音楽シーン注目の新人3アーティストが共演するライブイベント『Beat LAB Vol.6』が3月3日、東京・Zepp DiverCityで開催された。このイベントは、ソニー・ミュージックの共創プロジェクト“PROJECT APPOLO”の一環として行われる完全無料招待制の、いわゆる新人ショーケース・ライブ。2023年に第1回が開催され、今回はその6回目となる。これまでは主としてライブバンドが登場してきたが、この日は“ガールズポップ”をテーマにするという新たな切り口で、Gyubin、TORA PROJECT TRAINEES、o.j.oという新人3アーティストが出演した。 
(左から)Gyubin、o.j.o、TORA PROJECT TRAINEESの4人
DTM×ダンスで魅せる! 14歳o.j.oの革新的パフォーマンス
まずステージに登場したのは、なんと14歳の女性シンガーソングライター、o.j.o。幼少期からピアノとダンスを習い、マイケル・ジャクソンとブルーノ・マーズに影響を受けてDTMで音楽制作をスタートさせたという逸材で、中学3年生ながら作詞・作曲・編曲、そしてダンスの振付まですべて自身で行うというDIYスタイルで音楽を生み出すセルフ・プロデュース型アーティスト。昨年10月には、3rdシングル「Blam!」が「第38回東京国際映画祭フェスティバルソング」に抜擢され、今年はテレビアニメ 『【推しの子】』第3期の劇伴に歌唱参加するなど、目覚ましい活躍を見せているニューカマーだ。 この日のステージも、彼女がDTMで制作したトラックとサポートドラマーをバックにしたパフォーマンスを展開。タイトかつラウドなビートが鳴る中、ステージに姿を現したo.j.oは、すぐさま客席に背を向けるとバックスライド(いわゆるムーンウォーク)でセンターへ。オープニングには、13歳の時に制作した「Get the cool charm」で始まり、続いて1stシングル曲「Bah!」の2曲を立て続けに披露した。
これらの初期の楽曲は全編英語詞で書かれており、強烈なビートとダークでミニマルなサウンドの中でオーガニックな音色が散りばめられたトラックが実に心地よい。そこに重なる、「言葉」であると同時に音色のひとつのようにトラックに溶け込んでいく、囁くような歌声がとても魅力的だった。多重録音によるものと思われる“一人コーラス”の響きや息遣いまでも魅力的であり、独特の不穏さと、きらめく光が織りなす美しさは、喩えるならばビリー・アイリッシュにも通じると言えるだろう。 ここで短い自己紹介のMCを挟んで、夢物語のように幾重にも場面が展開していく「PEOPLE DEMON」(なお、この曲で彼女は『FLASH THE FIRST TAKE』にも登場している)と、MVで見せたヒップホップ/ストリートダンスを基盤としながらコンテンポラリーな要素も織り交ぜたダンスで「Blam!」のパフォーマンスを行うと、ラストには、3月25日にリリースされる最新曲「One day」を披露。日本語詞によるリフレイン感がとても印象的で、o.j.oの新たな世界観を垣間見せるような一曲だった。 東京・LA・韓国で磨いた実力派4人組、TORA PROJECT TRAINEES
次に登場したのは、ソニー・ミュージックによるグローバルアーティスト育成プロジェクト“TORA PROJECT”より、数ある才能の中から選抜された4人で結成されたダンス・グループ、TORA PROJECT TRAINEES。東京を拠点に、米ロサンゼルスや韓国で表現を磨いた彼女たち。世界へ羽ばたくことを予感させる、フレッシュでリアルなパフォーマンスが注目だ。 ステージ奥のLEDビジョンに、これまでの彼女たちを収めたダイジェスト・ムービーが映し出されると、“Ready for the world. ”の言葉とともに、OTO、KYLA、RUKA、YUの4人がステージに登場。まだ幼さも感じられたムービーとは大きく変わり、ステージでの凛とした表情と立ち振る舞いを見ただけでも、彼女たちのみなぎる自信が伝わってくる。
まず挨拶変わりにダンスナンバー「XS」でキレのあるダイナミックなパフォーマンスを見せると、最初のMCでOTOは「日本から世界に挑むTORA PROJECT TRAINEESです」と力強くアピール。一人ずつの自己紹介を挟んで、続いて「Gameboy」(KATSEYE)、そして同じ“TORA PROJECT”からサポートダンサー4人を加えた「work」(no na)へ。とくに「work」ではソロでのダンス・パートを組み込み、4人でのフォーメーションの質の高さだけでなく、OTO、KYLA、RUKA、YUそれぞれの個性を活かしたダンスを披露した。 「私たちの活躍はこれからなので、ぜひ応援していただけたら嬉しいです」とKYLAが観客にメッセージを送ると、最後はオリジナル曲「One Sided Love」を披露。エネルギッシュで完成度の高い、まさに“カッコいい”ダンスでフロアを魅了し、オープニングでの“Ready for the world. ”という宣言にも十分に納得できる、レベルの高い歌とダンスを観客に強烈に印象付けた。 バイラルチャート制覇のGyubin、日本デビューへ期待高まるライブ出演
トリとなる3番目にステージへ登場したのは、韓国出身、19歳のシンガーソングライター、Gyubin。新人といっても、韓国デビューする以前の現役高校生の時代から、WonstienやDynamic DuoのGaekoといった韓国人気ラッパーとのコラボなどで注目を集めていた存在だ。2024年に「Really Like You」で韓国デビューすると、すぐさま香港や台湾、日本のK-POPファンの間で話題となり、発表からわずか1ヶ月で3ヶ国のSpotifyバイラルチャート1位を獲得。日本ではまだ本格的な活動をスタートさせていないにも関わらず、日本のApple MusicやLINE MUSICでも上位にランクインし、Billboard Japan Heatseekersチャートでは1位を記録するなど、リリースから約1ヶ月半で累計再生回数100万回を突破した。
その後デビュー曲の英語版も発表し(MVの映像だけでなく、楽曲のアレンジにも原曲に手を加える凝りようだ)、韓国語版と英語版を合わせた同曲Spotify累計再生数が3600万回を超えるなど、新人としては異例の快挙を達成。そして昨年11月28日、自身の誕生日に“日本プレデビュー”として「Really Like You」日本語版をリリースすると、今年春には本格的な日本メジャーデビューが決定。この日はいわば、そのお披露目的なパフォーマンスでもあった。 ステージに登場したGyubinは、やや緊張した表情も見せていたが、人気急上昇中の日本プレデビュー曲「Really Like You (Japanese Version)」のイントロが鳴り始めるとフロアからは歓声が上がり、彼女は明るく照らされたステージで、柔らかく透明感のある歌声を会場に響き渡らせる。日本デビュー前とはいえ、24年には『KANSAI COLLECTION 2024 AUTUMN&WINTER』や『COUNTDOWN JAPAN 24/25』といった大型イベントでパフォーマンスを披露しているだけあって、歌いながらステージを広く使い、観客とアイコンタクトを取りながらパフォーマンスする様は、とても堂々としていると同時に、このうえなくキュートでもあった。 この日、MCはすべて日本語で行われたのだが、その最初のMCで彼女はまず、今春の日本デビュー決定を詰めかけたファンへ報告。「(デビューに向けて)私はたくさん準備をして、とてもドキドキしています。みなさん、応援してください! 私も愛してます」と笑顔で語ると、今度はキーボードの前に座り、「私が一番好きな日本の映画は(宇多田ヒカルの曲にインスパイアされたNetflixシリーズの)『First Love 初恋』です」といったエピソードを語り、ピアノを弾きながら宇多田ヒカル「First Love」のカバーを披露した。 「私もいつか、宇多田さんのように長く長く心に残る歌を歌うことが夢です」と語ったGyubin。その歌声もさることながら、こうしてピアノやギターを演奏できるのも彼女の重要なアイデンティティのひとつ。幼い頃から楽器を習得し、自分で作詞・作曲も手がけてソロデビューを果たしたというK-POP界では稀な存在なのだ。そして、日本デビューに向けて制作中だという新曲のバラード(未発表曲)を観客にプレゼントすると、続けて「Evergreen」へ。韓国での1st EP『Flowering』の収録曲で、等身大のGyubinの感情が詰め込まれた人気曲であり、軽やかでメロディアスな楽曲だ。
そして最後のMC。「時間が過ぎるのがあっという間で、ちょっと残念です。みなさんもそうですよね? 次は私のコンサートで会いましょうね!」。そう告げると、Gyubinは一人アコースティックギターを手にし、TikTokやYouTubeなどショート動画で大人気となっている「Satellite」の弾き語り(アコースティック・バージョン)を披露し、この日のステージを締めくくった。 ダンス・グループが主流なK-POP界にあって、あいみょんを敬愛し、ナチュラルな歌声とアコースティック/インディ・ポップの香りが漂うメロディ・センスが秀逸の次世代シンガー、Gyubin。同じK-POP界であればIU、さらにその枠を超えてテイラー・スウィフトやグレイシー・エイブラムス、カーリー・レイ・ジェプセンといった女性シンガーが好きなリスナーに、ぜひ一度チェックしてみてほしい、SNS発の新鋭シンガーソングライターだ。アジアを熱狂させる彼女の日本デビューが、より一層待ち遠しくなるパフォーマンスだった。
取材・文:布施雄一郎
写真:横山マサト
■『Beat LAB vol.6』
2026年3月3日(火) 東京・Zepp DiverCity
■Beat LAB Vol.6(外部サイト)
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