタ友で、オタク道の先輩でもある吉田の魅力が発揮されるのは、ニッコリではなく、ニヤリ。腹に含みのある笑みをたたえたときに、倉科カナはもっとも美しく輝く。

 思えば2006年に『ミスマガジン2006』でグランプリを受賞してから、深夜ドラマ『根津サンセットカフェ』や『エリートヤンキー三郎』、さらに代表作である朝ドラ『ウェルかめ』などに見る、明るく活発な「正統派ヒロイン」イメージが強かった。ただし、優等生的なイメージに加え、グラビア出身のグラマラスな女優という位置づけもあって、同性よりも異性人気の高い印象だったのではないか。

 それが一気に「化けた」のは、『ファーストクラス』で演じた、博多弁で毒舌な腹黒キャラ・須賀さくら役から。し烈な女同士の戦いにおいて、目的のためなら女を武器にすることもいとわないド根性ぶりと負けん気の強さは、むしろ清々しくすら思え、同性の好感度が一気に上昇したように思う。

 近年では『カインとアベル』で、兄の恋人でありながらも主人公である弟を惑わす悪女的キャラを、『奪い愛、冬』ではドロドロの愛憎劇の末に狂気で壊れていくヒロインを演じ、「怖すぎる」と大評判になった。爽やかな色気を放つ元気で明るい優等生が、闇をまとったことにより、同性に支持される女優へと転身したのは実に興味深い。

 そうした意味では、『トクサツガガガ』で演じるオタクを隠しているつもりながらも、欲望を抑えきれずに暴走し、周囲もオタク「沼」に引きずり込もうとする「悪の女幹部」的キャラは、倉科カナの魅力を引き出す上で理想的な挑戦でもあった。

■年齢を重ねるにつれてシフトチェンジし「魅力的な悪役」がハマる松下由樹

 一方、ヒロイン・叶を苦しめる「お母ちゃん」を演じる松下由樹も、もとはといえば、グラマラスでセクシーなイメージの女優だった。古くは『想い出に変わるまで』で姉・今井美樹から恋人を奪う妹役を演じ、それがハマりすぎたことで、一時は「女性の敵」のような扱いすら受けていた。それが、人気シリーズ『ナースのお仕事』で見せたしっかり者の頼れる先輩役を機にイメージが大きく変わり、恋愛ドラマやコメディなど幅広く活躍する一方、CMによる「パンの人」のイメージも浸透させていく。

 また、2018年の中井貴一主演ドラマ『記憶』では、息子を事故で失った喪失感と悲しみにとらわれ続け、行き場を失った「母性」で自分の人生を自ら殺してしまってきた悲しい母を演じた。そして『トクサツガガガ』では、ひとりよがりの誤った「母性」によって、娘を縛り付け、自分の思い通りにしようとする毒親を演じている。

 グラマラスでセクシーな印象は、年齢を重ねるにつれて少しずつ頼もしさや家庭的・母性といったイメージにシフトチェンジし、さらに毒親にまでたどり着いてしまった。だが、そこに嫌味や陰湿さはなく、怖さと同時にコミカルさがあるからこそ、「魅力的な悪役」がハマるのだろう。

 グラマラスでセクシーな女優2人が、さまざまな変遷の末にたどり着いた現在地は、今まででいちばん魅力的な気がする。まっさらなヒロイン像を際立たせる意味でも、大きな役割を担っているだろう。
(文/田幸和歌子)

関連写真

  • 腹に含みのある笑みをたたえたときにもっとも美しく輝く倉科カナ/『トクサツガガガ』(C)NHK
  • 怖さと同時にコミカルさがあるから「魅力的な悪役」がハマる松下由樹/『トクサツガガガ』(C)NHK

提供元:CONFIDENCE

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