唐沢寿明Interview
クールな素顔のウラの超大作主演への“覚悟”「僕がケンヂに選ばれた理由・・・」”
邦画最大級の規模といわれ、あらゆる面で破格のスケールで描かれる3部作『20世紀少年』。それは、主人公・ケンヂを演じた唐沢寿明にとっても、これまでの長い俳優キャリアのなかで初めての規模という。そんな唐沢だが、最終章の公開に際してはクール。おなじみのジョークを交えつつ、冷静に作品と役柄を見つめる。

「作品の規模としては、確かにこれまでに経験がないですね。でも、それでどうという意識はありません。俳優としては、どんな作品でも意識は一緒です。ただ、原作のファンが多い作品だから、とにかくしっかりと演じきらないとという気持ちはありましたけどね。ケンヂのイメージは、ファンのなかでできあがっていて、全然似ていないといわれるのは覚悟のうえですから。観終わったあとに、ケンヂが唐沢でよかったといっていただければ、それが一番の褒め言葉です」

 昨年8月に公開された『<第1章>終わりの始まり』は、興行収入約40億円、観客動員300万人という大ヒットを記録。そのストーリーは、原作に忠実に進行する。唐沢を始め多くのキャストたちは、コミックの原画そのままのそっくりな姿でスクリーンに登場し、それも話題を集めた。ベテラン俳優の唐沢にとっても、作品に臨むにあたって、原作が累計発行部数2800万部というベストセラーコミックであることのプレッシャーは感じていたようだ。

「一番気を使ったのは、原作の読者を裏切れないということ。それが第1章から最終章までずっと続いてきました。かといって、ただ原作のマネをするということではなくてね。まあ、俳優は基本的にモノマネみたいなものだけど(笑)。俳優として演技の部分で伝わる迫力、説得力をもちたいと考えていました。でも、第1章はおもしろい作り方をしましたよね。説明がいっさいなくて、いさぎよく作っています。僕としては、原作とは多少違っても、まったく作品を知らない人にもわかりやすくしてもいいのかなと思いました」


ギターをかつぎバイクを走らせる最終章のケンヂ


ケンヂの名前の由来になったミュージシャン遠藤賢司(中央右)と、堤幸彦監督、原作者・浦沢直樹、唐沢寿明(左から)

ケンヂのバンド・ミリオンダラーズのポスター

 作品は、第2章で映画オリジナルの展開が盛り込まれ、今回の最終章では、原作とは異なるシーン、結末も用意されている。そのなかでケンヂのキャラクターは、原作と比べるとユーモラスな部分は控えめで、ストイックな要素が強調されている。それに対して唐沢は「ケンヂはどこかずっこけているところがあって、それがあるから僕が役に選ばれたと思っていたんだけどね(笑)」。そして、第1章と最終章のケンヂの役の違いを、冗談を含ませた唐沢節で語る。

「やっぱり第1章のほうが難しいですよ。究極の難しい役は、個性がない普通の人。普通って、なかなか意識してできないでしょ。ケンヂは、おもしろみのない人たちの集まりのなかのひとりですから。その点、最終章は、コスプレパーティみたいなもんだから(笑)。髪型やメイクで見た目を変えたりっていうのは、誰が演じてもそんなに難しいことじゃないんです」

 ミュージシャンでもあるケンヂは、最終章のラストの野外コンサート「スーダラグータラ MUSIC FESTIVAL」で、大観衆の前でステージに立ち、熱唱する。その撮影には1万人のエキストラが参加したが、その人数の前に立つこと、そして歌うことは、舞台での豊富な経験を積んできた唐沢にとっても初めての経験。そのシーンを聞いたときには、「とにかく現場に行ってみよう」と思ったという。そして、そこでの貴重な経験を感慨深く「あの場に立った人にしかわからないものがあるなって感じました」。ミュージシャンとしてステージに立った唐沢に、俳優との違いを聞いてみると。

「人の“気”っていうのはすごいね。ライブって本当に盛り上がるし、そこに立つミュージシャンには、俳優とは違った達成感がありますよね。舞台では、1万人は入らないし、幕が降りたあとの充実感、やりきった感は、あそこまではないです。ただ、自分で作った曲で素の自分で勝負するミュージシャンと、脚本があって役を通してお客さんになにを与え、伝えられるかということに重点を置く俳優とは、そもそもが違いますけどね。俳優がミュージシャンのようにステージ上で観客とキャッチボールしたら、最悪なことになっちゃうから(笑)」

 この最終章のラスト10分は、劇場公開日まで非公開にされ、マスコミ試写や完成披露イベントでもいっさい明らかにされず、謎につつまれたまま。そのシーンについて唐沢に聞いてみた。

「いや〜、すごくよかったよ。原作と結末は違うけど、すごくいい話になっている。今こんな時代だから、すごく救われるっていうのかな。ケンヂが巻き起こしたことだけど、決してケンヂだけの話ではなくて、最後の10分を観れば、観ている人にいろいろな思いが出てくると思う。そういう意味では、すごく映画的なエンターテインメントなんじゃないかな」

 最後に、この映画の魅力をひと言で語ってもらった。 「壮大なるコスプレパーティー(笑)」

(写真:原田宗孝)

唐沢寿明
1963年6月3日生まれ。東京都出身。
近年の主な出演作は、『ザ・マジックアワー』(三谷幸喜監督/2008年)『THE 有頂天ホテル』(三谷幸喜監督/2006年)『CASSHERN』(紀里谷和明監督/2004年)『嗤う伊右衛門』嗤う伊右衛門(蜷川幸雄監督/2004年)『青の炎』(蜷川幸雄監督/2003年)など。2009年10月からのフジテレビ系ドラマ『不毛地帯』(木曜22時放送予定)で壹岐正役で主演する。

20世紀少年<最終章>ぼくらの旗

【ストーリー】
“ともだち歴3年”(2017年)。世界は「世界大統領」として君臨する“ともだち”に支配されていた。殺人ウィルスが蔓延した東京は聳え立つ壁により分断され、都民の行動は完全に制限されていた。“ともだち”の追手から逃れ、身を潜めているかつての仲間たち。荒れ果てた新宿で、オッチョは反政府組織として武装蜂起する氷の女王・カンナの存在を知る。そんななか “血の大みそか”以降、行方が分からなくなっていた“あの男”もついに・・・!それぞれの想いとは別に着々と近づく新たな絶望。“しんよげんの書”には何が描かれているのか?“ともだち”の計画とは?

監督:堤幸彦
出演:唐沢寿明 豊川悦司 常盤貴子 香川照之 平愛梨 石塚英彦 宮迫博之 山寺宏一 木南晴夏ほか

2009年8月29日(土)より全国東宝系ロードショー
(C)1999,2006 浦沢直樹 スタジオナッツ/小学館(C)2009 映画「20世紀少年」製作委員会

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