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今や洋画も一強状態 『アナ雪』が変えたディズニーのブランド力

 ディズニーの『シンデレラ』が、今年のゴールデンウィーク興行でトップを走った。驚くのは、5月下旬となった現在もなお、興行ランキングで1位を確保していることだ。すでに興収40億円を超え、50億円突破どころか60億円超えも現実味を帯びてきた。ディズニーは今、日本の映画界の屋台骨を支え始めた。

興収60億円超えも現実味を帯びてきたディズニー最新作『シンデレラ』(C)Disney

興収60億円超えも現実味を帯びてきたディズニー最新作『シンデレラ』(C)Disney

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 その大きなきっかけは、国内歴代第3位となる255億円の興収を記録した昨年公開の『アナと雪の女王』のメガヒットである。社会現象化した本作で、映画ばかりか、ディズニーブランドが、とてつもない広がりを見せたのだ。もともと、ディズニーのブランド力は強い。ただそれは、映画そのものへの影響として見たとき、ケース・バイ・ケースとなることが多かった。作品によって、つまり中身によって、その効力は限定的な面もあったのである。

 それが、『アナと雪』から大きく変わった。映画の興行成績を見れば、それは一目瞭然だ。昨年春の『アナと雪』のあとに公開された夏の『マレフィセント』が65億4000万円。正月の『ベイマックス』が92億円。今年春の『イントゥ・ザ・ウッズ』が24億円。そして『シンデレラ』が続いた。これだけのメガヒット作、ヒット作が連続して登場したのは、長い日本のディズニー映画の歴史でも初めてのことである。

 老若男女にわたる日本国民の支持を取り付けた“国民映画”としての側面がとにかく大きかったのだと思う。それにより、ディズニー作品の圧倒的な“高品質ぶり”が、とてつもない規模をもって浸透していった。それは、ブランド力のさらなる強化につながった。ブランドにはいろいろな意味があるが、映画の興行分野では、映画への関心度を裏打ちする強い信頼感が、もっとも重要となる。

 言ってみれば『アナと雪』は、映画への信頼感という“共同幻想”を、ディズニーブランドとして、多数の日本国民に植え付けたと言えるだろう。これは、想定内の施設を楽しめるテーマパークなどで通用するブランド力とは違う。映画は、さきに言ったとおり、中身への引きが強いか弱いかで、関心度は大きく変わる。『アナと雪』以前のディズニー作品もそうだった。そのありようが、ブランド力強化によって、大きく変わったのだ。

 こうなると、これから公開されるディズニー作品は、興行の微妙な差異は出ようとも、ヒットへの道筋が万全となるだろうことが予測される。夏に『アベンジャーズ』、正月に『スター・ウォーズ』の両新作が待機し、合間には『トゥモローランド』や『インサイド・ヘッド』などの話題作が待ち構える。ジャンルは違えども、ブランド力は多くの作品に多大な好影響を及ぼすことだろう。

 近年続く低迷する洋画興行のなかで、ディズニー作品が突出し始めた。悪いことではないが、映画界全体から見たら、さてどうであろうか。映画興行において、邦画の東宝、洋画のディズニーという図式が今できつつあるが、競合してこそ市場は活性化する。ライバル他社が、ディズニーの動きに刺激されて奮起を見せ始めると、映画界はもっともっとおもしろくなる。そうならないと、いけないと思う。
(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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