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若手演技派が続々ブレイク SMAの女優育成とは?

 NHK連続テレビ小説『まれ』で、パティシエの夢を持つヒロインを好演中の土屋太鳳。2年前の『あまちゃん』でヒロインの親友を演じたほか、公開中の『寄生獣』など数々の映画でメインキャストを務めている橋本愛。『ヒミズ』でヴェネツィア国際映画祭のマルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)を受賞した後、『私の男』や今年公開の『味園ユニバース』などで強い存在感を見せた二階堂ふみ。若手演技派女優として必ず名前が挙がるこの3人は、いずれもソニー・ミュージックアーティスツ(SMA)に所属している。最近ではドラマ『ごめんね青春!』で生徒会長を演じ、『カルピスウォーター』CMで注目度急上昇中の黒島結菜もそう。土屋と二階堂が20歳、橋本が19歳、黒島が18歳だ。

左から橋本愛、土屋太鳳、二階堂ふみ

左から橋本愛、土屋太鳳、二階堂ふみ

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◆10年前からスタートした 女優に特化した育成

 昨年創立40周年を迎えたSMAは、社名の通りもとは音楽系プロダクションで、多くのトップアーティストを輩出してきた。現在も奥田民生、真心ブラザーズ、サンボマスター、YUKI、木村カエラ、西野カナらが所属している。俳優やタレントも在籍はしていたが、スタッフによると、女優に特化した部署を立ち上げたのは10年ほど前。10代を対象にした新人発掘オーディションから倉科カナを輩出した頃だった。

 倉科は『ミスマガジン2006』でグランプリとなり、グラビアから活動をスタートさせつつ、映画やドラマにも出演。2009年に朝ドラ『ウェルかめ』でヒロインに選ばれた。その後も前期の『残念な夫。』(フジテレビ系)に至るまで、出演作の途切れない人気女優になっている。また、2005年には親会社のソニー・ミュージックエンタテインメントが角川映画と共同で女優オーディション『ミス・フェニックス』を開催。グランプリの蓮佛美沙子やファイナリストだった土屋らが籍を置いた系列事務所も、2010年にSMAの子会社化した後に吸収合併している。

 そうした動きのなかで、橋本は2008年に新人オーディションから発掘。当時は熊本在住の中1だったが、最初のマネージャーによると、野生児的で“この子は何だろう?”と思わせるインパクトがあったという。「声のトーンやちょっとした動きにセンスが出ていて、全体のバランスが良くて。モニター画面を通して見ると、半端でない説得力がありました」。橋本が注目を集めたきっかけは、2010年公開の映画『告白』。同級生に殺されるハードな役柄にも物おじせず、現場でも堂々としており、極寒にノースリーブといった撮影でも不平や弱音ひとつ吐かなかったとのこと。出演作を重ねるごとに本人の女優へのモチベーションも高まり、急速な成長を見せた。

 二階堂と黒島はともに沖縄出身。地元の素人の少女たちがモデルのフリーペーパー『沖縄美少女図鑑』で目にしたSMAのスタッフが出向き、スカウトした。二階堂はいまや、陰のある役のキャスティングでは真っ先に名前が出る存在に。黒島も今年、『ストロボ・エッジ』『あしたになれば。』に続き、6月に『ストレイヤーズ・クロニクル』、8月に『at Home』と出演映画の公開が続く。まさにいま大躍進中のブレイク女優のひとりだ。

◆クリエイティブな意識が強い“作品”志向

 SMAが本格的に女優育成に乗り出して10年。この5年ほどで、こうした若手たちの成長が目覚ましくなったSMAだが、育て方や売り出しは基本的に各担当マネージャーに委ねられ、事務所として特定の方針は設けていない。逆に、演技レッスンでは“型にはめずに個性を伸ばす”ことを重視。だが、SMAの若手女優には共通した佇まいも感じられる。

 ストイックなこだわりを持った演技派ぞろい。10代からアイドル女優的な展開をしていない。映画監督やクリエイターからの引きも強い。同社スタッフは「うちでは役者にも何となく“音楽”の匂いがあるかもしれません」と語る。直接的に歌ったりということでなく、クリエイティブな意識が強くて“作品”志向。スタッフも脚本のおもしろみを重視するタイプが多いようで、事務所としてのSMAの遺伝子的なものが自然に作用しているとも思える。音楽方面ではかねてより、新人開発の専門部署がありオーディションにも積極的で、逸材を発掘してきた。そうしたスタッフの眼力は、女優の卵探しにも発揮されている。

 3年前には、女優オーディション合格者により事務所内に「劇団ハーベスト」を結成。これまで7回の舞台公演を行っているが、リーダーの青山美郷は個人での仕事も増え、昨年公開された初出演映画『円卓 こっこ、ひと夏のイマジン』では、芦田愛菜が演じた主人公の三つ子の姉を1人3役で見事に演じ分けた。久保田紗友も映画『アゲイン』『先生と猫』に出演するなど活躍の場を広げている。また、この7月にはSMAで自社制作した映画『飛べないコトリとメリーゴーランド』が公開予定。蓮佛、土屋らと同じ『ミス・フェニックス』出身の岡野真也が初主演している。そのほか、4月期連続ドラマ『REPLAY&DESTOROY』(TBS系)に出演中の萩原みのりもSMA出身の注目株。こうした育成システムから続々と期待の若手女優を輩出している。

 さらに近年では男性俳優の育成にも取り組み、『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日系)のイアン=キョウリュウブラック役で人気を博した斉藤秀翼、『学校のカイダン』(日本テレビ系)や放送中の『She』(フジテレビ系)に出演の成田凌らが頭角を現してきた。男性俳優の育成に関しては、先行していた女優育成から5年ほど遅れてスタートしており、まさにこれからシーンをにぎわせていくところのようだ。

 青山は同じ事務所の土屋を目標にしてきたといい、橋本らに憧れてSMAに応募してくる女優志望者も格段に増えたとのこと。こうした好循環から、今後さらに新たな才能が世に出ていくことだろう。男性俳優の台頭も楽しみなところだ。
(文:斉藤貴志)

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