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時代劇をもっと面白く 「曽根崎心中」誕生秘話描く『ちかえもん』

 NHKの大河ドラマ『真田丸』が好調だ。だが、それだけじゃない。もう一つ、地上波のチャンネルで観られる時代劇枠で1月から放送されている木曜時代劇『ちかえもん』(毎週木曜 後8:00、全8回)も面白いことになっている。

1月からNHKで放送されている木曜時代劇『ちかえもん』近松門左衛門役の松尾スズキ(左)と謎の渡世人・万吉役の青木崇高(右)(C)NHK

1月からNHKで放送されている木曜時代劇『ちかえもん』近松門左衛門役の松尾スズキ(左)と謎の渡世人・万吉役の青木崇高(右)(C)NHK

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 時は元禄16年(1703年)、戦国の世から100年。第5代将軍・徳川綱吉の治世も末期。元禄文化は陰りを見せ、経済は右肩下がり、現代にも通じる格差広がるご時世に、浄瑠璃作家・近松門左衛門(1653‐1725年)が空前の大ヒット作「曽根崎心中」を生み出すまでの物語を大胆に創作したオリジナル作品。近松を演じるのは、「大人計画」を率いる劇作家で俳優の松尾スズキだ。

 松尾芭蕉(1644‐94年)、井原西鶴(1642‐93年)とともに、元禄時代(1688‐1704年)の三大文豪として名を残し、教科書にも載っている近松だが、その生涯は謎に満ちている。存命中や没後すぐに書かれた資料がほとんどないため、いくらでも想像の翼が広げられるということもあって、作者・藤本有紀氏(連続テレビ小説『ちりとてちん』、大河ドラマ『平清盛』ほか)の筆も乗りに乗っている。

 本作に登場する近松は、「世継曾我(よつぎそが)」(1683年)で浄瑠璃作者としての地位が確立されるも、超スランプに陥り、客入りが落ち込む芝居小屋の座長・竹本義太夫(北村有起哉)からは「世間が湧き立つ戯作を書け」と尻を叩かれ、妻には逃げられ、同居する母・喜里(富司純子)の小言にも悩まされ、大阪堂島新地の「天満屋」に入り浸り、年増遊女お袖(優香)相手にちびちび酒を飲む、冴えない中年男。

 そんな近松が、謎の渡世人・万吉(青木崇高)と出会ったことで運命が変わっていく。天満屋を舞台に、後の「曽根崎心中」にも登場するお初(早見あかり)、徳兵衛(小池徹平)、九平次(山崎銀之丞)、平野屋忠右衛門(岸部一徳)ら、ひと癖もふた癖もある人々と出会い、さまざまな騒動に巻き込まれていくことに。

 セットも登場人物の衣装も所作もちゃんとした時代劇なのだが、松尾演じる近松の心の声(モノローグ)が“現代的”だったり、「大阪で生まれた女」などの替え歌を口ずさむシーンがあったり、アニメーションを使ったり。普段、時代劇を観ない人も気軽に楽しめる仕掛けが随所に散りばめられている。

 「ちかえもん」というタイトルも“近松門左衛門”という名前を覚えられない万吉がとっさに言った愛称で、視聴者にとっては某国民的アニメのタイトルに似ていて親近感が湧いてくる。

 松尾には、こんな偶然も。

 「出演依頼の連絡をメールで受けた時、ちょうど川崎市にある藤子・F・不二雄ミュージアムにいまして(笑)。図らずも“ドラえもん”の前で『ちかえもん』の話を聞くという、これはもう運命だと思いました(笑)。ミュージアムで藤子・F・不二雄先生の略年表を見ていたら先生が50代になってから何本も映画の脚本を書いて、精力的に働いていたという発見もあって。近松門左衛門もちょうど50歳の時に『曽根崎心中』を生み出し、僕も53歳の劇作家、いろいろ重なる思いがありました。藤本さんの脚本を読んだら、どちらかというと僕が演じるちかえもんがのび太で、万吉がドラえもんみたいなキャラクターになっていて。娯楽作として非常によくできた作品だと思いました」。

 その万吉は、“不孝糖”という飴を売り歩く渡世人。将軍・綱吉が親孝行を奨励したことから、世間では孝行者にあやかれる“孝行糖”なる飴が飛ぶように売れていた中で、万吉は「親孝行なんかくそ食らえ、親不孝こそがほんものの孝行や!」と異彩を放ち、近松の目にとまる。神出鬼没でうさんくさいのになぜか人々に愛される万吉には、アニメ的なファンタジー要素がある。

 演じる青木は万吉について「どこから来てどこへ行こうとしているのかわからないキャラクター。万吉はなぜか近松に『“不孝糖”売りを手伝ってくれ』とまとわりついて、相棒みたいになっていく。情に厚くて、思い込んだら命がけ、困った人は放っておけない。ただ、やり方が万吉流。めちゃくちゃなんですけど、彼の行動がいろんな人たちの運命の歯車を噛みあわせていく。結果的に背中を押す存在になっているんです」と話している。

 次回、2月4日に放送される第4回で近松は、スランプを脱しようと赤穂義士を題材に新作に取り掛るが、万吉にダメ出しされてしまう。そんな中、近松は謎の油問屋黒田屋九平次が「消えた47人目の赤穂義士・寺坂吉右衛門」だと思いいたり、彼を尾行して正体を探り出し、寺坂の物語を書こうと奔走する。果たして、近松は傑作を書き上げることができるのか?

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  • 1月からNHKで放送されている木曜時代劇『ちかえもん』近松門左衛門役の松尾スズキ(左)と謎の渡世人・万吉役の青木崇高(右)(C)NHK
  • 近松門左衛門の傑作浄瑠璃『曽根崎心中』の誕生秘話を創作(C)NHK
  • 1月からNHKで放送されている木曜時代劇『ちかえもん』。謎の渡世人・万吉を熱演する青木崇高(C)NHK
  • 第4回より。近松門左衛門(松尾スズキ)は世間を騒がせている赤穂義士の仇討ちを題材に浄瑠璃を書こうとするが、万吉(青木崇高)に討ち入りしたのは四十六士だと指摘される。そこに井戸端で消えた四十七人目のうわさを聞いたと、母・喜里(富司純子)がやってくる(C)NHK
  • 第4回より。お初(早見あかり)と徳兵衛(小池徹平)(C)NHK

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