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福山潤、“過去への無関心”と“老いることの魅力” ムンクに感じた真逆の価値観

 アニメ『おそ松さん』松野一松役、『コードギアス 反逆のルルーシュ』ルルーシュ役など、主役はもちろん作品に欠かせない数多くのキャラクターを演じてきた声優・福山潤(39)。4月に立花慎之介ともに新事務所「BLACK SHIP株式会社」を立ち上げて共同でCEOに就き、新たな一歩を踏み出している。そんな彼が、10月27日から東京都美術館で開催される『ムンク展ー共鳴する魂の叫び』の音声ガイドナレーターを務める。子どものころから芸術に触れてきた福山だが、「作品は大切に手元に残さない。過去の自分に興味がない」と語り、自己愛に満ちたムンクとは価値観が真逆だと明かす。ムンクを通し、今の声優業を語ってもらった。

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■母親の影響もあり高校は美術部 画家の道は「向いていない」と諦め声優界へ

 絵画はシュルレアリスムが好きなので、画家はダリやマグリットが好きです。母親が趣味で油絵を描いていたこともあって、子どものころに行った美術館や展覧会が記憶に残っています。その中でモネの『睡蓮』を観た時に、「こんなデカい絵があるんだな」って。子どもの時なので正直、何がすごいかわからないのですが、今でも覚えています。絵というのは視覚から与えられる情報で心や記憶に刻まれる。そこから美術というのに興味を持ち始めました。

 絵を描くこと自体は母親のまねから入り、高校時代は本格的にやっていたわけではありませんが美術部に所属していました。絵を描くことは趣味にしたいと学生のころありまして「デザインを勉強したい」「デッサンが苦手でうまくいかないな」という思い出があります。ですので、絵を見るのは今でも好きで、「これはどうやって描くに至ったのか」など考察するのが楽しいんです。今は全く描きませんが、隠居する年齢になったら何かしたいという想いは実はあります。

 画家と声優を芸術の一つの括りにした場合、小さいころに触れた絵が声優になるきっかけになったかと聞かれたら、それは違います。ただ、作品を作る仕事に就きたかったというのは事実です。絵の仕事なら描く側に行きたかったのですが、残念ながら才能と根気がなかった(笑)。才能の根本は最後まで描けるか、最後までやり通せるのかだと思うのですが、僕は途中で心が折れるタイプ。8から9割、作品が完成していても「これ、ダメだな」と思って仕上げられない。学校の課題でも凝ったことをしようとして構想やイメージはあるのですが、前日まで何も手が出せず徹夜で仕上げる。絵を描くことに関しては向いていない、仕事にできないなと思いましたね。そこで、「自分の身体一つで感情表現できる分野ならチャンスはあるかもしれない」と思い、今の声優業に繋がっていきます。

■自己愛に満ちたムンクの考えと逆 過去は振り返らず「自分に興味がない」

 声優のお仕事の中にナレーションというのはありますが、僕は今まで多くやってきたわけではありませんでした。最近だと『コードギアス展』など、アニメキャラクターの立場で、ナレーション、音声ガイドを務めさせていただきましたが、美術館の展覧会でやることは初めて。その中で『ムンク展』の音声ガイドのお話をいただけたのは、やりたかったジャンルでしたので光栄なことでした。

 収録しているうちに、ムンクは芸術に対して真摯かつ自分の感情を出すことに貪欲な人だったと感じました。生きることに対して後ろ向きな言葉を出して絵を描くのですが、本人は生涯、描いた作品を「子ども」と呼んで残して手元に持っていた。自身の作品を愛している。独身でしたので、作品を子どもと置き換えているだけではなく、自己愛が強かったのかなと思いました。自分の作品を多く所有していた行為が、自己愛を持っている人だなと。

 逆に僕は自分が出した物に、強く所有する想いはないんです。仮に画家なら、作品を手元に残すことは難しいと思います。声で作品を作らせてもらう立場として、作った後のことは振り返らない。アニメがオンエアされる際は一度、チェックもかねて触れるようにしているのですが、昔のデビュー作品などを観て振り返ることはしません。アウトプットしたあとについて、興味がなくなっている。デビューしてから数年は振り返ったり、思い出の品々を取っておいたりしていたのですが、10年過ぎた辺りから「それって違う気がするな」と思いまして。出した物に関しては、出して受け取った人の物だから、僕が大事に持つ物ではないなと。もちろん、仕事でやったことに責任は持ちますし、覚えているのですが「後生大事にするのはやめよう」と思い続けている、この10年です。なのでムンクと考え方が逆なのかも知れませんね(笑)

 後を振り返らないのは、「自身の成長や先へ進むため」とは少し違います。例えば今の世の中ですと、カメラやビデオがあっていくらでも簡単に振り返ることができる。メディアの仕事をしていると、すぐに昔の自分を写真や映像で見ることができる。記憶を留めて置く必要がないくらい、世の中は“記憶”に溢れていると思うんです。ほかの人が覚えていてくれて、ネット上に僕の20年前の写真があるわけですから、「自分が大事にしなくてもいいかもな」という考えがあります。外に記憶があるおかげで、過去の自分に興味がなくなっていく。そこで今後、「僕はどのような道を行くのか」と考えるわけです。

■童顔に見られ“老い”に興味 年をとることは「得るものがあり、抗うことはしたくない」

 アニメーションだと10代、20代の少年や青年期のキャラクターを主に演じています。音声ガイドで刺激的だったのは、ムンクの10代から亡くなるまでの言葉を読むので、普段やらない中年やおじいさんの声を出しているところです。僕も今後、そこに向かっていく。僕自身は若くいたいとか、昔の物が良いというよりも、老いていきたい気持ちが強いんです。若々しい方が良いという価値観が、僕は良いと思わない。老いていった状態でどうなっていくのか、どう思うのかが重要だろうなと。

 誰もが平等に命があって年齢を重ねるわけですが、“若い”や“力が溢れている”など、過程の初期の段階を礼賛(らいさん)する傾向が世の中にある。ものすごく矛盾しているなと。なので、老いというのに興味深いものがあります。

 ここまで考えてしまうのも、僕が童顔で若く見られているというのがあるかも知れませんね(笑)。老いるというのは前向きに捉えています。年をとる過程で得るものがたくさんあるわけで、抗うことはしたくないなと。なので過去のことに興味がなくなるというのに繋がっていくのかなと思います。



関連写真

  • 『ムンク展』音声ガイドを務めた福山潤 (C)ORICON NewS inc.
  • 『ムンク展』音声ガイドを務めた福山潤 (C)ORICON NewS inc.
  • 『ムンク展』音声ガイドを務めた福山潤 (C)ORICON NewS inc.
  • 『ムンク展』音声ガイドを務めた福山潤 (C)ORICON NewS inc.

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